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春編③『緑涼やか、若竹の囁き』
第一話「ヨツバ探し」⑶
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由良が四葉のクローバーを見つけたのは、日が傾いた頃だった。
「ありましたよ、四葉のクローバー」
「私も見つけました!」
少女も立ち上がり、見つけたばかりの四葉のクローバーを掲げる。
先程涙を拭った瞳が、再び涙で潤んでいた
「では、そのクローバーはご友人に渡してあげてください。私が見つけたクローバーは、貴方にあげます」
「えっ、いいんですか?」
「私には必要ありませんから。お二人で持っていてください」
少女は迷い、由良の顔色をうかがう。由良が自分に気を使って言っていると思ったらしい。
由良は四葉のクローバーを少女の眼前に差し出し、優しく微笑んだ。
「遠慮しないで。いらないなら、そのへんに捨てますよ」
「いります、いります!」
少女は慌てて、由良から四葉のクローバーを受け取る。本当に捨てるつもりはない。ただ、少女を急かそうと煽っただけだ。
少女は二本の四葉のクローバーを手にし、ホッと表情を和らげた。と同時に、不安そうに顔を曇らせた。
「今さらなんですけど……本当のことを言って、あの子に嫌われないでしょうか? 実は前にも四葉のクローバーを見つけたことがあるんですけど、本当のことを言うのが不安で、悩んでいる間に枯らしてしまったんです。せっかくいただいたのに、また勇気が出なくて枯らしてしまったらどうしよう……」
不安を募らせる少女に、由良は助言した。
「もし、私が貴方の友人だったら、正直に打ち明けてくれた方が嬉しいと思います。三つ葉のクローバーを細工してまで四葉のクローバーを渡したかったのも、そのことをずっと黙っていたのも、ご友人を想っての行動だったのでしょう? 正直に話せば、きっと分かってもらえますよ」
「そう……でしょうか?」
「そうですよ。いっそ、私が見つけた四葉のクローバーを譲る交換条件にしてしまいましょうか? 貴方がご友人に正直に謝れないとおっしゃるのなら、その四葉のクローバーは今すぐ返してもらいます」
「……返したら、この四葉のクローバーはどうするんですか?」
「二度と見つからないよう捨てます」
「二度と?! が、頑張って謝ります! なので、譲ってください!」
「どうぞ、どうぞ」
本当に捨てるつもりは以下略。
少女は強引に言わされた自分の言葉に勇気づけられたらしく、ようやく決心がついた面持ちを見せた。
「一緒に四葉のクローバーを探してくださって、ありがとうございました。嘘偽りなく、友人に話してみようと思います。例え嫌われたとしても、このまま騙しているよりはマシですから」
「いい結果になるといいですね。私も応援してます」
少女は「はい!」と笑顔を見せたのを最後に、由良の前からパッと姿を消した。
彼女の手に握られていた二本の四葉のクローバーも、共に消えた。
「ありましたよ、四葉のクローバー」
「私も見つけました!」
少女も立ち上がり、見つけたばかりの四葉のクローバーを掲げる。
先程涙を拭った瞳が、再び涙で潤んでいた
「では、そのクローバーはご友人に渡してあげてください。私が見つけたクローバーは、貴方にあげます」
「えっ、いいんですか?」
「私には必要ありませんから。お二人で持っていてください」
少女は迷い、由良の顔色をうかがう。由良が自分に気を使って言っていると思ったらしい。
由良は四葉のクローバーを少女の眼前に差し出し、優しく微笑んだ。
「遠慮しないで。いらないなら、そのへんに捨てますよ」
「いります、いります!」
少女は慌てて、由良から四葉のクローバーを受け取る。本当に捨てるつもりはない。ただ、少女を急かそうと煽っただけだ。
少女は二本の四葉のクローバーを手にし、ホッと表情を和らげた。と同時に、不安そうに顔を曇らせた。
「今さらなんですけど……本当のことを言って、あの子に嫌われないでしょうか? 実は前にも四葉のクローバーを見つけたことがあるんですけど、本当のことを言うのが不安で、悩んでいる間に枯らしてしまったんです。せっかくいただいたのに、また勇気が出なくて枯らしてしまったらどうしよう……」
不安を募らせる少女に、由良は助言した。
「もし、私が貴方の友人だったら、正直に打ち明けてくれた方が嬉しいと思います。三つ葉のクローバーを細工してまで四葉のクローバーを渡したかったのも、そのことをずっと黙っていたのも、ご友人を想っての行動だったのでしょう? 正直に話せば、きっと分かってもらえますよ」
「そう……でしょうか?」
「そうですよ。いっそ、私が見つけた四葉のクローバーを譲る交換条件にしてしまいましょうか? 貴方がご友人に正直に謝れないとおっしゃるのなら、その四葉のクローバーは今すぐ返してもらいます」
「……返したら、この四葉のクローバーはどうするんですか?」
「二度と見つからないよう捨てます」
「二度と?! が、頑張って謝ります! なので、譲ってください!」
「どうぞ、どうぞ」
本当に捨てるつもりは以下略。
少女は強引に言わされた自分の言葉に勇気づけられたらしく、ようやく決心がついた面持ちを見せた。
「一緒に四葉のクローバーを探してくださって、ありがとうございました。嘘偽りなく、友人に話してみようと思います。例え嫌われたとしても、このまま騙しているよりはマシですから」
「いい結果になるといいですね。私も応援してます」
少女は「はい!」と笑顔を見せたのを最後に、由良の前からパッと姿を消した。
彼女の手に握られていた二本の四葉のクローバーも、共に消えた。
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