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冬編②『行く年来る年、ぬくもりは紅玉(ルビィ)色』
第三話「年に一度のタヨリ」⑴
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「おはようございまーす」
「おはよう。今日は寒いわね」
雪が散らつく昼下がり、由良はバックルームのコタツに入って年賀状を書いていた。「足が冷えるといけない」と無理やりスペースを空けて置いたコタツで、赤を基調としたカラフルなパッチワークのコタツ布団が可愛らしかった。
出勤した中林は赤いダッフルコートをロッカーへ仕舞うと、「ホントですよぅ」と冷えた足をコタツに入れて温めた。
「うはぁ、ぬくーい」
「ほうじ茶ミルクティーあるけど、飲む?」
「欲しいでーす」
由良は保温性のある赤い水筒から中林のマグカップにほうじ茶ミルクティーを注ぐ。たちまち甘い香りの湯気が立った。
仕上げに茶色いチョコレートスプレーを散らし、中林の前に置く。
「どうぞ」
「ありがとうございますー」
中林はマグカップを受け取ると、ほうじ茶ミルクティーをすすった。
由良も自分のマグカップにほうじ茶ミルクティーのおかわりを入れ、口にする。ほうじ茶特有の風味とミルクの柔らかな甘味が絶妙に混ざり合っていて美味しい。全体的に甘めではあるものの、仕上げに加えたチョコレートスプレーのほろ苦さがいいアクセントになっていた。
「おいしー。コーヒーや紅茶のミルクティーもいいですけど、ほうじ茶もいいですよね」
「ほうじ茶は体を温める効果があるしね。それ飲んで、午後から頑張ってくれたまえ」
「はーい」
由良はほうじ茶ミルクティーをひと口味わうと、年賀状を書く作業に戻った。書き間違えないよう、慎重に書き進める。
中林はほうじ茶ミルクティーを飲みながら、その様子を見守っていた。
「もう年賀状書いてるんですか? まだ十二月に入ったばかりなのに」
「手書きだから、今から書き始めないと出しそびれるかもしれないでしょ。今年お世話になった人達へのお礼も兼ねてるんだから、なんとしてでも正月に届くように間に合わせないと」
「宛名も写真と一緒に印刷した方が早くないですか?」
「……そうなんだけどね」
由良はまだ宛名を書いていない年賀状の束に、チラッと視線を向ける。
年賀状の表は真っ白だったが、裏はLAMPの写真がオシャレなレイアウトでプリントしてあった。ひと言メッセージが書き加えられるよう余白が空いており、由良は出す相手ごとに違う文言を書き入れていた。
「大切な相手だからこそ、気持ちを込めたいというか……宛名やメッセージまでデジタルでパパッと済ませちゃうのはどうなんだろう? というか……まぁ、要するに私が書きたいだけなんだけど。会社にいた頃は忙しくて、メールやSNSで済ませてたけどね」
「ふーん、私も真冬ちゃんや茅田ちゃんに年賀状出そうかなぁ。駅中の雑貨屋さんで可愛いイラストがプリントされた年賀状が売ってたんで、気になってたんですよ」
「いいんじゃない? なんだったら、これ使う?」
由良はLAMPの写真がプリントされた年賀状の束から数枚取り、中林に差し出した。
「い、いいんですか?」
「うん。むしろ、お店の宣伝になるから使って」
「私が年賀状を出す人、みんなLAMPの関係者ですけど……」
「その家族が見るかもしれないし、いいんじゃない?」
「なるほど! では、使わせていただきます!」
中林は嬉しそうに年賀状を受け取り、鞄に仕舞った。
「おはよう。今日は寒いわね」
雪が散らつく昼下がり、由良はバックルームのコタツに入って年賀状を書いていた。「足が冷えるといけない」と無理やりスペースを空けて置いたコタツで、赤を基調としたカラフルなパッチワークのコタツ布団が可愛らしかった。
出勤した中林は赤いダッフルコートをロッカーへ仕舞うと、「ホントですよぅ」と冷えた足をコタツに入れて温めた。
「うはぁ、ぬくーい」
「ほうじ茶ミルクティーあるけど、飲む?」
「欲しいでーす」
由良は保温性のある赤い水筒から中林のマグカップにほうじ茶ミルクティーを注ぐ。たちまち甘い香りの湯気が立った。
仕上げに茶色いチョコレートスプレーを散らし、中林の前に置く。
「どうぞ」
「ありがとうございますー」
中林はマグカップを受け取ると、ほうじ茶ミルクティーをすすった。
由良も自分のマグカップにほうじ茶ミルクティーのおかわりを入れ、口にする。ほうじ茶特有の風味とミルクの柔らかな甘味が絶妙に混ざり合っていて美味しい。全体的に甘めではあるものの、仕上げに加えたチョコレートスプレーのほろ苦さがいいアクセントになっていた。
「おいしー。コーヒーや紅茶のミルクティーもいいですけど、ほうじ茶もいいですよね」
「ほうじ茶は体を温める効果があるしね。それ飲んで、午後から頑張ってくれたまえ」
「はーい」
由良はほうじ茶ミルクティーをひと口味わうと、年賀状を書く作業に戻った。書き間違えないよう、慎重に書き進める。
中林はほうじ茶ミルクティーを飲みながら、その様子を見守っていた。
「もう年賀状書いてるんですか? まだ十二月に入ったばかりなのに」
「手書きだから、今から書き始めないと出しそびれるかもしれないでしょ。今年お世話になった人達へのお礼も兼ねてるんだから、なんとしてでも正月に届くように間に合わせないと」
「宛名も写真と一緒に印刷した方が早くないですか?」
「……そうなんだけどね」
由良はまだ宛名を書いていない年賀状の束に、チラッと視線を向ける。
年賀状の表は真っ白だったが、裏はLAMPの写真がオシャレなレイアウトでプリントしてあった。ひと言メッセージが書き加えられるよう余白が空いており、由良は出す相手ごとに違う文言を書き入れていた。
「大切な相手だからこそ、気持ちを込めたいというか……宛名やメッセージまでデジタルでパパッと済ませちゃうのはどうなんだろう? というか……まぁ、要するに私が書きたいだけなんだけど。会社にいた頃は忙しくて、メールやSNSで済ませてたけどね」
「ふーん、私も真冬ちゃんや茅田ちゃんに年賀状出そうかなぁ。駅中の雑貨屋さんで可愛いイラストがプリントされた年賀状が売ってたんで、気になってたんですよ」
「いいんじゃない? なんだったら、これ使う?」
由良はLAMPの写真がプリントされた年賀状の束から数枚取り、中林に差し出した。
「い、いいんですか?」
「うん。むしろ、お店の宣伝になるから使って」
「私が年賀状を出す人、みんなLAMPの関係者ですけど……」
「その家族が見るかもしれないし、いいんじゃない?」
「なるほど! では、使わせていただきます!」
中林は嬉しそうに年賀状を受け取り、鞄に仕舞った。
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