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秋編①『紅葉散り散り、夕暮れ色』
第四話「イチョウの吹雪」⑴
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茅野倉と別れ、一通りの店を見終わると、由良は珠緒の店に預けている商品をLAMPへ運ぶため、一旦帰ろうとしていた。
加えて、LAMPでコーヒーを待っているであろう紅葉谷から話を聞く必要もあった。
もちろん、彼が行方をくらましている紅葉谷秋生本人である可能性もある。
だが、もし〈探し人〉ならば、なんとかして本体の居場所を聞き出し、早急に今までの飲食代を接収する必要があった。彼が今まで飲み食いした額は、かなりのもので、店にとっては大損害だった。
「なんとしてでも、払わせる!」
由良は人混みを避けるように道の端を歩き、紅葉谷の元へ向かった。
商店街の半ばほどまで進んだその時、背後からヒラリと黄色いものが舞い、由良の視界に入ってきた。
それはごくありふれた、イチョウの葉だった。綺麗に黄色く色づき、わずかにも破れることなく、扇形の美しい姿を保っている。
由良もイチョウの美しさに見惚れ、思わず手を伸ばした。
「洋燈神社のイチョウかしら? 風に乗せられて、ここまで飛んできたのね」
その時、突如背後から突風が吹きつけた。
由良の目の前を舞っていたイチョウの葉はあっという間に、遠く彼方へ飛ばされていった。
「うわっ、何この風」
由良は思わず振り返る。
そこには大量のイチョウの葉が突風に吹かれ、吹雪のようにこちらへ向かってきていた。道の隅から隅まで黄色に染め、商店街を塗り替えていく。
不思議だったのは、由良以外に、この場にいる人間が誰一人として逃げようとしないことだった。何事もなく買い物を続ける彼らを見て、由良はイチョウの吹雪が「心の落とし物」であると確信した。
「この急いでる時に!」
由良はイチョウの吹雪に飲まれる寸前で、近くの細い路地へ飛び込んだ。イチョウの吹雪は路地には入って来ず、商店街を真っ直ぐ突っ切っていった。
由良はそのまま商店街の裏を通って、イチョウの吹雪の出どころへ向かった。LAMPへ帰っても良かったが、今解決しなければ、商店街はずっとこのままかもしれないと危惧した。
商店街の裏は雑居ビルが建ち並んでおり、商店街と違って静まり返っていた。オータムフェスから帰る人がちらほらいるくらいで、ひと気もほとんどない。
「……一体、誰? あんなスケールのデカい〈心の落とし物〉を落としたのは」
由良は〈心の落とし物〉の持ち主に呆れつつ、先を急いだ。
加えて、LAMPでコーヒーを待っているであろう紅葉谷から話を聞く必要もあった。
もちろん、彼が行方をくらましている紅葉谷秋生本人である可能性もある。
だが、もし〈探し人〉ならば、なんとかして本体の居場所を聞き出し、早急に今までの飲食代を接収する必要があった。彼が今まで飲み食いした額は、かなりのもので、店にとっては大損害だった。
「なんとしてでも、払わせる!」
由良は人混みを避けるように道の端を歩き、紅葉谷の元へ向かった。
商店街の半ばほどまで進んだその時、背後からヒラリと黄色いものが舞い、由良の視界に入ってきた。
それはごくありふれた、イチョウの葉だった。綺麗に黄色く色づき、わずかにも破れることなく、扇形の美しい姿を保っている。
由良もイチョウの美しさに見惚れ、思わず手を伸ばした。
「洋燈神社のイチョウかしら? 風に乗せられて、ここまで飛んできたのね」
その時、突如背後から突風が吹きつけた。
由良の目の前を舞っていたイチョウの葉はあっという間に、遠く彼方へ飛ばされていった。
「うわっ、何この風」
由良は思わず振り返る。
そこには大量のイチョウの葉が突風に吹かれ、吹雪のようにこちらへ向かってきていた。道の隅から隅まで黄色に染め、商店街を塗り替えていく。
不思議だったのは、由良以外に、この場にいる人間が誰一人として逃げようとしないことだった。何事もなく買い物を続ける彼らを見て、由良はイチョウの吹雪が「心の落とし物」であると確信した。
「この急いでる時に!」
由良はイチョウの吹雪に飲まれる寸前で、近くの細い路地へ飛び込んだ。イチョウの吹雪は路地には入って来ず、商店街を真っ直ぐ突っ切っていった。
由良はそのまま商店街の裏を通って、イチョウの吹雪の出どころへ向かった。LAMPへ帰っても良かったが、今解決しなければ、商店街はずっとこのままかもしれないと危惧した。
商店街の裏は雑居ビルが建ち並んでおり、商店街と違って静まり返っていた。オータムフェスから帰る人がちらほらいるくらいで、ひと気もほとんどない。
「……一体、誰? あんなスケールのデカい〈心の落とし物〉を落としたのは」
由良は〈心の落とし物〉の持ち主に呆れつつ、先を急いだ。
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