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第11.5話「2022年エイプリルフール企画 五代が作った乙女ゲーム『君と9人のイケメンズ』を、絶賛彼氏募集中の暗梨がプレイしてみた!」
オマケ(ドッキリ注意)
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「やっぱ、バッドエンドルートいらないっすよねー。たまにバグるし」
五代はヘラヘラと笑いながら起き上がった。心なしか、笑いが引きつっている。
「バグって?」
「ゲーム上の欠陥のことっすよ。本来はあり得ないことが起きたり、急にゲームが落ちたりするんす。すぐに直せばいいだけのことなんすが、今回のバグはどうにもできなくてお手上げっす……」
落ち込む五代に対し、暗梨は「面白そう!」と目をキラキラ輝かせた。コントローラーを拾い、画面の前に座る。
「ねぇ、どうすれば見れるの?」
「……後悔しないでおくんなましよ?」
五代はゲームをリセットし、最初から始めた。
「バグを起こすのは簡単っす。ソウケン氏ルートに入ればいいだけっす。ソウケン氏に気に入られるような選択をすればいいっす」
「りょうかーい」
☆
暗梨は指示通り、とにかくソウケンに好かれる選択肢を選んでいった。
ハルトと登校することで一旦彼のルートに入り、途中で合流したソウケンに猛アタックした。自販機で買ったおしるこを渡すと、急激に親密度が上がった。
『お前、どうして俺がおしるこ好きだと知っていたんだ?』
『私、ソウケン君のファンなの! お昼は売店のおはぎと赤飯と白玉あんみつをご馳走させてね!』
『フッ、最高だ……。今日から君も、世界過激派あんこ組織ANKOの構成員を名乗りたまえ。総統の俺が許可しよう』
『ありがとうございます!』
大真面目に感動するソウケンに、暗梨はドン引きした。
「……あいつって、こんなあんこバカだったっけ?」
「うん。三食あんこでいいって言ってるくらいだからね。もし平和な現代で生まれていたら、こんな感じの残念なイケメンになってたと思うよ」
部活は当然、剣道部を選んだ。
勧誘しに来た朱羅は、アンリ渾身の胴で倒された。
『お前も赤飯にしてやろうかァァァッ!』
『レッドライスぅぅぅッ?!』
「赤飯って"れっどらいす"なの?」
「ううん。本当はrice boiled with red beansって言うらしいけど、長いから直訳したのだ」
「ら、らいす、ぼい……なんて?」
部活が終わると、アンリはソウケンと途中まで一緒に帰った。
『それじゃあ、また明日ー』
『あぁ。今度、あずき食べ放題行こうな』
「いつのまにそんな恐ろしい約束したのよ」
「そろそろ来るっすよ……例のバグが」
五代は怯えた様子で、暗梨の後ろに隠れた。
「邪魔」
「ゲフッ」
暗梨にひじでアゴを打たれた。
☆
『おjょうSあnコンバンわ』
アンリが自宅に着いた矢先、壊れた機械音声のような不気味な声が聞こえてきた。
「何? 今の声」
『何? 今の声』
暗梨とアンリは怪訝な顔をする。
次の瞬間、「RァnMぁ」という謎の人物が表示された。セリフも名前も文字化けしていて、上手く読めない。
立ち絵も、コンタローの立ち絵に無理矢理別のキャラクターを合成したようにちぐはぐで、ところどころピンクのドットで表示されていた。
「で、出たー! これが例のバグっす!」
五代はアゴを押さえ、震え上がる。
RァnMぁは穏やかに微笑み、アンリに尋ねた。
『キmEはぁOィ君ノkおTぉぐぁ好きナnOくァい?』
・好き
・嫌い
・興味ない
「なんて?」
「分かんない。どれ選んでもバッドエンドになるから、どれでもいいよ」
「じゃあ……」
暗梨はコントローラーを操作した。
・好き
・嫌い
・興味ない
▷アンタ、何者?
『アンタ、何者?』
「おー! 暗梨氏、ナイス! これでこのキャラクターの正体が分かるかも!」
「ふふん」
暗梨は得意そうにニヤっと笑う。
『ゔoくァ、ぁ……』
アンリの質問に、RァnMぁはさらに声を音割れさせつつ答えた。
『ア゛ォyいクnのォ、"蜿倶ココ"ダょオォッ!』
RァnMぁはアンリに向かって、大きな何かを振り下ろす。
『いやーッ!』
鈍い音がし、アンリは倒れる。
RァnMぁはアンリが倒れた後も、大きな何かを振り下ろし続けた。
『アはハ歯刃破覇ッ! シねッ! ボkゥトaヲEクnイガイwぁ、ミんナシnでsHiまゑェェェッ!!!』
RァnMぁの甲高い奇声が、部屋中に響く。
画面は徐々に赤く染まっていき、何も見えなくなった。
「もういいッ! 消してッ!」
狂気的な光景を前に、暗梨は青ざめ、悲鳴を上げる。
声が聞こえないよう、手で耳を押さえていた。
「合点!」
五代はゲームのリセットボタンを押す。
しかしゲームはリセットされず、狂気の光景のままだった。
「何でリセットされないのよ?!」
「くっ、やっぱダメか! このバグ……何やっても、一定時間経たないと消えないんっすよ!」
「そういうことは早く言えぇぇッ!」
「さーせェェェん!!!」
五代はパソコンやテレビの電源を落としたり、それらのコンセントを抜いてみたりもしたが、ゲームは消えなかった。何の電源もなしに、狂気の映像を流し続ける。
やがて音がやむと、RァnMぁは音割れしていない、クリアな男性の声で言った。
『待っててね、(ピー)君。もうすぐ会いに行くから』
そこで画面はブツッと音を立て、消えた。
電源を入れると、何事もなかったようにパソコンのトップ画面に戻っていた。
「……えー、このように突然バグキャラが登場し、主人公が殺されます。一定時間経つとゲームが強制的に終了し、パソコンのトップ画面に戻されます。あんだすたん?」
「怖すぎるわッ! さっさと直せ!」
「だから直せないんだって……ちょ?! 暗梨氏、それハルティンの限定フィギュアじゃん! やめて! 投げようとしないで!」
「だったら、今すぐ直せー!」
「ギャァァァ! ハルティィィィンッ!」
五代にも分からなかったバグの原因と、「RァnMぁ」の正体。
それは、いずれ来たる災厄の前触れだったのだが……その真相を知るのは、「RァnMぁ」本人だけだった。
☆
「もうすぐ……もうすぐ会えるね、アオイ君。今度こそ、君を倒してみせるからね。僕の"友人"にして、宿敵のアオイ君……フフ、フフフフフ……」
(第11.5話「2022年エイプリルフール企画 五代が作った乙女ゲーム『君と9人のイケメンズ』を、絶賛彼氏募集中の暗梨がプレイしてみた!」終わり)
五代はヘラヘラと笑いながら起き上がった。心なしか、笑いが引きつっている。
「バグって?」
「ゲーム上の欠陥のことっすよ。本来はあり得ないことが起きたり、急にゲームが落ちたりするんす。すぐに直せばいいだけのことなんすが、今回のバグはどうにもできなくてお手上げっす……」
落ち込む五代に対し、暗梨は「面白そう!」と目をキラキラ輝かせた。コントローラーを拾い、画面の前に座る。
「ねぇ、どうすれば見れるの?」
「……後悔しないでおくんなましよ?」
五代はゲームをリセットし、最初から始めた。
「バグを起こすのは簡単っす。ソウケン氏ルートに入ればいいだけっす。ソウケン氏に気に入られるような選択をすればいいっす」
「りょうかーい」
☆
暗梨は指示通り、とにかくソウケンに好かれる選択肢を選んでいった。
ハルトと登校することで一旦彼のルートに入り、途中で合流したソウケンに猛アタックした。自販機で買ったおしるこを渡すと、急激に親密度が上がった。
『お前、どうして俺がおしるこ好きだと知っていたんだ?』
『私、ソウケン君のファンなの! お昼は売店のおはぎと赤飯と白玉あんみつをご馳走させてね!』
『フッ、最高だ……。今日から君も、世界過激派あんこ組織ANKOの構成員を名乗りたまえ。総統の俺が許可しよう』
『ありがとうございます!』
大真面目に感動するソウケンに、暗梨はドン引きした。
「……あいつって、こんなあんこバカだったっけ?」
「うん。三食あんこでいいって言ってるくらいだからね。もし平和な現代で生まれていたら、こんな感じの残念なイケメンになってたと思うよ」
部活は当然、剣道部を選んだ。
勧誘しに来た朱羅は、アンリ渾身の胴で倒された。
『お前も赤飯にしてやろうかァァァッ!』
『レッドライスぅぅぅッ?!』
「赤飯って"れっどらいす"なの?」
「ううん。本当はrice boiled with red beansって言うらしいけど、長いから直訳したのだ」
「ら、らいす、ぼい……なんて?」
部活が終わると、アンリはソウケンと途中まで一緒に帰った。
『それじゃあ、また明日ー』
『あぁ。今度、あずき食べ放題行こうな』
「いつのまにそんな恐ろしい約束したのよ」
「そろそろ来るっすよ……例のバグが」
五代は怯えた様子で、暗梨の後ろに隠れた。
「邪魔」
「ゲフッ」
暗梨にひじでアゴを打たれた。
☆
『おjょうSあnコンバンわ』
アンリが自宅に着いた矢先、壊れた機械音声のような不気味な声が聞こえてきた。
「何? 今の声」
『何? 今の声』
暗梨とアンリは怪訝な顔をする。
次の瞬間、「RァnMぁ」という謎の人物が表示された。セリフも名前も文字化けしていて、上手く読めない。
立ち絵も、コンタローの立ち絵に無理矢理別のキャラクターを合成したようにちぐはぐで、ところどころピンクのドットで表示されていた。
「で、出たー! これが例のバグっす!」
五代はアゴを押さえ、震え上がる。
RァnMぁは穏やかに微笑み、アンリに尋ねた。
『キmEはぁOィ君ノkおTぉぐぁ好きナnOくァい?』
・好き
・嫌い
・興味ない
「なんて?」
「分かんない。どれ選んでもバッドエンドになるから、どれでもいいよ」
「じゃあ……」
暗梨はコントローラーを操作した。
・好き
・嫌い
・興味ない
▷アンタ、何者?
『アンタ、何者?』
「おー! 暗梨氏、ナイス! これでこのキャラクターの正体が分かるかも!」
「ふふん」
暗梨は得意そうにニヤっと笑う。
『ゔoくァ、ぁ……』
アンリの質問に、RァnMぁはさらに声を音割れさせつつ答えた。
『ア゛ォyいクnのォ、"蜿倶ココ"ダょオォッ!』
RァnMぁはアンリに向かって、大きな何かを振り下ろす。
『いやーッ!』
鈍い音がし、アンリは倒れる。
RァnMぁはアンリが倒れた後も、大きな何かを振り下ろし続けた。
『アはハ歯刃破覇ッ! シねッ! ボkゥトaヲEクnイガイwぁ、ミんナシnでsHiまゑェェェッ!!!』
RァnMぁの甲高い奇声が、部屋中に響く。
画面は徐々に赤く染まっていき、何も見えなくなった。
「もういいッ! 消してッ!」
狂気的な光景を前に、暗梨は青ざめ、悲鳴を上げる。
声が聞こえないよう、手で耳を押さえていた。
「合点!」
五代はゲームのリセットボタンを押す。
しかしゲームはリセットされず、狂気の光景のままだった。
「何でリセットされないのよ?!」
「くっ、やっぱダメか! このバグ……何やっても、一定時間経たないと消えないんっすよ!」
「そういうことは早く言えぇぇッ!」
「さーせェェェん!!!」
五代はパソコンやテレビの電源を落としたり、それらのコンセントを抜いてみたりもしたが、ゲームは消えなかった。何の電源もなしに、狂気の映像を流し続ける。
やがて音がやむと、RァnMぁは音割れしていない、クリアな男性の声で言った。
『待っててね、(ピー)君。もうすぐ会いに行くから』
そこで画面はブツッと音を立て、消えた。
電源を入れると、何事もなかったようにパソコンのトップ画面に戻っていた。
「……えー、このように突然バグキャラが登場し、主人公が殺されます。一定時間経つとゲームが強制的に終了し、パソコンのトップ画面に戻されます。あんだすたん?」
「怖すぎるわッ! さっさと直せ!」
「だから直せないんだって……ちょ?! 暗梨氏、それハルティンの限定フィギュアじゃん! やめて! 投げようとしないで!」
「だったら、今すぐ直せー!」
「ギャァァァ! ハルティィィィンッ!」
五代にも分からなかったバグの原因と、「RァnMぁ」の正体。
それは、いずれ来たる災厄の前触れだったのだが……その真相を知るのは、「RァnMぁ」本人だけだった。
☆
「もうすぐ……もうすぐ会えるね、アオイ君。今度こそ、君を倒してみせるからね。僕の"友人"にして、宿敵のアオイ君……フフ、フフフフフ……」
(第11.5話「2022年エイプリルフール企画 五代が作った乙女ゲーム『君と9人のイケメンズ』を、絶賛彼氏募集中の暗梨がプレイしてみた!」終わり)
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