贄原くんと3匹の鬼

第10話「ブラック・クリスマス」

目白先生の妖怪講座 第１０回

　私だ、目白だ。
　今回は異形化、異界化した秀星塾について話そうと思う。
　黒縄君の妖気にあてられ、変化した塾……その知られざる生態とは？

『秀星塾しゅうせいじゅく、あるいは欲望の塔』
　カラフルで前衛的なデザインの塔。生きた鳥のモニュメントが飾られ、時折けたたましく鳴き叫ぶ。
　内部は異界化しており、重力が逆になっている、教室の天地があべこべ、天井には巨大な鳥の顔が形成されており、獲物が来るのを待っている。
　勉強をする意思のない者は囚われ、モニュメントと同じ鳥のマスクを被らされる。このマスクを被っていると自らの欲望を具現化した幻覚を見させられ、欲望に堕ちると狂ってしまう。チャイムが鳴ると強制的に堕とされ、自ら巨大な鳥のもとへ食べられに向かう。そのため、欲望のつけ入る隙のない人間……すなわち、勉強をしたい人間は外へ追い出されたと思われる。
　この塔の本体は巨大な顔の鳥である。欲望に堕ちた人間を糧に成長し、そして充分な力を蓄えると、新たな犠牲者を求めて飛び立つ。その際、塔があった場所に卵を産み落とし、新たな塔を建物に根づかせる。学校や会社など、不特定多数の人間が過ごしている場所が多い。
　中にいた人間の精神に多大な後遺症を与えた塔だが反面、異界化していたおかげで、黒縄君の「金属を異形に変える」術の影響は受けなかった。
　文具、机、椅子、窓、照明、教室そのもの……異形化に該当する物は、身近に大量にある。もしこの術が塾でも作用していたら、遠井君は二度と私達の前には現れなかったかもしれない。

　如何だっただろうか。
　術者協会には遅れを取ってしまったが、蒼劔達は本当によく頑張ったと思う。
　ただ、今回は騒動の規模が大き過ぎた。術者協会に目をつけられなければいいが……。
　ではまた次回。