贄原くんと3匹の鬼

第6.5話「祖母の絵」

目白先生の妖怪講座 第6.5回

　私だ、目白だ。
　今回は夢見鳥と吸命蛾について話そうと思う。
　同じ飛ぶ生き物でも、その生態は全くの別物のようだ。

『夢見鳥ゆめみどり』
　桃源郷とうげんきょうと呼ばれている清浄な気で満たされた異界に存在する妖怪。鳳凰ほうおうに似た外見の美しい鳥で、虹色の光を帯びた純白の羽根を持つ。
　羽根一枚一枚に妖力が宿っており、枕の下に置いて眠ると夢見が良くなるという。そのため、夢見鳥の羽根は高値で取り引きされており、羽根を狙って桃源郷を訪れようとする術者や異形が続出しているが、邪な考えを持った者では桃源郷には入れないので、絶滅の心配はない。
　他の妖力の影響を受けやすく、外気にさらしているだけで、わずかな妖力に反応し、羽根の美しさが損なわれてしまう。そうなると夢にも影響が出るため、妖力を遮断する特殊な袋に入れ、厳重に保管することが必須となる。
　なお、異形でも自身の妖力を遮断すれば、羽根を使って夢を見ることが出来る。黒縄君達もそのような方法で夢を見ていたのだろうね。

『吸命蛾きゅうめいが』
　種族問わず、妖力も霊力も吸い取ってしまう妖怪。妖力が弱いため、憑依されていても気づかれにくい。
　外見は目玉の模様が印象的な、ごくありふれた小さな蛾だが、ひとたび建物に居着かれると、末代まで集られるという恐ろしい妖怪だ。1匹ならいざ知らず、100匹以上の吸命蛾に集られ、生きたまま妖力ないし、霊力を吸われ続けるというのは、かなり恐ろしいね。
　贄原君が夢の中で見たように、蛾同士が集まって人間に擬態することも出来る。とは言え、擬態のクオリティは低く、喋れないため、すぐにバレてしまう。
　ヤミヒソミ同様、人間界に住み着いているケースが多く、術者はたびたび吸命蛾の駆除に追われているようだ。大変そうだね。

　如何だっただろうか。
　吸命蛾が憑依していたとはいえ、夢の羽根を抹消するなんて、蒼劔君も勿体ないことをするものだ。私が欲しいくらいだよ。
　ではまた次回。