贄原くんと3匹の鬼

第3.5話「成田、塾へ行く」

目白先生の妖怪講座 第3.5回

 私だ、目白だ。
 今回は代返くんの情報についてまとめてみようと思う。
 二転三転した彼の素性と、五代君の悪知恵やいかに？

『代返だいへんくん』
 代返がバレたことで塾をやめさせられ、受験に失敗した大片 努おおかた つとむの塾への怨念がこもったシャーペンが妖怪と化したもの。
 その魂は大片努の怨念で形成されているため、「元人間」というのはあながち間違いではない……と思う。彼がこう濁したのは、「人間でも妖怪になる可能性がある」と彼なりに警告したかったからなのかもしれないね。もしくは、ただ脅したかっただけなのかも……うん。
 普段は小柄な男子生徒の格好をしているが、実際は様々な人間の目、鼻、口、耳がいくつもある顔を持ち、服装も学ラン、ブレザー、セーラー服をつなぎ合わせたような服を着ている。人間体は大片努の生前の姿であり、学ランの校章は彼の高校のもの。
 塾生に代返を持ちかけ、本人の口から名前を得ることで、成り代わることができる。その成り代わりは「存在そのものを書き換える」という強力なもので、目の前にいても気づかれず、過去の記憶や記録までも遡って上書きするほど。ただし、同じように成り代わられた者や、五代君のように観測力に優れた者には効かないので、一部の者には存在が知られているようだ。
 成り代わられた人間はその間、霊力を奪われ続け、やがて死に至る。代返くんが成り代わりを続けられるのは本人が塾をやめる時期までの期限付きだが、その頃には大半の人間が霊力切れで死んでいるか、孤独から絶望し、自殺する。
 五代君が都市伝説サイトに掲載していた情報はあながち間違ってはいないが、「助かる」とは書いていないところが、彼の人間に対する冷酷さを表していると言えるね。いくらイタズラ防止とはいえ、不足した情報を提供するのはどうかと思うよ。

 如何だっただろうか。
 成田君はああ見えて、やる時はやってくれる優秀な生徒のようだね。
 贄原君も彼を少し見習って欲しいものだ。
 ではまた次回。