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第5話「節木高校七不思議」
拾弐:0時の始業チャイム
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突如夜の学校に鳴り響いたチャイムに、陽斗は体をビクつかせる。
「ビックリした……うちの学校って、夜中にもチャイム鳴ってたんですね?」
「……いや、鳴らない」
不知火は顔を上げ、チャイムの音に耳を澄ませる。
陽斗もよく音を聴いてみると、昼間に鳴っているチャイムより半音ズレていた。聞き慣れているはずのチャイムが、たったそれだけで不気味なメロディーに聞こえた。
「なんか、不気味だね。蒼劔く、」
陽斗は蒼劔に視線をやろうとして、彼の背後に大勢の霊達が並んでいることに気づいてしまった。皆、学生服を着ており、青白い顔をしていた。
「そ、そ、蒼劔君、う、後ろ……!」
「お前もな」
蒼劔は背後に立つ霊に全く動じることなく、冷静に陽斗の背後を指差した。
恐る恐る陽斗が振り返ると、頭にアーチェリーの矢が刺さっている、学ランの男子生徒が後ろから陽斗をジッと見ていた。
陽斗は「うひゃっ?!」と跳び上がり、蒼劔にすがりついた。気づけば、陽斗達は大勢の学生服を着た霊に取り囲まれていた。
「びっ、びっくりした……! いつの間にこんな増えてたの?」
「さっきのチャイムが鳴った途端に現れた。他の階も同じ状態になっているだろう」
その時、下から成田達の悲鳴が聞こえた。
霊から逃げているのか、バタバタと廊下を走る音も聞こえる。
「今の声、成田君達じゃない?!」
青ざめる陽斗に、蒼劔も表情を曇らせ、頷く。
「急ごう。このままでは手遅れになるかもしれん」
蒼劔は左手から持てるだけスタングレネードを出すと、階段までの道に向かって投げつけた。
・
陽斗と不知火は蒼劔がスタングレネードと刀で霊を消滅させて出来た道をたどり、階段を下りて2階に到達した。
2階の探索を担当していた岡本と遠井は、陽斗達が下りてきた階段の前にいた。
「部長さん! 遠井君! 大丈夫?!」
「やだー! 離せー!」
「いいから大人しくしろ!」
そこで、岡本が遠井に羽交い締めにされていた。ジタバタと手足を動かし、抵抗している。
遠井は陽斗を見つけると「贄原、お前も手伝え!」と岡本を指差した。
「このアホ部長がここに残ると言って、聞かないんだ! なんとかしてこいつを気絶させられないか?!」
「そ、そう言われても……」
「ダメだ! この機会を逃す訳にはいかない! 目の前で七不思議の7番目『幽霊の学校』が発生しているんだぞ! なんとしてでの、証拠を残さねば!」
2階の廊下にも3階同様、霊がひしめき合っていた。霊が見えないはずの遠井にもこの光景は見えているらしく、顔をしかめている。
それでも岡本は懲りずに、遠井から脱出しようとしていた。
「0時の始業チャイムが鳴ると、『幽霊の学校』が出現する……噂は本当だったんだ! そして『幽霊の学校』とは、この節木高校のもう1つの顔だったというわけさ!」
「なら、なおさらここから出ないと危険ですよ! 成田君から聞きましたけど、日の出までに出ないと二度と出られなくなっちゃうんですよね?」
陽斗も岡本を説得しようと試みるが、岡本は平気な顔で手をヒラヒラさせた。
「日の出までに出ればいいんだろう? あと3、4時間もあるじゃないか! それならもう少しここにいたって、いいんじゃにゃい?」
すると不知火が遠井の後ろから岡本を持ち上げた。
背の低い岡本は「降ろしておくれよー!」と宙でバタバタと足を動かすが、不知火はがっちりと岡本の両腕をつかんで離さなかった。
「ダメだよ、岡本君。0時までに調査を終わらせる約束だろう? 早く帰らないと、校長に怒られてしまう」
「くっ、校長め。なんと卑劣な! この千載一遇のビックチャンスを逃す訳にはいかないというのにぃっ!」
「はいはい。行こうか」
不知火はそのまま階段を下りて行こうとした。1階に続く階段にも、霊は大勢立っていた。
「おい、待て!」
慌てて蒼劔は不知火の進行方向にいる霊を斬り、青い光の粒子へと変える。そしてすぐさま、懐からハリセンを取り出し、不知火の体に青い光の粒子が付着しないよう、青い光の粒子を扇いで退けた。
「あっ! それって、オダマリハリセン?」
陽斗はハリセンを見て、声を上げる。
それは叩いた人間を失神させ、短時間だけどんな命令でも聞かせることが出来るという魔具だった。山根のレストランで破損し、修理に出していたのだ。
修理に出す前はボロボロに破けていたハリセンが、最初に陽斗が見た時のように綺麗な状態になっていた。
「あぁ。昨日、修理から戻ってきた。俺は人間に憑依した霊は倒せないから、もしお前や成田達に霊が憑依した時に使おうと思ってな」
陽斗は蒼劔がハリセンを使った際のことを思い出し、顔をしかめた。
「えぇー……痛そう」
「文句を言うな。霊が肉体を得ると、ロクなことにならんぞ。早急に除霊しなければ、命に関わるからな」
蒼劔は陽斗に解説しながら、霊を倒して道を作っていく。
不知火はそんな蒼劔を横目に、ゆっくり1歩ずつ階段を下りて行った。
「おぉー! 我々の行く道の霊だけが、勝手に消えていく! まるでモーゼのようではないか! これは奇妙だぞぉ!」
「もう意味が分からない……」
蒼劔の姿が見えない岡本と遠井は目の前でそんなことが起こっているとも知らず、この不可解な現象に1人は喜び、1人は頭を抱えていた。
「……」
陽斗達が階段を下りて行った後、残された霊達は階段の上から無言で彼らを見下ろしていた。
「ビックリした……うちの学校って、夜中にもチャイム鳴ってたんですね?」
「……いや、鳴らない」
不知火は顔を上げ、チャイムの音に耳を澄ませる。
陽斗もよく音を聴いてみると、昼間に鳴っているチャイムより半音ズレていた。聞き慣れているはずのチャイムが、たったそれだけで不気味なメロディーに聞こえた。
「なんか、不気味だね。蒼劔く、」
陽斗は蒼劔に視線をやろうとして、彼の背後に大勢の霊達が並んでいることに気づいてしまった。皆、学生服を着ており、青白い顔をしていた。
「そ、そ、蒼劔君、う、後ろ……!」
「お前もな」
蒼劔は背後に立つ霊に全く動じることなく、冷静に陽斗の背後を指差した。
恐る恐る陽斗が振り返ると、頭にアーチェリーの矢が刺さっている、学ランの男子生徒が後ろから陽斗をジッと見ていた。
陽斗は「うひゃっ?!」と跳び上がり、蒼劔にすがりついた。気づけば、陽斗達は大勢の学生服を着た霊に取り囲まれていた。
「びっ、びっくりした……! いつの間にこんな増えてたの?」
「さっきのチャイムが鳴った途端に現れた。他の階も同じ状態になっているだろう」
その時、下から成田達の悲鳴が聞こえた。
霊から逃げているのか、バタバタと廊下を走る音も聞こえる。
「今の声、成田君達じゃない?!」
青ざめる陽斗に、蒼劔も表情を曇らせ、頷く。
「急ごう。このままでは手遅れになるかもしれん」
蒼劔は左手から持てるだけスタングレネードを出すと、階段までの道に向かって投げつけた。
・
陽斗と不知火は蒼劔がスタングレネードと刀で霊を消滅させて出来た道をたどり、階段を下りて2階に到達した。
2階の探索を担当していた岡本と遠井は、陽斗達が下りてきた階段の前にいた。
「部長さん! 遠井君! 大丈夫?!」
「やだー! 離せー!」
「いいから大人しくしろ!」
そこで、岡本が遠井に羽交い締めにされていた。ジタバタと手足を動かし、抵抗している。
遠井は陽斗を見つけると「贄原、お前も手伝え!」と岡本を指差した。
「このアホ部長がここに残ると言って、聞かないんだ! なんとかしてこいつを気絶させられないか?!」
「そ、そう言われても……」
「ダメだ! この機会を逃す訳にはいかない! 目の前で七不思議の7番目『幽霊の学校』が発生しているんだぞ! なんとしてでの、証拠を残さねば!」
2階の廊下にも3階同様、霊がひしめき合っていた。霊が見えないはずの遠井にもこの光景は見えているらしく、顔をしかめている。
それでも岡本は懲りずに、遠井から脱出しようとしていた。
「0時の始業チャイムが鳴ると、『幽霊の学校』が出現する……噂は本当だったんだ! そして『幽霊の学校』とは、この節木高校のもう1つの顔だったというわけさ!」
「なら、なおさらここから出ないと危険ですよ! 成田君から聞きましたけど、日の出までに出ないと二度と出られなくなっちゃうんですよね?」
陽斗も岡本を説得しようと試みるが、岡本は平気な顔で手をヒラヒラさせた。
「日の出までに出ればいいんだろう? あと3、4時間もあるじゃないか! それならもう少しここにいたって、いいんじゃにゃい?」
すると不知火が遠井の後ろから岡本を持ち上げた。
背の低い岡本は「降ろしておくれよー!」と宙でバタバタと足を動かすが、不知火はがっちりと岡本の両腕をつかんで離さなかった。
「ダメだよ、岡本君。0時までに調査を終わらせる約束だろう? 早く帰らないと、校長に怒られてしまう」
「くっ、校長め。なんと卑劣な! この千載一遇のビックチャンスを逃す訳にはいかないというのにぃっ!」
「はいはい。行こうか」
不知火はそのまま階段を下りて行こうとした。1階に続く階段にも、霊は大勢立っていた。
「おい、待て!」
慌てて蒼劔は不知火の進行方向にいる霊を斬り、青い光の粒子へと変える。そしてすぐさま、懐からハリセンを取り出し、不知火の体に青い光の粒子が付着しないよう、青い光の粒子を扇いで退けた。
「あっ! それって、オダマリハリセン?」
陽斗はハリセンを見て、声を上げる。
それは叩いた人間を失神させ、短時間だけどんな命令でも聞かせることが出来るという魔具だった。山根のレストランで破損し、修理に出していたのだ。
修理に出す前はボロボロに破けていたハリセンが、最初に陽斗が見た時のように綺麗な状態になっていた。
「あぁ。昨日、修理から戻ってきた。俺は人間に憑依した霊は倒せないから、もしお前や成田達に霊が憑依した時に使おうと思ってな」
陽斗は蒼劔がハリセンを使った際のことを思い出し、顔をしかめた。
「えぇー……痛そう」
「文句を言うな。霊が肉体を得ると、ロクなことにならんぞ。早急に除霊しなければ、命に関わるからな」
蒼劔は陽斗に解説しながら、霊を倒して道を作っていく。
不知火はそんな蒼劔を横目に、ゆっくり1歩ずつ階段を下りて行った。
「おぉー! 我々の行く道の霊だけが、勝手に消えていく! まるでモーゼのようではないか! これは奇妙だぞぉ!」
「もう意味が分からない……」
蒼劔の姿が見えない岡本と遠井は目の前でそんなことが起こっているとも知らず、この不可解な現象に1人は喜び、1人は頭を抱えていた。
「……」
陽斗達が階段を下りて行った後、残された霊達は階段の上から無言で彼らを見下ろしていた。
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