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序
第0.5話「2020年エイプリル・フール企画! 五代が『贄原くんと3匹の鬼』序を実況してみた!」後編
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※この話はエイプリル・フール企画に執筆されたものだべさ。やっていることはかなりふざけてっけど、嘘設定じゃなかったりするかもねー! でも、ぶっちゃけ飛ばしてもえぇんやで。
※この話には「序」ネタバレが含まれています。「序」読了後に読むことを強く、強く! オススメします。
良し! お昼も食べたし、エネルギー充填完了! いつでも行けるぜ!
では、後半戦スタート!
・
『その様子を、青年は繁華街から少し離れた場所に建つ、雑居ビルの屋上から見つめていた。』
こ、このシルエットは、まさか……!
『整った顔立ちの青年だった。切長の青い瞳で、繁華街を闊歩する大蛇を鋭く睨んでいる。』
蒼劔氏ダァーッ!
ギャァァァッ! ウ゛ェッ!
(椅子から転げ落ちる音)
『無造作にくくった髪は腰まであり、十代後半くらいの若者に見えるにも関わらず、真っ白だった。(中略)』
いっててて……思いっきり、後頭部打った。
フローリングだったら、即死だったぜ。その程度じゃ、死なないけど。
『「……妖怪の分際で、人の領域を侵すな」
青年はおもむろに左手を開いた。
すると青年の左手から青く光る粒子が一粒、また一粒と浮き上がり、日本刀の柄(つか)へと形を成した。
「その命……斬る!」
青年は柄を右手で握ると、左手の中から青く輝く刃を引き抜いた。』
カッケェェェッ!
光ってるゥゥゥ! グフッ!
(またも椅子から転げ落ちる音)
『そして大蛇のいる繁華街を目指し、ビルの屋上から別のビルの屋上へと飛び移っていった。』
し、舌噛んだ……。
まぁ、この程度でも死なないけど。
『青年は大蛇の背後まで迫ると、両手で刀を握り、八本ある内の一本の首に向かって跳躍した。
標的にされた一本も青年に気付き、「シャーッ」と牙を剥いて威嚇する。しかし青年は臆することなく大蛇の眼前まで距離を詰めると、刀を振り上げた。』
よし! 勝った!
俺、今のうちにトイレ行ってくるわ!
エンドロール流れ終わったら、教えて!
『……が、刃が大蛇の顔に触れる寸前、横から金棒を持った大男が割って入り、青年の攻撃を防がれた。昔話で鬼がよく所持している、あの金棒である。
刀と金棒が強く打ち合った瞬間、「キィィィンッ!」と、人の耳には聞こえない鋭い音が街中に響いた。』
と思ったら、まだやったんかーい!
デスヨネー! こんな簡単に終わったら、蒼劔氏もビックリだよネー!
「……図体の割には、ショボかったな」
とか言いそうだヨネー!
あ、今のちょっと似てるかも。
でも、相手が金棒持ってる人物ってことは……。
『青年の刀を受け止めたのは、背丈が二メートルはある、大柄な男だった。血のように赤い髪を、整髪剤で丁寧に後ろへ撫でつけている。(中略)』
やっぱ朱羅氏だったー!
俺が知ってる金棒持ちは、朱羅氏オンリーだから、すぐ分かるー!
見た目もオイラに負けじと派手派手だしね! 超、目立つっつーの!
『二人は互いに後退し、地面へ降り立った。大蛇が人の目には見えないのと同じく、彼らの存在を認識し、足を止める人間はいない。皆、何事もなかったかのように、青年と男の体をすり抜けていった。』
この名勝負を見られないなんて、人間の皆さん、ご愁傷様でーす! プギャー!
蒼劔氏vs朱羅氏とか、俺得すぐるんですけどぉー!
『「朱羅、邪魔をするな」
青年は刀の切先を大男に向け、相手を睨んだ。』
カッケェェェッ! あって良かった、サイリウム!
ドームは青一色ですぜ、旦那ァ!
『赤髪の大男、朱羅は金棒を握る手を震わせ、青年に怯えながらも、決して背を向けようとはしなかった。
「……黒縄様から指示があるまで、お待ち頂けませんか? 蒼劔殿」』
かーらーのー、赤一色ぅぅぅッ!
ビビりながらも立ち向かう朱羅氏、まぢサイコー!
応援したくなっちゃうー!
『「あの妖怪の腹が膨れるまで待て、と言うのか? あいつの我儘に付き合っていては、ここにいる連中は残らず霊力を喰われてしまうぞ。お前はそれでいいのか?」
「っ! それは……!」』
これは確実に人気が二分しちゃうわー。
俺っちは断然、朱羅氏派だけどぉ、蒼劔氏のカッコよさも捨てきれないよなー。
もういっそ、どっちも推しちゃう? 禁断のどっちも1番推ししちゃう??
『二人が睨み合っている最中、居酒屋の屋根の上に小柄な子供が音も無く降り立った。』
ギャーッ! 黒縄氏ィッ!
(青ざめ、映像を中断する五代)
怖いよぉぉ……ツンデレショタなのに、オイラには全然デレてくんないの何で……?
そりゃ、朱羅氏に比べたら、まだ日は浅いけどさぁ、せめて「お兄ちゃん」って呼んで欲しいおぉぉ……!
『ツヤのある黒髪を切り揃えた美少年で、つり目がちな大きな黒い瞳が目を引く。(中略)様子が変わったのは、煙を吸い取られ始めてから十秒ほど経った頃だった。』
……。
(黒縄がいなくなるまで、耐えようとする五代)
『「ア゛ァァァーーーーーッ!」
大蛇は突如瞳孔を開き、奇声を上げた。
他の頭も同様に奇声を上げ、さほど酒を飲んでいなかろうがシラフであろうが関係なく、手近な人間へと次々に襲いかかった。地面を這っていた尾も暴れ、近くにあった居酒屋を横殴りで破壊した。
「キャーッ!」
「急に店が崩れたぞ!」
「地震か?!」
店が崩れ、中にいた客も近くを歩いていた人々もパニックに陥る。騒ぎを聞きつけ、続々と人が集まってきた。』
はい! 戻って参りました!
この状況を見れば、黒縄氏が何をやったのか大体分かりますね!
……そう! 蛇っちょの妖力を奪って飢餓状態にし、暴走させたんです!
合ってる? 合ってるよね?
『大蛇は増えていく野次馬達に目をつけると、八つ全ての首を一斉に伸ばし、喰らいつこうとした。
「させん」
蒼劔は大蛇が野次馬達を喰うより先に、刀で全ての首を切り落とした。
あまりにも素早い動きに、朱羅は出遅れた。攻撃を防げず、「あぁ……」と残念そうに声を漏らす。』
朱羅氏はホント、黒縄氏想いダヨネー。
いつか報われて欲しいって、五代も祈ってるよ!
(五代、ウィンクする)
『大蛇は刃が直接触れた切断面から青く光る粒子へと変わり、消滅した。光の粒子は天へと昇り、闇の中へ消えた。
仕事を終え、蒼劔は少年がいた居酒屋の屋根の上を見上げた。既に少年の姿はなく、』
セーフ! 黒縄氏シャットダウン、キャンセル!
というか、もう出ないよね?
もう黒縄氏のターン、終わったもんね?
うーっし! ここからは安心して見れるぜー!
『彼と共に朱羅も消えていた。』
え? 朱羅氏も? オイラの推しの?
えーっ! 朱羅氏はそのまんまでいいよぉ!
いっそ、蒼劔氏と一緒に、黒縄氏を倒してよぉ! 世界平和とオイラのためにさぁ!
『「……まったく。人騒がせな奴だ」
蒼劔は呆れた様子で重く溜め息を吐くと、刀を左手の中へ仕舞った。刀は切先が左手に触れる寸前で粒子へと戻り、左手の中へ吸い込まれていった。』
ホントに、人騒がせな鬼だよね! 超、迷惑!
早く蒼劔氏に倒されちゃえー!
・
『朱羅は黒髪の少年と共に繁華街を離れ、彼の後ろを歩いていた。』
まだ続いてたー! しかも朱羅氏、黒縄氏と一緒じゃーん!
黒縄氏はいらねぇっつってんだろー!
カットカット!
『少年は大層機嫌が悪いのか、眉根にシワを寄せ、顔をしかめている。(中略)』
あ、そういえばハルティンの録画、まだ見てなかったわ。
一緒に見ながら、監視してよっと。
皆さん、ハルティン知ってます? 「魔法少女ハルティン」。
タイトルにある通りの魔法少女ものなんですけど、主人公のハルティンがすっげー健気なんすよ!
『黒縄は怒り冷めやらぬままに、(中略)何事もなかったかのように話を変えた。』
俺の最推しは、もちろんハルティンなんすけどー、他のヒロインの子達も超可愛いんすよぉ。
しかも、みんな性格がいい! やっぱ、顔がどんだけ可愛くても、性格悪い子は「ナイワー」ってなっちゃうっすからね~。
でも、ハルティンオタの中で一番人気のキャラクターが、敵のボスで悪役ヒロインのダークプリンセスなんっすよぉー!
もー、意味分かんないっ!
『朱羅は赤くなった眉間を指で押さえつつ立ち上がり、黒縄の質問に答えた。
「五代殿の投稿のおかげで、人間達の霊力は着々と集まっております。しかし、目標値に達するにはまだまだ時間がかかるかと」』
はい! 五代です!
……え? 今、朱羅氏、俺っちのこと呼んだ?
嘘、マジで?! やっば!
ちょ、もっかい見ちゃダメ? ダメ?
『「そうか。この近辺にいる、霊力の強い人間のリストは?」
「こちらに」
朱羅は角をホチキスで止めた紙の束を胸ポケットから取り出し、黒縄に渡した。(中略)年齢や性別など、集められている人のデータに規則性はなく、千差万別だった。』
それ、オイラが作ったやつぅ~!
やっべーよぉ! 俺っちの出番、しばらくないと思って引きこもってたのに、こんな形で登場しちゃっていいのぉ?!
すっげぇ嬉ピーんだけどぉ!
『ふと、黒縄はある人物の書類に目を留めた。(中略)
「贄原、か……いい名前じゃねェか。妖怪の生贄にすンのに、うってつけの名だ」』
チョットォォォ!
何でよりにもよって、贄原の陽斗氏選んじゃうのぉ?!
そりゃ、書類作ったのオイラだけど、仕方ないから入れただけなのに、何でピンポイントで陽斗氏ぃ?! 意味分かんねーんだけどぉ!
ちょっと、今から黒縄氏に文句言ってくるわ!
『その笑みは子供とは思えないほど不気味だった。』
ごめん、嘘ー! うっそでーす!
黒縄氏にクレームブリュレ入れるとか、俺氏には無理ゲーセンターでーす! 怖っ!
てなわけで、ちょうどお時間となりました! これにて、実況を終わります!
次回もお楽しみにー!
バッホホーイ!
・
「……はぁ」
五代はアパートの一室で実況を終え、深くため息を吐いた。彼の実況を録音する機材は作動しておらず、観覧客もいない。
五代は「実況」と称していたが、実際は「長い独り言」だった。
「……視聴者のいない実況って、やってて虚しいな。かと言って、ホントに実況して上げるわけにもいかねぇし。はー、つら。妖怪、げに、つらきこと、この上なしだわ」
五代はパソコンのモニターでアニメを見ながら、なおも独り言を呟く。
「いつか本当に実況やって、動画を投稿出来たらいいんだけどナー。今はそれどころじゃねぇや」
プラプラと足を揺らし、しばらくアニメに熱中していた。やがて録画しておいた分を全て見終わると、ネットゲームにログインし、ヘッドホンを頭につけた。
ローディングを待つ間、五代は机の上に置いていた書類を手に取った。それは、五代の実況映像の中で黒縄も持っていた「贄原陽斗」に関する書類のコピーだった。
「……さぁーって、次は何を実況しよっかにゃー? 陽斗氏の日常とか?」
五代は「贄原陽斗」の書類のコピーに目を通しつつ、ニヤリと笑った。
(第0.5話「エイプリル・フール企画! 五代が『贄原くんと3匹の鬼』序を実況してみた!」終わり)
※この話には「序」ネタバレが含まれています。「序」読了後に読むことを強く、強く! オススメします。
良し! お昼も食べたし、エネルギー充填完了! いつでも行けるぜ!
では、後半戦スタート!
・
『その様子を、青年は繁華街から少し離れた場所に建つ、雑居ビルの屋上から見つめていた。』
こ、このシルエットは、まさか……!
『整った顔立ちの青年だった。切長の青い瞳で、繁華街を闊歩する大蛇を鋭く睨んでいる。』
蒼劔氏ダァーッ!
ギャァァァッ! ウ゛ェッ!
(椅子から転げ落ちる音)
『無造作にくくった髪は腰まであり、十代後半くらいの若者に見えるにも関わらず、真っ白だった。(中略)』
いっててて……思いっきり、後頭部打った。
フローリングだったら、即死だったぜ。その程度じゃ、死なないけど。
『「……妖怪の分際で、人の領域を侵すな」
青年はおもむろに左手を開いた。
すると青年の左手から青く光る粒子が一粒、また一粒と浮き上がり、日本刀の柄(つか)へと形を成した。
「その命……斬る!」
青年は柄を右手で握ると、左手の中から青く輝く刃を引き抜いた。』
カッケェェェッ!
光ってるゥゥゥ! グフッ!
(またも椅子から転げ落ちる音)
『そして大蛇のいる繁華街を目指し、ビルの屋上から別のビルの屋上へと飛び移っていった。』
し、舌噛んだ……。
まぁ、この程度でも死なないけど。
『青年は大蛇の背後まで迫ると、両手で刀を握り、八本ある内の一本の首に向かって跳躍した。
標的にされた一本も青年に気付き、「シャーッ」と牙を剥いて威嚇する。しかし青年は臆することなく大蛇の眼前まで距離を詰めると、刀を振り上げた。』
よし! 勝った!
俺、今のうちにトイレ行ってくるわ!
エンドロール流れ終わったら、教えて!
『……が、刃が大蛇の顔に触れる寸前、横から金棒を持った大男が割って入り、青年の攻撃を防がれた。昔話で鬼がよく所持している、あの金棒である。
刀と金棒が強く打ち合った瞬間、「キィィィンッ!」と、人の耳には聞こえない鋭い音が街中に響いた。』
と思ったら、まだやったんかーい!
デスヨネー! こんな簡単に終わったら、蒼劔氏もビックリだよネー!
「……図体の割には、ショボかったな」
とか言いそうだヨネー!
あ、今のちょっと似てるかも。
でも、相手が金棒持ってる人物ってことは……。
『青年の刀を受け止めたのは、背丈が二メートルはある、大柄な男だった。血のように赤い髪を、整髪剤で丁寧に後ろへ撫でつけている。(中略)』
やっぱ朱羅氏だったー!
俺が知ってる金棒持ちは、朱羅氏オンリーだから、すぐ分かるー!
見た目もオイラに負けじと派手派手だしね! 超、目立つっつーの!
『二人は互いに後退し、地面へ降り立った。大蛇が人の目には見えないのと同じく、彼らの存在を認識し、足を止める人間はいない。皆、何事もなかったかのように、青年と男の体をすり抜けていった。』
この名勝負を見られないなんて、人間の皆さん、ご愁傷様でーす! プギャー!
蒼劔氏vs朱羅氏とか、俺得すぐるんですけどぉー!
『「朱羅、邪魔をするな」
青年は刀の切先を大男に向け、相手を睨んだ。』
カッケェェェッ! あって良かった、サイリウム!
ドームは青一色ですぜ、旦那ァ!
『赤髪の大男、朱羅は金棒を握る手を震わせ、青年に怯えながらも、決して背を向けようとはしなかった。
「……黒縄様から指示があるまで、お待ち頂けませんか? 蒼劔殿」』
かーらーのー、赤一色ぅぅぅッ!
ビビりながらも立ち向かう朱羅氏、まぢサイコー!
応援したくなっちゃうー!
『「あの妖怪の腹が膨れるまで待て、と言うのか? あいつの我儘に付き合っていては、ここにいる連中は残らず霊力を喰われてしまうぞ。お前はそれでいいのか?」
「っ! それは……!」』
これは確実に人気が二分しちゃうわー。
俺っちは断然、朱羅氏派だけどぉ、蒼劔氏のカッコよさも捨てきれないよなー。
もういっそ、どっちも推しちゃう? 禁断のどっちも1番推ししちゃう??
『二人が睨み合っている最中、居酒屋の屋根の上に小柄な子供が音も無く降り立った。』
ギャーッ! 黒縄氏ィッ!
(青ざめ、映像を中断する五代)
怖いよぉぉ……ツンデレショタなのに、オイラには全然デレてくんないの何で……?
そりゃ、朱羅氏に比べたら、まだ日は浅いけどさぁ、せめて「お兄ちゃん」って呼んで欲しいおぉぉ……!
『ツヤのある黒髪を切り揃えた美少年で、つり目がちな大きな黒い瞳が目を引く。(中略)様子が変わったのは、煙を吸い取られ始めてから十秒ほど経った頃だった。』
……。
(黒縄がいなくなるまで、耐えようとする五代)
『「ア゛ァァァーーーーーッ!」
大蛇は突如瞳孔を開き、奇声を上げた。
他の頭も同様に奇声を上げ、さほど酒を飲んでいなかろうがシラフであろうが関係なく、手近な人間へと次々に襲いかかった。地面を這っていた尾も暴れ、近くにあった居酒屋を横殴りで破壊した。
「キャーッ!」
「急に店が崩れたぞ!」
「地震か?!」
店が崩れ、中にいた客も近くを歩いていた人々もパニックに陥る。騒ぎを聞きつけ、続々と人が集まってきた。』
はい! 戻って参りました!
この状況を見れば、黒縄氏が何をやったのか大体分かりますね!
……そう! 蛇っちょの妖力を奪って飢餓状態にし、暴走させたんです!
合ってる? 合ってるよね?
『大蛇は増えていく野次馬達に目をつけると、八つ全ての首を一斉に伸ばし、喰らいつこうとした。
「させん」
蒼劔は大蛇が野次馬達を喰うより先に、刀で全ての首を切り落とした。
あまりにも素早い動きに、朱羅は出遅れた。攻撃を防げず、「あぁ……」と残念そうに声を漏らす。』
朱羅氏はホント、黒縄氏想いダヨネー。
いつか報われて欲しいって、五代も祈ってるよ!
(五代、ウィンクする)
『大蛇は刃が直接触れた切断面から青く光る粒子へと変わり、消滅した。光の粒子は天へと昇り、闇の中へ消えた。
仕事を終え、蒼劔は少年がいた居酒屋の屋根の上を見上げた。既に少年の姿はなく、』
セーフ! 黒縄氏シャットダウン、キャンセル!
というか、もう出ないよね?
もう黒縄氏のターン、終わったもんね?
うーっし! ここからは安心して見れるぜー!
『彼と共に朱羅も消えていた。』
え? 朱羅氏も? オイラの推しの?
えーっ! 朱羅氏はそのまんまでいいよぉ!
いっそ、蒼劔氏と一緒に、黒縄氏を倒してよぉ! 世界平和とオイラのためにさぁ!
『「……まったく。人騒がせな奴だ」
蒼劔は呆れた様子で重く溜め息を吐くと、刀を左手の中へ仕舞った。刀は切先が左手に触れる寸前で粒子へと戻り、左手の中へ吸い込まれていった。』
ホントに、人騒がせな鬼だよね! 超、迷惑!
早く蒼劔氏に倒されちゃえー!
・
『朱羅は黒髪の少年と共に繁華街を離れ、彼の後ろを歩いていた。』
まだ続いてたー! しかも朱羅氏、黒縄氏と一緒じゃーん!
黒縄氏はいらねぇっつってんだろー!
カットカット!
『少年は大層機嫌が悪いのか、眉根にシワを寄せ、顔をしかめている。(中略)』
あ、そういえばハルティンの録画、まだ見てなかったわ。
一緒に見ながら、監視してよっと。
皆さん、ハルティン知ってます? 「魔法少女ハルティン」。
タイトルにある通りの魔法少女ものなんですけど、主人公のハルティンがすっげー健気なんすよ!
『黒縄は怒り冷めやらぬままに、(中略)何事もなかったかのように話を変えた。』
俺の最推しは、もちろんハルティンなんすけどー、他のヒロインの子達も超可愛いんすよぉ。
しかも、みんな性格がいい! やっぱ、顔がどんだけ可愛くても、性格悪い子は「ナイワー」ってなっちゃうっすからね~。
でも、ハルティンオタの中で一番人気のキャラクターが、敵のボスで悪役ヒロインのダークプリンセスなんっすよぉー!
もー、意味分かんないっ!
『朱羅は赤くなった眉間を指で押さえつつ立ち上がり、黒縄の質問に答えた。
「五代殿の投稿のおかげで、人間達の霊力は着々と集まっております。しかし、目標値に達するにはまだまだ時間がかかるかと」』
はい! 五代です!
……え? 今、朱羅氏、俺っちのこと呼んだ?
嘘、マジで?! やっば!
ちょ、もっかい見ちゃダメ? ダメ?
『「そうか。この近辺にいる、霊力の強い人間のリストは?」
「こちらに」
朱羅は角をホチキスで止めた紙の束を胸ポケットから取り出し、黒縄に渡した。(中略)年齢や性別など、集められている人のデータに規則性はなく、千差万別だった。』
それ、オイラが作ったやつぅ~!
やっべーよぉ! 俺っちの出番、しばらくないと思って引きこもってたのに、こんな形で登場しちゃっていいのぉ?!
すっげぇ嬉ピーんだけどぉ!
『ふと、黒縄はある人物の書類に目を留めた。(中略)
「贄原、か……いい名前じゃねェか。妖怪の生贄にすンのに、うってつけの名だ」』
チョットォォォ!
何でよりにもよって、贄原の陽斗氏選んじゃうのぉ?!
そりゃ、書類作ったのオイラだけど、仕方ないから入れただけなのに、何でピンポイントで陽斗氏ぃ?! 意味分かんねーんだけどぉ!
ちょっと、今から黒縄氏に文句言ってくるわ!
『その笑みは子供とは思えないほど不気味だった。』
ごめん、嘘ー! うっそでーす!
黒縄氏にクレームブリュレ入れるとか、俺氏には無理ゲーセンターでーす! 怖っ!
てなわけで、ちょうどお時間となりました! これにて、実況を終わります!
次回もお楽しみにー!
バッホホーイ!
・
「……はぁ」
五代はアパートの一室で実況を終え、深くため息を吐いた。彼の実況を録音する機材は作動しておらず、観覧客もいない。
五代は「実況」と称していたが、実際は「長い独り言」だった。
「……視聴者のいない実況って、やってて虚しいな。かと言って、ホントに実況して上げるわけにもいかねぇし。はー、つら。妖怪、げに、つらきこと、この上なしだわ」
五代はパソコンのモニターでアニメを見ながら、なおも独り言を呟く。
「いつか本当に実況やって、動画を投稿出来たらいいんだけどナー。今はそれどころじゃねぇや」
プラプラと足を揺らし、しばらくアニメに熱中していた。やがて録画しておいた分を全て見終わると、ネットゲームにログインし、ヘッドホンを頭につけた。
ローディングを待つ間、五代は机の上に置いていた書類を手に取った。それは、五代の実況映像の中で黒縄も持っていた「贄原陽斗」に関する書類のコピーだった。
「……さぁーって、次は何を実況しよっかにゃー? 陽斗氏の日常とか?」
五代は「贄原陽斗」の書類のコピーに目を通しつつ、ニヤリと笑った。
(第0.5話「エイプリル・フール企画! 五代が『贄原くんと3匹の鬼』序を実況してみた!」終わり)
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