贄原くんと3匹の鬼

緋色刹那

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第0.5話「2020年エイプリル・フール企画! 五代が『贄原くんと3匹の鬼』序を実況してみた!」前編

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 ※この話はエイプリル・フール企画に執筆されたものです。やっていることはだいぶふざけていますが、嘘設定ではないかもしれません。でも、ぶっちゃけ飛ばしていいです。
 ※この話には「序」ネタバレが含まれています。「序」読了後に読むことをオススメします。


         ・

 うっすうっす!
 皆さんご存知、五代ごだいでゅえーっす!
 本日は俺っちが覗き見した『蒼劔氏、大蛇と対決する!』を、実況しちゃいたいと思いまーす!
 街を闊歩する八つ首の大蛇!
 それに立ち向かうは青きツノの鬼、蒼劔氏!
 彼を待ち受ける宿敵、黒縄氏と朱羅氏との対決!
 勝利するのは、どちらの鬼か?!
 それでは、VTR……プレイバック!

         ・

『夜の繁華街は賑わっていた。夏のぬるい夜風が、居酒屋の店先にかかっている赤い提灯を揺らす。』
 突然のカミングですが、俺っちはお酒を飲みません。下っ戸下戸です。
 酒飲むくらいなら、メロンクリームソーダをがぶ飲みした方が幸せっすね!
 一回、ビールジョッキで飲んだことあるんすけど、お酒入ってないのに酔っ払いました!

『怪しく光を放つそれを、巨大な眼が間近で凝視していた。客が出入りしている入り口のドアと同じ大きさの金色の眼で、興味深そうに瞳孔を縦に開いていた。』
 目ぇ、デカっ!
 目薬何リットルいんの?!
 コンタクトレンズのサイズは?!
 そもそも、対応してくれる眼科、いる?

『それは巨大な蛇の頭だった。長い首を介し、通りを闊歩している太い胴体と繋がっている』
 ダメだ! 目薬もコンタクトレンズも自分じゃ出来ない!
 あのツルツルした胴体を軽々と登れるロッククライマーか、「SAS◯KE」じゃないと!
 もしくは、ヘリか? ヘリを使えばいいのか?!

『胴の先には他にも七本もの首が伸びており、その姿はかのヤマタノオロチを思わせた』
 多いッ! 目薬もコンタクトレンズも「SAS◯KE」も絶対足りない!
 もういっそ、眼鏡かけてもらう?
 眼鏡なら、コンタクトレンズの半分の数で出来るし。確実に特注だけど。
 
『大蛇の体は夜の闇の中ではかえって目立ってしまうほど黒く、紫色の禍々しい刻印が全身を這うように刻まれていた。』
 カッケェェェッ!
 俺っちも、あんな厨二なタトゥーに憧れてた時期がありますた。
 今でも充分、厨二な見た目してるけど、やっぱ一度はやってみたいじゃん?
「呪われし右腕が疼くゼ!」
 とか、
「俺の秘密を知ったからには、生かしちゃおけねぇなァ」
 とか!
 ……あれ? 黒縄氏、今でも似たようなこと言ってるな。
 もしかして、あのお方も厨二?
 拙者と同志?

『「サケサケ、ヤケザケ、酔イ酔イ、シュー、シュー……」
 大蛇は男とも女とも判別のつかぬ、不気味な声で歌いながら、居酒屋が建ち並ぶ通りを悠々と這っていく。』
 そっかぁ。黒縄氏も厨二だったかぁ。
 どうりで、歳の割にお子ちゃまだと思ったぜ!
 今度、ゴリゴリに厨二な話のラノベを何冊か貸してあげようっと!

『通りを行き交う人々は大蛇の存在に気づくことはない。平然と大蛇の体をすり抜け、何事も無かったかのように去っていく。どうやら普通の人間には、大蛇を感知出来ないらしかった。』
 すり抜けたァァァァッ!
 ……なーんて、驚きはしない五代であった。
 こんなのはね、皆さん気づいてないだけで、日常茶飯事なんで。
 むしろ、すり抜けない方がビックリするっすわ。
「お前、すり抜けてなくね?」
「あ……ホントだ」
 み、た、い、な!
 うわ、こっわ! 一人でトイレ行けなくなりそう!
 ボッチだから、行くけど!

『ふいに、提灯を見つめていた大蛇の頭が、居酒屋の前を千鳥足で歩く酔っ払いの会社員に目を止めた。
「けっ、どいつもこいつも馬鹿にしやがって! 俺ァ、いずれ天下を取る男だぞォ?」
 酔っ払いは随分呑んだらしい。顔は真っ赤に火照り、呂律の回っていない舌で何やら喚いていた。』
 把握。この人、今回の被害者枠ですね。
 唐突にフォーカスされるパンピーは、大体ロクなことにはならない。はい、ここテストに出まーす。
 忘れずにノートに書いて、赤ペンで波線引いて下さーい。

『大蛇はおもむろに酔っ払いの頭上へ首を伸ばすと次の瞬間、酔っ払いの頭から靴の先までを一気に口に含んだ』
 ほら言ったでしょー!
 やっぱ、テストに出たじゃーん!
 このおっさん、死亡フラグ踏みすぎぃ!
 もっと慎重になって下さーい!
 
『「んぁ? なんだァ?」
 酔っ払いは己が大蛇の口の中にいるとも知らず、突如全身が締めつけられたように動かなくなったことに戸惑い、もがく。』
「あれ? 俺、すり抜けなくね?」
 悲報! 俺氏の妄想が、現実に!
 まぁ、この場合は蛇側がすり抜けさせないようにしてるって分かってるんで、あんま怖くはないっすねー。
 おっさん、早よ気づいて。

『大蛇が酔っ払いを口に含んだまま、しばらくモゴモゴと口を動かしていると、酔っ払いの体から白い煙のようなものが立ち昇った。煙は生き物のようにゆらゆらと揺れながら、大蛇の喉の奥へとどんどん吸い込まれていく。』
 あー…… (映像に見入っている)。

『煙が吸われていくのに従い、酒で真っ赤になっていた酔っ払いの顔はみるみるうちに青ざめていった。全身から体温が奪われ、血の気が引いていく。』
 あらー…… (もうこりゃダメだ、と呆れる表情)。

『やがて酔っ払いの体から完全に煙が出なくなると、大蛇は「用無し」とばかりに酔っ払いを地面へ吐き出した。酔っ払いは完全に生気を失い、倒れたままピクリとも動かなくなった。』
 し、死んでる……!
 せめて、素面であれば!
 ……それでも、助かる見込みは低いけど。

『「ちょっとお客さん、大丈夫ですか?!」
 近くの居酒屋で呼び込みをしていた店員が酔っ払いの異変に気づき、慌ててスマホで救急車を呼ぶ。まさか、酔っ払いが倒れた原因が「大蛇に煙を食べられたせい」などとは、夢にも思っていなかった。』
 気づいたら絶対、ただの一般人じゃないよね。
「このおっさん、煙を喰われたんだ!」
 なんて分かったら、主人公に大抜擢ですよ。

『大蛇は目の前で救急車を呼んでいる店員には見向きもせず、次の標的を探しに向かった。
 他の大蛇の頭も、酔っ払っている通行人や居酒屋の中にいる客を狙い、食らいついていく。(中略)』
 なんか、軽快な曲をバックにかけたくなる絵面だなぁ。じゃないと、メンタル的にキツい。
 俺っちは平気だけど、蛇が苦手な人とかはヤバいよね。蛇を見るだけでもキツいのに、全身を蛇に食われるとか……ヒェッ。

『「サケサケ、ヤケザケ、酔イ酔イ、シュー、シュー……」大蛇は上機嫌に歌い、紫色の細い舌をシュルシュルと動かす。繁華街は常人の知らぬ間に、異形の巣窟と化していた』
 あ、今の「ヒェッ」は、蛇を俺っちが苦手なものに置き換えた想像に体する「ヒェッ」なんで。
 なんか、全身がゾワゾワゾワっ! ってしたっす。
 ……忘れよ、この話。トラウマになるから。
 さーて、後半戦はいよいよあの男の登場だ!
 刮目せよ!

(後編に続く)
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