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第3話「贄原くんの災厄な五日間」後編
4日目:夏祭り③
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蒼劔の言った通り、陽斗の元へ飛んできた2つの火の玉は彼に当たる寸前に水晶のブレスレットの効力で阻まれ、消滅した。
「あ、危なかったぁ……!」
陽斗は両手に林檎飴を持った状態で震えていた。攻撃こそ当たってはいないが、火の玉の温度は間近に感じていた。
少しぬるくなっているが、両手に持っている林檎飴も無事だった。
「これ、どうしよう? 僕が食べるわけにもいかないし……困ったなぁ」
陽斗は屋台の裏から、林檎飴を購入した焦熱と炎熱がいるビルを見上げた。屋上に張られたドーム型の結界は辛うじて見えるが、下からでは屋上にいる彼らの姿は見えず、今の戦況がどうなっているのか分からなかった。
「……あの子達はどうして僕達人間を恨んでるんだろう? 何か嫌なことでもあったのかな?」
陽斗がそう疑問を口にした瞬間、ズボンのポケットに入れていた彼のスマホの着信音が鳴った。
慌てて陽斗は2つの林檎飴を一旦自分のリュックへ仕舞い、ポケットからスマホを手に取った。
『知りたいかい?』
「え?」
声の主は五代だった。どうやら陽斗を監視していたらしい。
「知ってるの?」
『うん。朱羅氏が聞いたら戦えなくなると思って、言わなかったけど』
「……どういうこと?」
五代は陽斗しか聞いていないというのに、声を潜めて答えた。
『焦熱と炎熱は元人間なんだよ。双子だという理由だけで肉親からも忌み嫌われ、儀式の生贄に使われた。死の間際、2人は人間への憎悪を募らせ、鬼となって生まれ変わったのさ』
「そんな……酷い!」
陽斗は愕然とした。あんな可愛い子供を嫌うなんてあり得ない、と思った。
『だから朱羅氏には言えなかったんだよー。言ったら絶対“私は戦えません!”って拒否して、蒼劔氏と揉めるに決まってるもーん』
陽斗はハッと4人がいるビルを見上げた。
屋上の結界はまだ破られてはいないが、決着がつくのは時間の問題だった。
「……僕、ちょっと行ってくる」
『ホワッツ?!』
五代は陽斗が今考えていることを読み取ったのか、声を上擦らせた。
同時に電話の向こうで何かが崩れる音が聞こえる。あまりのことに、動揺して崩してしまったらしい。電話の向こうで『んなー!』と奇声を上げた。
その間に陽斗はスマホ片手に、4人がいるビルへと走り出した。祭り会場になっている大通りを横切り、屋上を目指してビルの非常階段を駆け上がる。
『は、早まるな、陽斗氏! 蒼劔氏から焦熱と炎熱を守るなんて、危険過ぎる! あの2人は君を殺そうとしているんだぞ?! 君が蒼劔氏から2人を庇ったところで、後ろからファイアーされるに決まってる!』
「でも、このまま蒼劔君に消されちゃうなんて納得いかないよ! 確かにあの子達がやったことは許されないかもしれないけど、だからって消されちゃうなんて、おかしい!」
『陽斗氏……』
五代の頭の中には陽斗の気持ちが流れ込んでいた。元は同じ人間だったという親近感、双子というだけで迫害され、生贄にされた不条理への怒りとが混ざり合っている。彼の「2人を助けたい」という意志は確かなものだった。
五代は「陽斗氏ならなんとかなるかも」と、彼を信じることにした。
「そういうわけだから、電話切るね。急がないと間に合わなくなっちゃうかも」
『フッ、仕方ない……行ってくればいいさ。ただし、これだけは約束してくれ。絶対生きて帰、』
ピッ
陽斗は五代の言葉を最後まで聞くことなく通話を止め、スマホをポケットへ突っ込んだ。手ぶらになったことで、階段を上るスピードが上がる。
「焦熱君、炎熱君……無事でいて!」
陽斗は一度も足を止めることなく、8階建てのビルの最上階の屋上へ到達した。
・
陽斗との通話を終え、五代はスマホを机に置いた。アニメのキャラクターをイメージしたミントグリーン色のスマホケースを装着したスマホだった。
五代は椅子の背もたれに寄りかかり、シミだらけの天井を仰ぐ。
「陽斗氏……どうしてチミ達一族は、オイラ達異形に優しいんだい? 恩を仇で返すような、どうしようもない連中ばっかりなのにさ……」
ふと、五代は自分がとんでもないことを忘れている気がした。腕を組み、首を左右に振って心当たりのある事象を思い返す。
「はて、なんだったかな? アニメは全部録画してあるし、アニメライブサマーバケーションもといアラサーは昼間で終わったし、お目当ての漫画とラノベの発売日もまだ先だし、大した仕事の依頼はないし、黒縄氏はアジトから動いてないから大丈夫だし……」
五代は暫く考えていたが「まぁ、忘れるほどのことだし、大したことじゃないっしょ!」と開き直った。
「さーて、暇になったし、撮り溜めしてたアニメでも見よーっと! どれを見よっかなー? “トッポギの予言”とか“ガラムマサラ殺人事件”とか“刀は裏切らない”とかあるけど、迷っちゃう、な……」
その瞬間、五代は顔が真っ青になった。頭の中は真っ白になり、あまりのショックで白目が血走って真っ赤になる。顎をガクガクと動かし、体がわなわなと震える。
「や……やばい」
五代は机の上に置いていたスマホをつかむと、無数の連絡先から瞬時に朱羅のスマホの電話番号を見つけ、躊躇なくかけた。
「早く……早く出たまえよ朱羅氏ぃ……!」
しかし呼び出し音は虚しく鳴り響くばかりで、朱羅は一向に電話に出なかった。焦熱と炎熱と戦闘中だと分かっていても、電話をかけずにはいられなかった。
「このままじゃ、予言通り陽斗氏が蒼劔氏に殺されちゃうよぉ!」
・
朱羅はビルの屋上で呆然と立ち尽くしていた。目の前で何が起こったのか分からなかった。
彼と戦っていた焦熱と炎熱も、目の前で起きた出来事を信じられない様子で、目を見開いている。
そして、この場にいる者の中で1番衝撃を受けていたのは蒼劔だった。彼の両手から力が抜け、握っていた刀がコンクリートの床へ落下する。刃とコンクリートが衝突し、屋上に硬質な音が響いた。
「陽斗……何故だ……」
これまでどんな状況でも毅然としていた彼が、呆然と視線を落としている。
そこには陽斗が仰向けで倒れていた。虚ろな目で夜空を見上げている。
陽斗は肩から腰にかけて斜めに切られていた。その傷口は青く光り、わずかに粒子を放っていた。
「あ、危なかったぁ……!」
陽斗は両手に林檎飴を持った状態で震えていた。攻撃こそ当たってはいないが、火の玉の温度は間近に感じていた。
少しぬるくなっているが、両手に持っている林檎飴も無事だった。
「これ、どうしよう? 僕が食べるわけにもいかないし……困ったなぁ」
陽斗は屋台の裏から、林檎飴を購入した焦熱と炎熱がいるビルを見上げた。屋上に張られたドーム型の結界は辛うじて見えるが、下からでは屋上にいる彼らの姿は見えず、今の戦況がどうなっているのか分からなかった。
「……あの子達はどうして僕達人間を恨んでるんだろう? 何か嫌なことでもあったのかな?」
陽斗がそう疑問を口にした瞬間、ズボンのポケットに入れていた彼のスマホの着信音が鳴った。
慌てて陽斗は2つの林檎飴を一旦自分のリュックへ仕舞い、ポケットからスマホを手に取った。
『知りたいかい?』
「え?」
声の主は五代だった。どうやら陽斗を監視していたらしい。
「知ってるの?」
『うん。朱羅氏が聞いたら戦えなくなると思って、言わなかったけど』
「……どういうこと?」
五代は陽斗しか聞いていないというのに、声を潜めて答えた。
『焦熱と炎熱は元人間なんだよ。双子だという理由だけで肉親からも忌み嫌われ、儀式の生贄に使われた。死の間際、2人は人間への憎悪を募らせ、鬼となって生まれ変わったのさ』
「そんな……酷い!」
陽斗は愕然とした。あんな可愛い子供を嫌うなんてあり得ない、と思った。
『だから朱羅氏には言えなかったんだよー。言ったら絶対“私は戦えません!”って拒否して、蒼劔氏と揉めるに決まってるもーん』
陽斗はハッと4人がいるビルを見上げた。
屋上の結界はまだ破られてはいないが、決着がつくのは時間の問題だった。
「……僕、ちょっと行ってくる」
『ホワッツ?!』
五代は陽斗が今考えていることを読み取ったのか、声を上擦らせた。
同時に電話の向こうで何かが崩れる音が聞こえる。あまりのことに、動揺して崩してしまったらしい。電話の向こうで『んなー!』と奇声を上げた。
その間に陽斗はスマホ片手に、4人がいるビルへと走り出した。祭り会場になっている大通りを横切り、屋上を目指してビルの非常階段を駆け上がる。
『は、早まるな、陽斗氏! 蒼劔氏から焦熱と炎熱を守るなんて、危険過ぎる! あの2人は君を殺そうとしているんだぞ?! 君が蒼劔氏から2人を庇ったところで、後ろからファイアーされるに決まってる!』
「でも、このまま蒼劔君に消されちゃうなんて納得いかないよ! 確かにあの子達がやったことは許されないかもしれないけど、だからって消されちゃうなんて、おかしい!」
『陽斗氏……』
五代の頭の中には陽斗の気持ちが流れ込んでいた。元は同じ人間だったという親近感、双子というだけで迫害され、生贄にされた不条理への怒りとが混ざり合っている。彼の「2人を助けたい」という意志は確かなものだった。
五代は「陽斗氏ならなんとかなるかも」と、彼を信じることにした。
「そういうわけだから、電話切るね。急がないと間に合わなくなっちゃうかも」
『フッ、仕方ない……行ってくればいいさ。ただし、これだけは約束してくれ。絶対生きて帰、』
ピッ
陽斗は五代の言葉を最後まで聞くことなく通話を止め、スマホをポケットへ突っ込んだ。手ぶらになったことで、階段を上るスピードが上がる。
「焦熱君、炎熱君……無事でいて!」
陽斗は一度も足を止めることなく、8階建てのビルの最上階の屋上へ到達した。
・
陽斗との通話を終え、五代はスマホを机に置いた。アニメのキャラクターをイメージしたミントグリーン色のスマホケースを装着したスマホだった。
五代は椅子の背もたれに寄りかかり、シミだらけの天井を仰ぐ。
「陽斗氏……どうしてチミ達一族は、オイラ達異形に優しいんだい? 恩を仇で返すような、どうしようもない連中ばっかりなのにさ……」
ふと、五代は自分がとんでもないことを忘れている気がした。腕を組み、首を左右に振って心当たりのある事象を思い返す。
「はて、なんだったかな? アニメは全部録画してあるし、アニメライブサマーバケーションもといアラサーは昼間で終わったし、お目当ての漫画とラノベの発売日もまだ先だし、大した仕事の依頼はないし、黒縄氏はアジトから動いてないから大丈夫だし……」
五代は暫く考えていたが「まぁ、忘れるほどのことだし、大したことじゃないっしょ!」と開き直った。
「さーて、暇になったし、撮り溜めしてたアニメでも見よーっと! どれを見よっかなー? “トッポギの予言”とか“ガラムマサラ殺人事件”とか“刀は裏切らない”とかあるけど、迷っちゃう、な……」
その瞬間、五代は顔が真っ青になった。頭の中は真っ白になり、あまりのショックで白目が血走って真っ赤になる。顎をガクガクと動かし、体がわなわなと震える。
「や……やばい」
五代は机の上に置いていたスマホをつかむと、無数の連絡先から瞬時に朱羅のスマホの電話番号を見つけ、躊躇なくかけた。
「早く……早く出たまえよ朱羅氏ぃ……!」
しかし呼び出し音は虚しく鳴り響くばかりで、朱羅は一向に電話に出なかった。焦熱と炎熱と戦闘中だと分かっていても、電話をかけずにはいられなかった。
「このままじゃ、予言通り陽斗氏が蒼劔氏に殺されちゃうよぉ!」
・
朱羅はビルの屋上で呆然と立ち尽くしていた。目の前で何が起こったのか分からなかった。
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