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第49話 許されるはずもなく
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エドワード様は私の手を引いて大広間から出ていこうと大きく足を踏み出す。扉は開かれておりその代わりに両サイドには兵士と側近が立っている状態だ。案の定私達は彼らに動きを止められてしまう。
「どこへ行かれるんですか?」
「体調が悪くてな。宿泊先となる屋敷に戻りたい」
「それは……分かりました。側近を連れていきましょう」
「ありがたいが……。我らだけでよい。気持ちだけ感謝する」
宿泊先は王宮の隣にある広大な屋敷。ここは様々な国々から来た高貴な人々が泊まる場所になっている。側近は怪しむ事無く私達が大広間から出ていくのを許す形になったのだった。
廊下を歩き、なるべく人気が無い場所を選んで歩く。その方が見つかりづらいのは明白だ。
「そろそろなんだが……」
「お待ちなさい」
私達を呼び止めるこの声。ああ、一番会いたくない相手と出会ってしまったようだ。
(うっそでしょ……)
「エドワード様。お待ちになって。私ずっと探してらしたのよ?」
レゼッタはそういうや否やエドワード様の腕に抱き付こうとするも、それを払いのける形で拒否される。
「やめてくれレゼッタ嬢。俺には彼女がいる。では失礼する」
すたすたと早足で歩き始めるエドワード様と私。レゼッタが話が通じない相手なのは十分わかりきっている。なのでなるべく話はしたくない。
だが向こうも諦めてはいなかったようだ。
「エドワード様はそのような卑しいご身分の方とご結婚される気なのです?! そんな女よりも私の方がお似合いじゃないかしら?」
「君は俺よりもこの国の王妃の座の方がよっぽど興味があるんじゃなかったか?」
「確かにそうよ。当たり前じゃない。でも保険と言うのは重要でしょう?」
この期に及んで全く悪びれもしないレゼッタの態度にはもはやすがすがしささえ感じる。だが彼女とは話はしたくないので無視を決め、小声でエドワード様に無視してこのまま屋敷に戻ろうと伝えたのだった。私の意見を聞き入れたのかエドワード様は無言で出入り口へ向かって歩き出す。
「無視しないで! 大体お姉様のご身分が知れ渡ればこの結婚は成り立たないでしょうに!」
「……そんなものは関係ない」
「何? 聞こえなかったわ?! 私との結婚を認めるですって? そのまま無視するようならそういう事とみなすわよ!」
「マルガリータの立場は関係ないと言ったんだ! それに立場が危ういのは君の方ではないか?!」
余りの剣幕に私もレゼッタも驚いてしまった。レゼッタは圧倒されてしまったのかぱくぱくと口を開けたまま言葉を発する事が出来ないでいる。
「君の事はよく知っている。立場が危ういのはマルガリータではなく君だ。聖女レゼッタ」
「な……!」
「聖女でないと知られたら、君の立場は無いぞ。貴族の令嬢としてはとても生きてはいけまい。では」
「ま、待って! どういう事よ?! 私は聖女よ?! 死ぬまで聖女に決まっているじゃない!!」
「もう行きましょう。話すだけ無駄です」
「そうだな……」
なおも濃いピンクのドレスの裾を持ち上げて走って来るレゼッタの追跡を何とか交わし、私達は王宮を後にして宿泊先の屋敷に入った。ここまで来たらレゼッタは来ないだろう。と思っていたが玄関のドアがドンドンと勢いよく鳴らされる。
「来たか……」
門番役の武装した兵士が裏口からやってきて、レゼッタをどうすべきかと問うてきたのでエドワード様は間髪入れずに追い出すようにと伝えた。
「承知しました」
「手荒な真似を使っても構わない。追い出せ」
「ははっ」
その後、程なくしてレゼッタの声は消えた。私達はリビングの広間でふうっと息を吐く。
「もう……大丈夫ですかね?」
「おそらくは、な……」
「どこへ行かれるんですか?」
「体調が悪くてな。宿泊先となる屋敷に戻りたい」
「それは……分かりました。側近を連れていきましょう」
「ありがたいが……。我らだけでよい。気持ちだけ感謝する」
宿泊先は王宮の隣にある広大な屋敷。ここは様々な国々から来た高貴な人々が泊まる場所になっている。側近は怪しむ事無く私達が大広間から出ていくのを許す形になったのだった。
廊下を歩き、なるべく人気が無い場所を選んで歩く。その方が見つかりづらいのは明白だ。
「そろそろなんだが……」
「お待ちなさい」
私達を呼び止めるこの声。ああ、一番会いたくない相手と出会ってしまったようだ。
(うっそでしょ……)
「エドワード様。お待ちになって。私ずっと探してらしたのよ?」
レゼッタはそういうや否やエドワード様の腕に抱き付こうとするも、それを払いのける形で拒否される。
「やめてくれレゼッタ嬢。俺には彼女がいる。では失礼する」
すたすたと早足で歩き始めるエドワード様と私。レゼッタが話が通じない相手なのは十分わかりきっている。なのでなるべく話はしたくない。
だが向こうも諦めてはいなかったようだ。
「エドワード様はそのような卑しいご身分の方とご結婚される気なのです?! そんな女よりも私の方がお似合いじゃないかしら?」
「君は俺よりもこの国の王妃の座の方がよっぽど興味があるんじゃなかったか?」
「確かにそうよ。当たり前じゃない。でも保険と言うのは重要でしょう?」
この期に及んで全く悪びれもしないレゼッタの態度にはもはやすがすがしささえ感じる。だが彼女とは話はしたくないので無視を決め、小声でエドワード様に無視してこのまま屋敷に戻ろうと伝えたのだった。私の意見を聞き入れたのかエドワード様は無言で出入り口へ向かって歩き出す。
「無視しないで! 大体お姉様のご身分が知れ渡ればこの結婚は成り立たないでしょうに!」
「……そんなものは関係ない」
「何? 聞こえなかったわ?! 私との結婚を認めるですって? そのまま無視するようならそういう事とみなすわよ!」
「マルガリータの立場は関係ないと言ったんだ! それに立場が危ういのは君の方ではないか?!」
余りの剣幕に私もレゼッタも驚いてしまった。レゼッタは圧倒されてしまったのかぱくぱくと口を開けたまま言葉を発する事が出来ないでいる。
「君の事はよく知っている。立場が危ういのはマルガリータではなく君だ。聖女レゼッタ」
「な……!」
「聖女でないと知られたら、君の立場は無いぞ。貴族の令嬢としてはとても生きてはいけまい。では」
「ま、待って! どういう事よ?! 私は聖女よ?! 死ぬまで聖女に決まっているじゃない!!」
「もう行きましょう。話すだけ無駄です」
「そうだな……」
なおも濃いピンクのドレスの裾を持ち上げて走って来るレゼッタの追跡を何とか交わし、私達は王宮を後にして宿泊先の屋敷に入った。ここまで来たらレゼッタは来ないだろう。と思っていたが玄関のドアがドンドンと勢いよく鳴らされる。
「来たか……」
門番役の武装した兵士が裏口からやってきて、レゼッタをどうすべきかと問うてきたのでエドワード様は間髪入れずに追い出すようにと伝えた。
「承知しました」
「手荒な真似を使っても構わない。追い出せ」
「ははっ」
その後、程なくしてレゼッタの声は消えた。私達はリビングの広間でふうっと息を吐く。
「もう……大丈夫ですかね?」
「おそらくは、な……」
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