49 / 58
第48話 到着と再会、そして夜会
しおりを挟む
道中馬車が止まったりなどのアクシデントがあり王宮に到着したのは夜だった。エドワード様の手を借りて馬車から降りると目の間にはレゼッタがいた。
(やっぱりいたか)
なるべく目を合わせずに馬車から降りる。そしてエドワード様に守られる形で早足で王宮の建物内に入った。とりあえずレゼッタとは関わりたくないし言葉を交わしたくも無い。それはエドワード様も理解しているようでなるべくレゼッタから私を遠ざけてくれたのだった。
また王族は他の国々からも来ているようで、結構人が多い。私はその事を小声でエドワード様にささやいた。
「エドワード様。かなり人が多いですね……」
「そういえば他の国々の王族達とも視察して回る事になってな。確かに休戦になってからは初めてだな」
「そうだったんですね……ここまで王宮に人が集っているのは初めて見ました」
「俺も初めて見るな……圧倒されそうだ」
「大丈夫ですよ。エドワード様は立派な方ですから」
王の間へと側近によって招かれた私達は国王陛下と王妃様に謁見する。軍服を着た国王陛下に紺色の地味目なドレスを着た王妃様がそれぞれ玉座に座っている。
「此度はお招きありがとうございます」
「エドワード殿下よくぞ来てくれた。良き交流の場にしていただけたらありがたい」
挨拶は短いものだった。他にも挨拶しに来ている人々がたくさんいるので仕方ない。挨拶を終えた後は側近によって大広間の一角へと通された。側近曰くこれから歓迎の夜会がはじまるのだという。バンディ様とルネは別室に通されており姿は見えない。更にエドワード様の表情はどこか暗いものだった。
「いかがなさいましたか?」
「……夜会には出たくは無くてな」
「レゼッタお嬢様の事でしょうか?」
「ああ。それにマルガリータを危険な目に合わせたくない」
(優しいな……)
なら無理に夜会に出る必要は無いだろう。だが、彼は王太子。あちこちの国々の王族方や要人との会話も楽しみ情報を得る必要がある。こういう時はどうするのが正解なのか私には分からない。
「マルガリータはどうしたい?」
「え? 私ですか?」
「ああ、君の意見を参考にしたい」
「私は……エドワード様の事を考えますと無理に夜会に出る必要はないと思います。しかしエドワード様は王太子です。夜会に出て様々な方々との会話をする事も公務として重要な事ではないでしょうか?」
「……マルガリータはそこまで考えてくれていたのか」
「ええ、だって王太子じゃないですか。でも私には考えてもどれが正しいのか分からなかったです。申し訳ありません」
「そうか……なら抜け出してしまおうか」
「え?」
そう言ったエドワード様はいつにも増して楽しそうな笑みを浮かべていたのだった。
(やっぱりいたか)
なるべく目を合わせずに馬車から降りる。そしてエドワード様に守られる形で早足で王宮の建物内に入った。とりあえずレゼッタとは関わりたくないし言葉を交わしたくも無い。それはエドワード様も理解しているようでなるべくレゼッタから私を遠ざけてくれたのだった。
また王族は他の国々からも来ているようで、結構人が多い。私はその事を小声でエドワード様にささやいた。
「エドワード様。かなり人が多いですね……」
「そういえば他の国々の王族達とも視察して回る事になってな。確かに休戦になってからは初めてだな」
「そうだったんですね……ここまで王宮に人が集っているのは初めて見ました」
「俺も初めて見るな……圧倒されそうだ」
「大丈夫ですよ。エドワード様は立派な方ですから」
王の間へと側近によって招かれた私達は国王陛下と王妃様に謁見する。軍服を着た国王陛下に紺色の地味目なドレスを着た王妃様がそれぞれ玉座に座っている。
「此度はお招きありがとうございます」
「エドワード殿下よくぞ来てくれた。良き交流の場にしていただけたらありがたい」
挨拶は短いものだった。他にも挨拶しに来ている人々がたくさんいるので仕方ない。挨拶を終えた後は側近によって大広間の一角へと通された。側近曰くこれから歓迎の夜会がはじまるのだという。バンディ様とルネは別室に通されており姿は見えない。更にエドワード様の表情はどこか暗いものだった。
「いかがなさいましたか?」
「……夜会には出たくは無くてな」
「レゼッタお嬢様の事でしょうか?」
「ああ。それにマルガリータを危険な目に合わせたくない」
(優しいな……)
なら無理に夜会に出る必要は無いだろう。だが、彼は王太子。あちこちの国々の王族方や要人との会話も楽しみ情報を得る必要がある。こういう時はどうするのが正解なのか私には分からない。
「マルガリータはどうしたい?」
「え? 私ですか?」
「ああ、君の意見を参考にしたい」
「私は……エドワード様の事を考えますと無理に夜会に出る必要はないと思います。しかしエドワード様は王太子です。夜会に出て様々な方々との会話をする事も公務として重要な事ではないでしょうか?」
「……マルガリータはそこまで考えてくれていたのか」
「ええ、だって王太子じゃないですか。でも私には考えてもどれが正しいのか分からなかったです。申し訳ありません」
「そうか……なら抜け出してしまおうか」
「え?」
そう言ったエドワード様はいつにも増して楽しそうな笑みを浮かべていたのだった。
300
お気に入りに追加
1,361
あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる