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第23話 侯爵家を出て、隣国へ①
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私達はそのまま王宮からカルナータカ侯爵家へととんぼがえりする事となった。帰りの馬車もエドワード様たっての希望で彼と同じ馬車に乗り込む事が決まった。馬車へ乗り込むべくルネと待っているとそこへレゼッタが現れる。
「ねえ、なんでお姉様とルネがいるのよ?」
あからさまに不機嫌そうな顔つきと声音をしている。そこへエドワード様が私達の前に現れた。
「俺が一緒に来てほしいと呼んだんだ。ダメか?」
「あなたがお呼びになったのですね。そ、それなら……」
ぎくしゃくした笑みを浮かべるレゼッタ。その後彼女は私達とは別の馬車に乗り込んだ。
「マルガリータ、ほら乗って」
「エドワード様」
「マルガリータ、ほら乗りなさいって」
よいしょと御者の手も借りながら馬車に乗り込んだ。馬車の中は私とルネとエドワード様と彼の側近の併せて4名が乗り込む。
「では、動きます」
馬車がゆっくりとごとごとと動き始めた所でエドワード様が話がある。と切り出した。
「ものすごく急な話で申し訳ないが……ルネとマルガリータには我が国の王宮学院で魔法薬を作る研究にあたってほしいと思っている」
研究? エドワード様の国で? いきなりの発言に私は思わず目を丸くする。それはルネも同じだった。
「それに私を治療した魔法薬を作ったのはマルガリータである事も分かっている。だからその知識を我が国としても得たいのだ。協力できないだろうか? 勿論生活は保障する。付け加えると王宮学院の場所上2人には宮廷で住んでもらう事になるが構わないか?」
「えっぜひ!」
「ルネ?!」
ルネがものの見事な即答を見せたので私は一瞬驚いた。
「え、驚く事? マルガリータ」
「い、いやだってすごい速さで即答したから……」
「カルナータカ侯爵家で働くよりも研究の方がいいに決まってる。もうカルナータカ夫人とレゼッタお嬢様にこき使われて折檻を受ける日はこりごりよ」
「……やはり待遇は良くないのだな」
「え、エドワード様。そうです! カルナータカ夫人とレゼッタ様は最悪なんです! それにレゼッタお嬢様は聖女なんかじゃない。だってそもそも魔力ほとんどないし! 本当の聖女はマルガリータなのに……!!」
ルネが決壊したダムのようにカルナータカ夫人とレゼッタの不満をぶちまけ始めた。あまりの剣幕にエドワード様の側近は口を開けてしまっている。それに彼女がここまで怒り狂うのは私も見た事が無いので、彼女には悪いがあっけにとられている。
「はあっ……と、とにかく。私はもうカルナータカ侯爵家には戻りたくありません。後輩達には申し訳ないけどさっさとお屋敷を出て結婚して子供も産んで勉強もして好きな風に暮らしたいです」
「ルネ……あなた」
「マルガリータは?」
「私は……もちろんあなたと同意見だわ。魔法薬の研究がしたい。聖女として何かできれば……」
「決まりだな。では君達を研究者として我が国へ招待しよう」
「……はい!」
その後。エドワード様は馬車の中で国王陛下と王妃様、レゼッタとの話の内容を教えてくれた。
簡潔に言うと王妃様はレゼッタとエドワード様との結婚を望んでいたそうだ。だがレゼッタはあくまでエドワード様はキープという事で本命は王妃の座という部分は変わらなかった。レゼッタはエドワード様を自分がお救いしたと何度も繰り返し国王陛下にアピールしていたと言う。
「彼女は俺よりもこの国の王妃という座の方が興味あるらしいな。うちの国はこの国よりも規模が小さい上に俺は王太子。ここで言うのもなんだが見下されている気さえ感じた」
「そうだったんですか……」
「ああ、マルガリータ。その通りだ」
(レゼッタお嬢様の性格を考えたらだろうな。というか……)
カルナータカ侯爵家の屋敷の目の前で馬車が停止する。そしてエドワード様が一番真っ先に馬車から降りた。
それはまるでレゼッタの動きをけん制しているようにも見えたのだった。
「エドワードだ。中に入れてほしい。夫人と侯爵はいるか?」
門の近くにいたメイドにそう告げ、玄関の扉を開けてもらったエドワード様にぴたりとくっつくような形で私達も馬車を降りて屋敷に入る。
「マルガリータとルネ! あなた達も行ってたの?」
彼女にそう言われ頷いた時、レゼッタを乗せた馬車が玄関前で停止した音が聞こえた。どきりと胸の奥が針で刺されたかのように痛む。
その間にもエドワード様は早足で廊下を移動し、広間で安楽椅子に座り紅茶を飲みくつろいでいたカルナータカ夫人の前に現れた。いきなり彼が目の前に現れた事で慌てて立ち上がり紅茶をこぼしそうになった彼女をルネは笑いをこらえながら見ていた。
「え、エドワード様?!」
「侯爵はいるか?」
「ああ、あの人なら書斎に……」
「呼んできてほしい。あなたとレゼッタ嬢と侯爵に話したい事がある」
「は、はい……」
カルナータカ夫人は走ってその場を後にした。入れ替わるような形でレゼッタが広間へと姿を現す。
「エドワード様? いかがなさいました?」
「あなたとそのお母様、そしてお父様に話がある」
「……えっ。それってもしかして……」
レゼッタが急に頬を赤らめ、両手で頬を押さえながらうっとりと笑い始めた。そして私を見た後はぐにゃりと悪人めいた笑みを見せる。大方自分がエドワード様から求婚を受けると思っているのだろう。本当は違うのに……。
「お待たせしました!」
カルナータカ夫人に右手を引かれながら父親であるカルナータカ侯爵が姿を現す。
「あ、エドワード様! いかがなされましたか?」
「侯爵、急に来てもらってすまない。話したい事があってだな」
「そうですか……話とは?」
「まずは単刀直入に言おう。マルガリータとルネを魔法薬の研究者として我が国へ招聘したい」
彼の凛とした決意に満ち溢れた声が広間中に響き渡った。
「ねえ、なんでお姉様とルネがいるのよ?」
あからさまに不機嫌そうな顔つきと声音をしている。そこへエドワード様が私達の前に現れた。
「俺が一緒に来てほしいと呼んだんだ。ダメか?」
「あなたがお呼びになったのですね。そ、それなら……」
ぎくしゃくした笑みを浮かべるレゼッタ。その後彼女は私達とは別の馬車に乗り込んだ。
「マルガリータ、ほら乗って」
「エドワード様」
「マルガリータ、ほら乗りなさいって」
よいしょと御者の手も借りながら馬車に乗り込んだ。馬車の中は私とルネとエドワード様と彼の側近の併せて4名が乗り込む。
「では、動きます」
馬車がゆっくりとごとごとと動き始めた所でエドワード様が話がある。と切り出した。
「ものすごく急な話で申し訳ないが……ルネとマルガリータには我が国の王宮学院で魔法薬を作る研究にあたってほしいと思っている」
研究? エドワード様の国で? いきなりの発言に私は思わず目を丸くする。それはルネも同じだった。
「それに私を治療した魔法薬を作ったのはマルガリータである事も分かっている。だからその知識を我が国としても得たいのだ。協力できないだろうか? 勿論生活は保障する。付け加えると王宮学院の場所上2人には宮廷で住んでもらう事になるが構わないか?」
「えっぜひ!」
「ルネ?!」
ルネがものの見事な即答を見せたので私は一瞬驚いた。
「え、驚く事? マルガリータ」
「い、いやだってすごい速さで即答したから……」
「カルナータカ侯爵家で働くよりも研究の方がいいに決まってる。もうカルナータカ夫人とレゼッタお嬢様にこき使われて折檻を受ける日はこりごりよ」
「……やはり待遇は良くないのだな」
「え、エドワード様。そうです! カルナータカ夫人とレゼッタ様は最悪なんです! それにレゼッタお嬢様は聖女なんかじゃない。だってそもそも魔力ほとんどないし! 本当の聖女はマルガリータなのに……!!」
ルネが決壊したダムのようにカルナータカ夫人とレゼッタの不満をぶちまけ始めた。あまりの剣幕にエドワード様の側近は口を開けてしまっている。それに彼女がここまで怒り狂うのは私も見た事が無いので、彼女には悪いがあっけにとられている。
「はあっ……と、とにかく。私はもうカルナータカ侯爵家には戻りたくありません。後輩達には申し訳ないけどさっさとお屋敷を出て結婚して子供も産んで勉強もして好きな風に暮らしたいです」
「ルネ……あなた」
「マルガリータは?」
「私は……もちろんあなたと同意見だわ。魔法薬の研究がしたい。聖女として何かできれば……」
「決まりだな。では君達を研究者として我が国へ招待しよう」
「……はい!」
その後。エドワード様は馬車の中で国王陛下と王妃様、レゼッタとの話の内容を教えてくれた。
簡潔に言うと王妃様はレゼッタとエドワード様との結婚を望んでいたそうだ。だがレゼッタはあくまでエドワード様はキープという事で本命は王妃の座という部分は変わらなかった。レゼッタはエドワード様を自分がお救いしたと何度も繰り返し国王陛下にアピールしていたと言う。
「彼女は俺よりもこの国の王妃という座の方が興味あるらしいな。うちの国はこの国よりも規模が小さい上に俺は王太子。ここで言うのもなんだが見下されている気さえ感じた」
「そうだったんですか……」
「ああ、マルガリータ。その通りだ」
(レゼッタお嬢様の性格を考えたらだろうな。というか……)
カルナータカ侯爵家の屋敷の目の前で馬車が停止する。そしてエドワード様が一番真っ先に馬車から降りた。
それはまるでレゼッタの動きをけん制しているようにも見えたのだった。
「エドワードだ。中に入れてほしい。夫人と侯爵はいるか?」
門の近くにいたメイドにそう告げ、玄関の扉を開けてもらったエドワード様にぴたりとくっつくような形で私達も馬車を降りて屋敷に入る。
「マルガリータとルネ! あなた達も行ってたの?」
彼女にそう言われ頷いた時、レゼッタを乗せた馬車が玄関前で停止した音が聞こえた。どきりと胸の奥が針で刺されたかのように痛む。
その間にもエドワード様は早足で廊下を移動し、広間で安楽椅子に座り紅茶を飲みくつろいでいたカルナータカ夫人の前に現れた。いきなり彼が目の前に現れた事で慌てて立ち上がり紅茶をこぼしそうになった彼女をルネは笑いをこらえながら見ていた。
「え、エドワード様?!」
「侯爵はいるか?」
「ああ、あの人なら書斎に……」
「呼んできてほしい。あなたとレゼッタ嬢と侯爵に話したい事がある」
「は、はい……」
カルナータカ夫人は走ってその場を後にした。入れ替わるような形でレゼッタが広間へと姿を現す。
「エドワード様? いかがなさいました?」
「あなたとそのお母様、そしてお父様に話がある」
「……えっ。それってもしかして……」
レゼッタが急に頬を赤らめ、両手で頬を押さえながらうっとりと笑い始めた。そして私を見た後はぐにゃりと悪人めいた笑みを見せる。大方自分がエドワード様から求婚を受けると思っているのだろう。本当は違うのに……。
「お待たせしました!」
カルナータカ夫人に右手を引かれながら父親であるカルナータカ侯爵が姿を現す。
「あ、エドワード様! いかがなされましたか?」
「侯爵、急に来てもらってすまない。話したい事があってだな」
「そうですか……話とは?」
「まずは単刀直入に言おう。マルガリータとルネを魔法薬の研究者として我が国へ招聘したい」
彼の凛とした決意に満ち溢れた声が広間中に響き渡った。
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