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第6話 エドワード王太子

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 その顔を近くで見たレゼッタは私にどうにかしろと耳打ちして来た。

「お姉様。私はもうこんな汚い場所いたくないわよ。どうにかしなさいよ」
「わかりました。では代わりに私達が引き続き業務にあたると言ってきます」
「ええ、そうしなさい。お姉様には屋敷よりもこの汚い野戦病院の方がお似合いかもね?」

 レゼッタはそう言い残し早足で屋外に出ると離宮を後にしようと馬車に乗り込む。すると衛生兵がレゼッタの元に汗を垂らしながら駆け寄って来た。

「聖女様! エドワード様が……!」

 エドワード。もしかして隣国のエドワード様だろうか。衛生兵の奥にはひどいやけど跡を負った男性が担架に乗せられ運ばれて行くのが見える。

「はあ。私はもう時間が無いの。お姉様、後はよろしく。まあ助からないでしょうけどね?」
「……っ。お嬢様、かしこまりました……」

 レゼッタはそのまま馬車で屋敷へと戻って行った。私は衛生兵に付いていく。
 衛生兵から話を聞くとエドワード様はやはり隣国のあのエドワード様だった。どうやら最近王太子に即位したばかりらしい。確かにあのさらさらした金髪は変わっていない。それにぱっと見彼はがっしりとした身体つきに長身の部類に見える。
 エドワード様は建物の奥の個室へと運ばれた。息はうっすらあるものの意識は無く、全身のほとんどに重度のやけどを負っている。レゼッタが言ったようにこれはもう助からないのでは……と呟く衛生兵もいた。
 だが、私は聖女だ……。まだ死んでいないならチャンスはある。

「皆さんどいてください。私が診ます」
「あなたは……聖女のメイドか」
「はい。聖女の魔法薬がここにあります。それに私は薬師の資格もありますので」

 正確には私が作った魔法薬なのだが。やけど用の魔法薬をポケットから取り出しエドワード様の服を衛生兵に脱がしてもらうと全身にくまなく魔法薬を塗る。するとやけど跡はゆっくりと消えて行ったが、まだいくつか残っている。

(魔法薬だけでは駄目か。治癒魔法を使わないと……)

 両手を組み、祈るようにして治癒魔法を使う。私の周囲が青白く光だし、その光がエドワード様の身体全体をふわふわと覆う。

「おおっ……!」
「すごい、みるみる治っていく……!」

 やけど跡は全て治り、美しいつやつやした肌となる。だがエドワード様はまだ意識を失ったままだ。

(何か、術でもかかった?)
「あの、どういう経緯でエドワード様がお怪我をされたか分かりますか?」

 一緒に部屋に入った彼の側近に話を聞くと、大砲及び魔法による攻撃をまともに食らったという事を知る。

「衝撃がまだ残っているのかもしれません……」
「なるほど」

 衝撃が残っているとなると、彼が目覚めるまで待つより他はない。ただ息はしているので安心は出来る。
 私はエドワード様を側近と衛生兵に任せ、建物に残ったメイド達と共に負傷兵を手当したのだった。
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