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第72話 これってヴェロキラプトルじゃない?
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シェフが色とりどりの野菜があしらわれた前菜の乗った白いお皿をテーブルの上に置いた。
「どうぞごゆっくり……」
シェフが一度退出していき、前菜を銀のフォークで食べ進めていると、アルグレートが何かを思いついたようだ。
「子供が生まれたら、また新婚旅行のやり直しでもしようか」
「新婚旅行のやり直し……かあ……いいの? アルグレートって忙しいでしょ?」
「そんなの君の為ならどうとでもなる。それと医者がよければ来週にでも行きたい気分だ」
きらきらと目を輝かせている彼を見て、私も行きたいと欲を口にした。まあ、まずは医者の判断待ちだ。
それに旅行に行けなくても屋敷の外でピクニック位なら大丈夫だと……信じたい。
「メインディッシュでございます」
しばらくして運ばれてきたメインディッシュは牛肉のステーキだった。ステーキとは言いつつも上には茶色いソースが結構ガッツリかかっていて、私の脳内にあったステーキとはちょっと見た目が違う。
「む……オイシイ」
ステーキソースには酸味とコクがしっかり含まれているのが舌で知覚できた。私が思うにコンソメやバルサミコ酢が使われていそう。それに肉自体はとても柔らかくて、噛み切れやすい。
「ん~美味しい! 柔らかくて飽きない味わいだね……!」
「オトネ的には牛肉が一番好きなのか?」
「え? うん、基本は牛肉豚肉鳥肉どれも好きだけど」
「ふむふむ……今更ながらそれに気が付くとは俺とした事が……メイド達よ、しっかりと記録するように」
近くで控えていたメイドがはっと答えながら持ち運びができる筆記用具で左手の甲になにやらさらさらとメモし始めた。
「アルグレートはどんなお肉が好きなの?」
「ふむ……一番おいしいと感じるのは……竜肉だな」
「ん?」
竜肉?! いやそんなのあるの?! ていうかアルグレート達は竜人だけどその、竜人が竜肉なるものを食べちゃっていいのだろうか? という疑問とどうせゲテモノなんだろうなという不安感が同時に襲い掛かって来る。
「ど、どんなの?」
「見せて見よ」
「はっかしこまりました」
しばらくしてメイドとシェフがシルバートレイに乗ったお肉を持って私へと見せてきた。ぱっと見は赤身肉っぽく見えるけど……色合いが鯨肉みたいに濃い。それにちょっと歯ごたえは硬そうな雰囲気がする。
「これが竜肉?」
「そうだ。ちなみに生きている時の姿がこんな感じだな」
メイドが額縁に飾られたタブレットくらいの大きさの絵を私に手渡す。そこに記されていたのは全身に寒色系で統一されたカラフルな羽毛と頭部に黒くてユニコーンのような小さな角が生えたヴェロキラプトルみたいな動物だった。
いやこれ角以外はどう見てもヴェロキラプトルしか見えない。映画に出てきたヴェロキラプトルも色合いは地味だけど羽毛はちゃんと生えてたもん。
「えっこれヴェロキラプトル?」
「む。なんだそれは?」
う~ん、そう言われても私は恐竜の専門家じゃないからどうやって説明すべきなのか。
「ああ……なんていうか、私がいた世界にかつていた生物の名前だね。恐竜っていう種族のひとつで、私が異世界転移してくる大体8000万年前くらい? にいた生き物らしい。私もよくわかんないけど」
「へえ……という事は君がいた世界ではもうとっくに絶滅しているという訳か」
そう言う事になるね。と返すとアルグレートは明日このステーキを食べてみるか? と誘ってきた。
「これ、普通にステーキにしたら美味しいの?」
「ああ! 一見硬そうに見えるが火を通すと肉の中にある成分が壊れて柔らかくなるんだ」
そんな仕掛けがあったなんて。やっぱり見た目だけで判断しちゃいけないな。
「うん、明日その竜肉食べてみる。でもアルグレート達竜人が竜肉を食べたらその……共食いにならない?」
「ならないな。俺達は亜人で彼らは竜の一種だし、種族が違う」
言われてみたらそうだけどどっちも竜の要素が入ってるからどうしても共食いチックには見えてしまうんだよなあ……。でもここはアルグレートの意見に賛成するしかない。
「よし、明日のディナーは竜肉をふんだんに使ったものを用意しろ。よろしく頼むぞ」
「はっ。アルグレート様かしこまりましてございます!」
彼からの指示を受けたシェフ達が元気よく返事を見せた。威勢が良すぎてちょっぴりびびったのは内緒にしておこう。
◇ ◇ ◇
あれから医者と相談した所、ウォーキングなどの軽めの運動はよくても旅行などは何かが起きた時の対処を考えて、やめたほうが良いのではないかという見解が伝えられた。
アルグレートはがっかりしていたけど、こればかりは仕方がない。なので私は生まれてからの楽しみにしよう。と声をかけた所、彼はすぐさま切り替えてくれている。
そして今たべている竜肉のステーキは、思ったよりも柔らかく、それでいて脂身が多めな味わいをしている気がした。
「美味しいね。クセもないしこれは食べやすい」
「オトネが気に入ってくれたなら何よりだ。これを食べて精をつけてほしい」
彼の思いやりが伝わってくる。まずは健康に日々を過ごす事が出来ますように。
「どうぞごゆっくり……」
シェフが一度退出していき、前菜を銀のフォークで食べ進めていると、アルグレートが何かを思いついたようだ。
「子供が生まれたら、また新婚旅行のやり直しでもしようか」
「新婚旅行のやり直し……かあ……いいの? アルグレートって忙しいでしょ?」
「そんなの君の為ならどうとでもなる。それと医者がよければ来週にでも行きたい気分だ」
きらきらと目を輝かせている彼を見て、私も行きたいと欲を口にした。まあ、まずは医者の判断待ちだ。
それに旅行に行けなくても屋敷の外でピクニック位なら大丈夫だと……信じたい。
「メインディッシュでございます」
しばらくして運ばれてきたメインディッシュは牛肉のステーキだった。ステーキとは言いつつも上には茶色いソースが結構ガッツリかかっていて、私の脳内にあったステーキとはちょっと見た目が違う。
「む……オイシイ」
ステーキソースには酸味とコクがしっかり含まれているのが舌で知覚できた。私が思うにコンソメやバルサミコ酢が使われていそう。それに肉自体はとても柔らかくて、噛み切れやすい。
「ん~美味しい! 柔らかくて飽きない味わいだね……!」
「オトネ的には牛肉が一番好きなのか?」
「え? うん、基本は牛肉豚肉鳥肉どれも好きだけど」
「ふむふむ……今更ながらそれに気が付くとは俺とした事が……メイド達よ、しっかりと記録するように」
近くで控えていたメイドがはっと答えながら持ち運びができる筆記用具で左手の甲になにやらさらさらとメモし始めた。
「アルグレートはどんなお肉が好きなの?」
「ふむ……一番おいしいと感じるのは……竜肉だな」
「ん?」
竜肉?! いやそんなのあるの?! ていうかアルグレート達は竜人だけどその、竜人が竜肉なるものを食べちゃっていいのだろうか? という疑問とどうせゲテモノなんだろうなという不安感が同時に襲い掛かって来る。
「ど、どんなの?」
「見せて見よ」
「はっかしこまりました」
しばらくしてメイドとシェフがシルバートレイに乗ったお肉を持って私へと見せてきた。ぱっと見は赤身肉っぽく見えるけど……色合いが鯨肉みたいに濃い。それにちょっと歯ごたえは硬そうな雰囲気がする。
「これが竜肉?」
「そうだ。ちなみに生きている時の姿がこんな感じだな」
メイドが額縁に飾られたタブレットくらいの大きさの絵を私に手渡す。そこに記されていたのは全身に寒色系で統一されたカラフルな羽毛と頭部に黒くてユニコーンのような小さな角が生えたヴェロキラプトルみたいな動物だった。
いやこれ角以外はどう見てもヴェロキラプトルしか見えない。映画に出てきたヴェロキラプトルも色合いは地味だけど羽毛はちゃんと生えてたもん。
「えっこれヴェロキラプトル?」
「む。なんだそれは?」
う~ん、そう言われても私は恐竜の専門家じゃないからどうやって説明すべきなのか。
「ああ……なんていうか、私がいた世界にかつていた生物の名前だね。恐竜っていう種族のひとつで、私が異世界転移してくる大体8000万年前くらい? にいた生き物らしい。私もよくわかんないけど」
「へえ……という事は君がいた世界ではもうとっくに絶滅しているという訳か」
そう言う事になるね。と返すとアルグレートは明日このステーキを食べてみるか? と誘ってきた。
「これ、普通にステーキにしたら美味しいの?」
「ああ! 一見硬そうに見えるが火を通すと肉の中にある成分が壊れて柔らかくなるんだ」
そんな仕掛けがあったなんて。やっぱり見た目だけで判断しちゃいけないな。
「うん、明日その竜肉食べてみる。でもアルグレート達竜人が竜肉を食べたらその……共食いにならない?」
「ならないな。俺達は亜人で彼らは竜の一種だし、種族が違う」
言われてみたらそうだけどどっちも竜の要素が入ってるからどうしても共食いチックには見えてしまうんだよなあ……。でもここはアルグレートの意見に賛成するしかない。
「よし、明日のディナーは竜肉をふんだんに使ったものを用意しろ。よろしく頼むぞ」
「はっ。アルグレート様かしこまりましてございます!」
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そして今たべている竜肉のステーキは、思ったよりも柔らかく、それでいて脂身が多めな味わいをしている気がした。
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