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第3話 幼馴染がいるみたいなんだけど
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マリア? 女の子だよね多分……。一体誰なんだろう? アルグレートの姉妹か母親?
バッグの中身が全部無事なのを確認すると、メイドさん達の声に聞き耳を立てる。
「マリア様……御心を傷めないといいけど」
「仕方ないですよ。マリア様だっていつかはああなるのだから」
「オトネ様は子供を産むまでの契約ですし、それまでの我慢です」
うん。あれだな。アルグレートには本命がいるな。
「ちょっとその話、詳しく聞かせてください!」
コソコソ話を見逃す性分は、あいにく私には持ち合わせていない。
一糸まとわぬ姿のまま、ドアを思いっきり開けてメイドさんを呼んだせいか、彼女達は思いっきり肩を震わせて驚いていた。
「オ、オトネ様!?」
「そのマリアって人の話、詳しく知りたいです!」
「はっ、わ、わかりました……!」
「お身体が冷えては風邪をひかれますので、どうぞ湯船にお戻りくださいませ……!」
これ以上浸かりたい気分でもないので、私はまず脱衣所で身体を拭いてからメイドさん達にドレスを着させてもらいつつ、話を聞く事にする。
ドレスは紅い長袖タイプ。白いフリルと細やかなレースがふんだんに使われているものだ。私とは全然雰囲気が違うけど、この世界に来た以上、郷に入っては郷に従え、だよね。
「まず、マリア様は五大公爵家のひとつ、オフスキー家のご令嬢でございます」
「という事は竜人の方ですか?」
「さようでございます。赤い瞳に赤い髪を持つお方で、とてもお美しいと帝国内でも評判の人物であらせられます」
へえ……美人、か。それに赤い瞳に赤い髪。そこはやっぱり異世界って感じだなあ。
「マリア様はアルグレート様とは幼馴染の関係でございます。ですから、アルグレート様の事をとてもお慕いしていらっしゃるのです。アルグレート様もマリア様をお慕いしていらっしゃいます」
その言葉に私の胸がずきんと痛んだ。そっか、私は最初から入り込む余地がないんだ。子をなす為の道具でしかない。その事に私は更にショックを受ける。
「マリア様もアルグレート様も同じ竜人同士。子はなせません」
「ですから番にはなれないですし、いつかはマリア様もアルグレート様がなさったように、番となる人間を探す必要があるのです」
実らぬ恋って事のように語るメイド。確かにそうかもしれないけど……。それでも心の中のもやもやは消えてなくならない。
愛情を向ける女の子がいるなら、結婚するならその子で良かったでしょ。子供は出来ないけど、その方が、私も召喚されずに済んだかもしれない。番なんて探さなくてもよかったじゃん。
「他に女がいるなら、最初からその子と結婚すればよかったのに。子供なんていります?」
「オトネ様……お気持ちは分かりますが……竜人同士では子はなせません。それにアルグレート様にはお世継ぎがいらっしゃらず、ご両親も既に他界されておりますので……」
「もちろんわかってます。けど……」
「オトネ様のお気持ちは痛みいります。あなたが子を産むまでの関係です。子を産めば全てきれいさっぱり魔法で忘れてしまえばいいだけの事です」
魔法できれいさっぱり忘れてしまえば、この世界の事すべてを忘れられる……。
「すみません、愚痴ってしまって」
なぜか素直に謝罪の言葉が出てきた。メイドの人達はいいえ滅相もありません! と言ってくれるけどそれでも納得できない部分は残ったままだ。
「最後に、オトネ様。この話はここだけの話でお願いします」
「わかりました、約束します」
多分打ち明けたら殺されるだろうな、という根拠のない予感がしたので、ここは黙っておこう。
ドレスへの着替えが終わるとお化粧とヘアセットをしてくれた。といっても髪はベリショなので真っすぐに整えた後、ドレスの色と同じ赤いコサージュ付きカチューシャを付けただけではあるが、それでも大きく変わったなと鏡を見て感じたのである。
「すごく似合っておりますよ!」
メイドの人達からの誉め言葉にへへへ……と作り笑いを浮かべるのがやっとだった。
バッグの中身が全部無事なのを確認すると、メイドさん達の声に聞き耳を立てる。
「マリア様……御心を傷めないといいけど」
「仕方ないですよ。マリア様だっていつかはああなるのだから」
「オトネ様は子供を産むまでの契約ですし、それまでの我慢です」
うん。あれだな。アルグレートには本命がいるな。
「ちょっとその話、詳しく聞かせてください!」
コソコソ話を見逃す性分は、あいにく私には持ち合わせていない。
一糸まとわぬ姿のまま、ドアを思いっきり開けてメイドさんを呼んだせいか、彼女達は思いっきり肩を震わせて驚いていた。
「オ、オトネ様!?」
「そのマリアって人の話、詳しく知りたいです!」
「はっ、わ、わかりました……!」
「お身体が冷えては風邪をひかれますので、どうぞ湯船にお戻りくださいませ……!」
これ以上浸かりたい気分でもないので、私はまず脱衣所で身体を拭いてからメイドさん達にドレスを着させてもらいつつ、話を聞く事にする。
ドレスは紅い長袖タイプ。白いフリルと細やかなレースがふんだんに使われているものだ。私とは全然雰囲気が違うけど、この世界に来た以上、郷に入っては郷に従え、だよね。
「まず、マリア様は五大公爵家のひとつ、オフスキー家のご令嬢でございます」
「という事は竜人の方ですか?」
「さようでございます。赤い瞳に赤い髪を持つお方で、とてもお美しいと帝国内でも評判の人物であらせられます」
へえ……美人、か。それに赤い瞳に赤い髪。そこはやっぱり異世界って感じだなあ。
「マリア様はアルグレート様とは幼馴染の関係でございます。ですから、アルグレート様の事をとてもお慕いしていらっしゃるのです。アルグレート様もマリア様をお慕いしていらっしゃいます」
その言葉に私の胸がずきんと痛んだ。そっか、私は最初から入り込む余地がないんだ。子をなす為の道具でしかない。その事に私は更にショックを受ける。
「マリア様もアルグレート様も同じ竜人同士。子はなせません」
「ですから番にはなれないですし、いつかはマリア様もアルグレート様がなさったように、番となる人間を探す必要があるのです」
実らぬ恋って事のように語るメイド。確かにそうかもしれないけど……。それでも心の中のもやもやは消えてなくならない。
愛情を向ける女の子がいるなら、結婚するならその子で良かったでしょ。子供は出来ないけど、その方が、私も召喚されずに済んだかもしれない。番なんて探さなくてもよかったじゃん。
「他に女がいるなら、最初からその子と結婚すればよかったのに。子供なんていります?」
「オトネ様……お気持ちは分かりますが……竜人同士では子はなせません。それにアルグレート様にはお世継ぎがいらっしゃらず、ご両親も既に他界されておりますので……」
「もちろんわかってます。けど……」
「オトネ様のお気持ちは痛みいります。あなたが子を産むまでの関係です。子を産めば全てきれいさっぱり魔法で忘れてしまえばいいだけの事です」
魔法できれいさっぱり忘れてしまえば、この世界の事すべてを忘れられる……。
「すみません、愚痴ってしまって」
なぜか素直に謝罪の言葉が出てきた。メイドの人達はいいえ滅相もありません! と言ってくれるけどそれでも納得できない部分は残ったままだ。
「最後に、オトネ様。この話はここだけの話でお願いします」
「わかりました、約束します」
多分打ち明けたら殺されるだろうな、という根拠のない予感がしたので、ここは黙っておこう。
ドレスへの着替えが終わるとお化粧とヘアセットをしてくれた。といっても髪はベリショなので真っすぐに整えた後、ドレスの色と同じ赤いコサージュ付きカチューシャを付けただけではあるが、それでも大きく変わったなと鏡を見て感じたのである。
「すごく似合っておりますよ!」
メイドの人達からの誉め言葉にへへへ……と作り笑いを浮かべるのがやっとだった。
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