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ロイナ国side

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 マリーナ達がロイナ国の宮廷を脱出してからしばらくしてイリアスはある部屋のベッドで目を覚ました。

「ここは……?」
「王太子殿下の目が覚めました」

 イリアスのそばで医師と薬師がわっと声を挙げた。イリアスは天井に目を向け、ゆっくりとベッドから起き上がる。彼の視界に入るのは女性向けと思わしき調度品が置かれた部屋だ。内装もどちらかというとクラシカルで可愛らしい女性向け。男であるイリアスとはずいぶん趣味が異なるような部屋だ。

「この部屋は?」
「ここは王太子妃殿下の部屋です。イリアス様の部屋より近かったのでこちらに運んだ次第です」
「……ソヴィは?」
「おや、私は今日一度もお会いしていませんが。皆は?」
「私も見てないですね」
「ソヴィ様ってどんな方でしたっけ」
「ほら、ちょっと気の強そうな見た目の……」

 医師と薬師はソヴィの事をあまり知らないと言った様子をイリアスに見せた。その後、イリアスはメイドを呼びソヴィがどこに行ったのかと問うも返答は得られなかった。

「すみません……」
「まあいい」

 イリアスは再びベッドに横になった。そしてそのまま医師や薬師らが見守る中寝息を立て、静かに眠ったのだった。
 その間。イリアスの意識は夢の中に潜り込んでいた。夢の世界にはなぜかソヴィがいる。ソヴィは1人トランクを持って草原を歩いている。イリアスが試しにソヴィの名を呼ぶが、彼女は反応を示さない。

(なぜだ……?)
 
 そして草原の間から見知らぬ男が現れ、ソヴィの手を引くとソヴィは抵抗する様子もなくただ、彼に手を引かれそのまま草原を歩いていく。イリアスが何度呼ぼうとも、振り返る事も反応する事も無かった。
 イリアスにはこの時、ソヴィへ向けた寂しさと嫉妬の感情が芽を出していた。2つの感情を知覚した所で、イリアスの目は見開かれる。

「……っ!」

 こうしてイリアスの意識は夢の世界から現実の世界へと戻る。イリアスはベッドから起き上がると、医師と薬師と共にいたメイドに魔術用の水晶玉を持ってくるように命じた。

「水晶玉を」
「はい、お持ちします」

 しばらくしてメイドが水晶玉を大事そうに両手で抱えた状態でイリアスの元へと持ってきた。イリアスは水晶玉をメイドから受け取ると、イリアスはそこに念を籠める。

「……やはり、宮廷から出たのか」

 水晶玉に映し出されたのは、ソヴィが馬車に乗り移動している姿だった。時折御者である若い男と歓談しながら馬車での旅を楽しんでいるようにイリアスからは見えたのだった。

(……そうか)
「……離縁の証明書を持ってこい。そしてソヴィを探させよ」
「かしこまりました」

 メイドと医師、薬師は部屋から退出していった。
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