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第65話
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「かつての聖女がしたように、戦争でこちらをわからせたい気?」
ここでクララ様が口を開いた。彼女の言葉が部屋全体にこだまして聞こえる。
「ああ、そうだ。それの何が悪い?」
イリアス様はクララ様の言葉全てを余裕たっぷりに肯定する。そうか、聖女がしてきた事をやり返しているのか。
だが、それで何か得られる事があるのだろうか。という疑問が浮かぶ。
(不毛じゃないか)
「イリアス様。それでは何もなりません」
「なぜそう思う」
「繰り返しになってしまうからです。イリアス様がそうしてザパルディ国を攻め、負けたとしましょう。そうすればイリアス様と同じような気持ちを持つ人物がザパルディ国に現れるかもしれません。そうなったら、戦争を未来永劫繰り返す事になります」
「……」
イリアス様が私の言いたい事を理解してくれたのか、口を結び考え込むようにして黙る。
「戦争が繰り返せば民は疲弊する一方では無いですか?」
「……っ。だが貴様らは魔法弾を開発していたではないか」
「存じていたのですね。ですがここで戦争が終われば魔法弾を使う機会は減ります」
私の言葉を受けてクリス様が何度も頷きながら、マリーナの言う通りだとイリアス様にしっかり聞こえるようにして呟いた。
「ああ、そうだ。イリアス様。考えてくれないか。それにあなたには王太子妃がいる。戦争が長引けばあの我儘な王太子妃にも危険が及んでしまうが、良いのか? 大切な人を失うのが戦争の悪い部分なんだ!」
「……っ!」
クリス様の必死の叫びにイリアス様が目を見開き、苦しそうに呻き声を上げた。彼の中にある天秤が今こちらの言い分の方へと傾いているのかもしれない。
ここでもう何度か押せば完全にこちら側へと傾くかもしれないと考えた時だった。
「わああああああ!」
イリアス様が喚きながら両手を天井に掲げた。すると一瞬で彼の周囲を黒い靄が覆うと、その靄はとぐろを巻くようにして天井へと駆け上がりながら竜の形に姿を変えた。
「伏せて!」
クリス様の合図で私達はすぐにその場に伏せた。クリス様が更に私を抱きかかえるようにして上から防御の姿勢を見せた。天井から竜が口を開けて私達を飲み込もうとするのを、私達全員がシールドを張って防ぐ。
「ぐっ……」
竜の牙がシールドに食い込みバチバチと音を立てる。更にシールドには竜の牙を中心にあちこちヒビが入り始めた。これではシールドが破られてしまう。
「もう一度!」
私は今張っているシールドの内側に更に新たにシールドを張る。更にジュリーが杖を掲げてシールドを張った。
何重にも張らないと安心できない。
「これで……!」
「あっあの竜、どうやって攻略すればいいんですか? お師匠様……!」
「イリアス様をどうにかしないと……!」
「……どうにかしたらいいんですね?」
クリス様が何かを思いついたかのように、クララ様に問いかけた。何か良い案でも思いついたのだろうか。
「俺がイリアス様を止めてきます」
「でもクリス、どうやって」
「クリス様、私も共に行きます」
クリス様が単身でイリアス様の元に近づけばそちらに竜の攻撃が向くだろう。なら、私がおとりかシールドを張る役に徹すれば、或いは……。
「マリーナ。じゃあシールドを張ってくれないか? 一緒に飛び込もう」
「はっはい!」
「分かったわ。シールドはこちらで張る!」
竜の牙がより深くシールドに食い込み、ヒビが増す。そしてシールドが割れる瞬間、私とクリス様はイリアス様へ向かって飛び込むようにして距離を詰めた。
「はあああああ!!」
「っ!!!」
そのままクリス様は剣の鞘でイリアス様を殴り、意識を失わせた。イリアス様が倒れると、竜もそのまま消えたのだった。
「……今の内に帰ろう!」
私はクリス様に手を引かれ、皆と共にその場から目一杯足を動かし走り去る。幸い宮廷を出るまで人に会う事は無かった。勿論、ソヴィにもだ。
宮廷の近くに止まっていた馬車に乗り込み、馬に魔法薬をかけて国境まで猛スピードで移動した後は攻撃を避けながらザパルディ国の兵と無事合流する事が出来たのだった。
「はあ……戻って来れた……! マリーナ、戻って来たぞ!」
「良かった……良かったです!」
クリス様の声を聴いて駆けつけたザパルディ国の兵に迎えられながら戦地近くの病院まで私達は移送された。病院なら敵の攻撃が及ぶ事は無いとクリス様からの提案だった。
「……皆様、ありがとうございました」
このタイミングで私は皆へお礼を告げる。実際彼らがいなければ私はロイナ国からは脱走出来なかっただろう。リリーネ子爵家から脱走出来たのもクリス様のおかげなのだから。
「マリーナが無事で良かった」
「ええ、本当にそうだわ」
「良かったです。無事で何よりですもの」
「皆さん……本当にありがとう」
クリス様が私を両腕でそっと抱き寄せる。彼の腕は温かくて触れるだけで落ち着く。彼は私を抱きしめながら何度もごめんと謝罪する。その声は痛々しく、悔しさがにじんだものだった。
「マリーナ、守れなくてごめん。もっと俺が警戒していればこんな事にはならなかったのに……!」
「いえ、皆がいたからこそ、私は脱出出来たと思っていますし、謝らないでください」
「……マリーナ」
「そうですよ。クリス様。あなたがいてくれたから、私はロイナ国から逃げ出せたのですから。勿論クララ様とジュリーさんもいてこそです。皆がいてくれて良かったと思います」
「マリーナ……! ありがとう」
クリス様はゆっくりと言葉を噛み締めるようにして柔らかい笑みを浮かべたのだった。
こうして私は病院で年の為の診査を受けた異常は見当たらなかった。病院の空いた部屋で皆と泊まった後、明朝に馬車で移動し王都へ帰還を果たしたのである。
「戻って来れた……」
「そうだな、戻って来た」
王都は変わらず、人々で賑わっていた。クララ様の屋敷に戻ると令嬢達が喜びの声と安堵の声を上げながら私達を出迎えてくれたのだった。
ここでクララ様が口を開いた。彼女の言葉が部屋全体にこだまして聞こえる。
「ああ、そうだ。それの何が悪い?」
イリアス様はクララ様の言葉全てを余裕たっぷりに肯定する。そうか、聖女がしてきた事をやり返しているのか。
だが、それで何か得られる事があるのだろうか。という疑問が浮かぶ。
(不毛じゃないか)
「イリアス様。それでは何もなりません」
「なぜそう思う」
「繰り返しになってしまうからです。イリアス様がそうしてザパルディ国を攻め、負けたとしましょう。そうすればイリアス様と同じような気持ちを持つ人物がザパルディ国に現れるかもしれません。そうなったら、戦争を未来永劫繰り返す事になります」
「……」
イリアス様が私の言いたい事を理解してくれたのか、口を結び考え込むようにして黙る。
「戦争が繰り返せば民は疲弊する一方では無いですか?」
「……っ。だが貴様らは魔法弾を開発していたではないか」
「存じていたのですね。ですがここで戦争が終われば魔法弾を使う機会は減ります」
私の言葉を受けてクリス様が何度も頷きながら、マリーナの言う通りだとイリアス様にしっかり聞こえるようにして呟いた。
「ああ、そうだ。イリアス様。考えてくれないか。それにあなたには王太子妃がいる。戦争が長引けばあの我儘な王太子妃にも危険が及んでしまうが、良いのか? 大切な人を失うのが戦争の悪い部分なんだ!」
「……っ!」
クリス様の必死の叫びにイリアス様が目を見開き、苦しそうに呻き声を上げた。彼の中にある天秤が今こちらの言い分の方へと傾いているのかもしれない。
ここでもう何度か押せば完全にこちら側へと傾くかもしれないと考えた時だった。
「わああああああ!」
イリアス様が喚きながら両手を天井に掲げた。すると一瞬で彼の周囲を黒い靄が覆うと、その靄はとぐろを巻くようにして天井へと駆け上がりながら竜の形に姿を変えた。
「伏せて!」
クリス様の合図で私達はすぐにその場に伏せた。クリス様が更に私を抱きかかえるようにして上から防御の姿勢を見せた。天井から竜が口を開けて私達を飲み込もうとするのを、私達全員がシールドを張って防ぐ。
「ぐっ……」
竜の牙がシールドに食い込みバチバチと音を立てる。更にシールドには竜の牙を中心にあちこちヒビが入り始めた。これではシールドが破られてしまう。
「もう一度!」
私は今張っているシールドの内側に更に新たにシールドを張る。更にジュリーが杖を掲げてシールドを張った。
何重にも張らないと安心できない。
「これで……!」
「あっあの竜、どうやって攻略すればいいんですか? お師匠様……!」
「イリアス様をどうにかしないと……!」
「……どうにかしたらいいんですね?」
クリス様が何かを思いついたかのように、クララ様に問いかけた。何か良い案でも思いついたのだろうか。
「俺がイリアス様を止めてきます」
「でもクリス、どうやって」
「クリス様、私も共に行きます」
クリス様が単身でイリアス様の元に近づけばそちらに竜の攻撃が向くだろう。なら、私がおとりかシールドを張る役に徹すれば、或いは……。
「マリーナ。じゃあシールドを張ってくれないか? 一緒に飛び込もう」
「はっはい!」
「分かったわ。シールドはこちらで張る!」
竜の牙がより深くシールドに食い込み、ヒビが増す。そしてシールドが割れる瞬間、私とクリス様はイリアス様へ向かって飛び込むようにして距離を詰めた。
「はあああああ!!」
「っ!!!」
そのままクリス様は剣の鞘でイリアス様を殴り、意識を失わせた。イリアス様が倒れると、竜もそのまま消えたのだった。
「……今の内に帰ろう!」
私はクリス様に手を引かれ、皆と共にその場から目一杯足を動かし走り去る。幸い宮廷を出るまで人に会う事は無かった。勿論、ソヴィにもだ。
宮廷の近くに止まっていた馬車に乗り込み、馬に魔法薬をかけて国境まで猛スピードで移動した後は攻撃を避けながらザパルディ国の兵と無事合流する事が出来たのだった。
「はあ……戻って来れた……! マリーナ、戻って来たぞ!」
「良かった……良かったです!」
クリス様の声を聴いて駆けつけたザパルディ国の兵に迎えられながら戦地近くの病院まで私達は移送された。病院なら敵の攻撃が及ぶ事は無いとクリス様からの提案だった。
「……皆様、ありがとうございました」
このタイミングで私は皆へお礼を告げる。実際彼らがいなければ私はロイナ国からは脱走出来なかっただろう。リリーネ子爵家から脱走出来たのもクリス様のおかげなのだから。
「マリーナが無事で良かった」
「ええ、本当にそうだわ」
「良かったです。無事で何よりですもの」
「皆さん……本当にありがとう」
クリス様が私を両腕でそっと抱き寄せる。彼の腕は温かくて触れるだけで落ち着く。彼は私を抱きしめながら何度もごめんと謝罪する。その声は痛々しく、悔しさがにじんだものだった。
「マリーナ、守れなくてごめん。もっと俺が警戒していればこんな事にはならなかったのに……!」
「いえ、皆がいたからこそ、私は脱出出来たと思っていますし、謝らないでください」
「……マリーナ」
「そうですよ。クリス様。あなたがいてくれたから、私はロイナ国から逃げ出せたのですから。勿論クララ様とジュリーさんもいてこそです。皆がいてくれて良かったと思います」
「マリーナ……! ありがとう」
クリス様はゆっくりと言葉を噛み締めるようにして柔らかい笑みを浮かべたのだった。
こうして私は病院で年の為の診査を受けた異常は見当たらなかった。病院の空いた部屋で皆と泊まった後、明朝に馬車で移動し王都へ帰還を果たしたのである。
「戻って来れた……」
「そうだな、戻って来た」
王都は変わらず、人々で賑わっていた。クララ様の屋敷に戻ると令嬢達が喜びの声と安堵の声を上げながら私達を出迎えてくれたのだった。
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