元聖女候補の監禁令嬢は元婚約者の王子から一途な溺愛を注がれる。

二位関りをん

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第61話

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 目を開ける。すると金色をベースとした絵画で彩られた荘厳な天井が目に入る。

「目を覚ましたのね、マリーナ」

 右側から聞こえて来たのはソヴィの声だ。私はバッと飛び起きると、ソヴィがくすくすと笑う。

「そんな急に起きなくて良いのに」
「……なんでかしら?」
「なんでって……あなたはもうザパルディ国には戻れないからよ。諦めなさい」
「あら、戻れないのね」

 と、やや強がってみたものの心の奥底にいる私は頭を抱えていた。

(ロイナ国に捕縛された!)

 捕縛されたという事はまた地下牢みたいな生活を送らなければならないのではないだろう? という事は嫌だ。もうあの生活はごめんだ。

「私はまた地下牢行きかしら」
「……イリアス様はあなたを大事にしているから無いわ。悔しいけど」
「なんで?」
「この宮廷で不自由なく暮らさせると仰っていたもの」
「イリアス様が?」
「そうよ……」

 私がイリアス様に気に入られているのが余程悔しいのだろう。ソヴィは唇を噛んでいる。

「私が聖女だから?」
「でしょうね。だから、お父様にあなたの両親祖父母を殺すように命じた」
「……知ってたの?」
「つい、さっきよ。お母様から聞いた」

 ソヴィは目を閉じつつも単調な表情を浮かべ、抑揚を押さえて淡々と語る。
 じゃあ、リリーネ子爵の末路も知っているのだろうか。

「リリーネ子爵は……」
「爆発四散したわ」
「知ってるんですか」
「やはりそうなのね。嘘を付いたのはお母様だったって訳かあ」
「母親は?」
「爆発四散したわ。おそらくお父様と同じようにね。私、お母様からはお父様は処刑されたと聞かされてたの」

 母親には真実を知らされていなかったようだ。そして爆発四散したという話からして、彼女の母親は夫であるリリーネ子爵とは共犯だったという事か。
 という事は彼女はリリーネ子爵夫妻とは血の繋がりが無いという事も、知っているのだろうか。

「ねえ、ソヴィ。あなたは……」
「待って。当てるわ。私はリリーネ子爵夫妻の実の子では無い、でしょ?」
「……知ってたんですね」
「お母様が最後に教えてくれたから」

 ソヴィの身体は小刻みに不規則に震えている。
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