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第59話
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まずは配合を確認し探る為に小さな魔法弾を作る。爆発は試験管の中で行えば、被害も出なくて済む。
「えーーと、この火薬と、この鉱石と」
「マリーナ様、この鉱石を使ってみましょう」
「ジュリーさんありがとう。ナイフで削ってみます」
「それが中心の親弾ですね。その周囲に子弾を巻いていきましょう」
「はい……」
こうして魔法弾の試作品が完成した。小さなミニチュアの大砲の筒に試作品を装てんし、試験管の中に向かって撃つ。すると魔法弾があちこちに弾けて広範囲に火花が飛んだ。この炸裂具合は予想以上である。
「すごい……!」
「これくらいなら威力は大丈夫でしょう。ここから配合量を増やした時にどうなるかですね……?」
ミニチュアでの威力を試した所で、実戦用となるサイズでに開発を進める。ここからは危険性がより高まるので私とジュリーは顔を保護するバイザーを着用して作業を行う。
「ゆっくり……ゆっくり……」
「マリーナさん、手が震えています」
「すみません……」
「変わりましょうか? 私がしますよ」
「お、お願いします」
魔力のこもった鉱石を慎重に切り出し、火薬も増やす。慎重な手つきで管に調合した魔法薬を籠めていく。
「で、出来ました……!」
「そうですね、ですがどこで実験すべきか……」
「どこか広い場所があれば……」
とはいってもこの周辺に広い場所は無い。とりあえずジュリーと話した結果、クララ様と掛け合ってみる事にしてみたのだった。
「クララ様、魔法弾を試してみたいのですが、どこか広い場所は無いでしょうか」
「……実戦でこっそり使ってみる?」
「こっそり?」
効果を試す事無くそのまま実戦投入する。それも攻撃に紛れてこっそりとクララ様の言葉。確かに通常の攻撃に紛れてこっそり使ってみれば、行けなくもなさそうか
「この周囲に広い場所は無いからね……」
「確かにそうですね。クリス様と掛け合ってきます」
という事で私はクリス様に手紙を書いて風に乗せて届けたのだった。手紙を送った後は魔法薬の生産に戻る。クリス様の返信は夕方前に届いたのだった。
「どれどれ……」
そこには国王陛下から魔法弾の実戦投入の許可が下りた事を示す文章と、彼の印が記されていた。私はその手紙をジュリーとクララ様に見せた。
「なるほど、国王陛下からの許可が下りたのね」
「そうみたいです」
「それでは早速軍部へ魔法弾を納品しましょう。試作品は5つ。配合表も作っておきました」
「ジュリーさんありがとうございます」
するとひらひらとそよ風に乗って白い封筒に入った手紙が届いた。封筒の裏側にはクリス様の名前が記されているのが見える。
「手紙……」
封を開いて中身を取り出すと、そこには国王陛下の体調があまりよくない事が記されていた。具体的に言うと咳が増えて息苦しさも増しているという。
「……私、宮廷にむかいましょうか」
「自ら国王陛下の病状を抑えるという事かしら?」
「そうです」
咳止めの魔法薬を作る事も出来る。だが、それだけでは足りない気がするのだ。それなら私自ら魔力を注いだ方がより効果はあるのではないだろうかと考えたのだった。
「……分かったわ。行きましょう。ジュリーも来なさい」
「はい、お師匠様」
「魔法弾の納品も一緒に済ませましょう。とりあえずあの子達には今から出かけて来ると伝えなきゃね」
令嬢達に今から宮廷に向かうと告げてから、着替えて身支度を手早く整えて馬車に乗る。宮廷に到着するとジュリーは軍部に魔法弾を納品しに向かい、私とクララ様は国王陛下のいる部屋へと向かった。
「国王陛下。お入りします」
国王陛下は天蓋付きの大きなベッドに横たわり、ぜえぜえと苦しそうに息を吐いている。その傍らにはクリス様と王妃に医師が何人か心配そうについていた。
「マリーナ……!」
「クリス様、国王陛下は今どうなっていますか?」
「咳が増えて息も苦しくなってる。もしかしたらジェシカの残した呪いが悪さしてるのかもしれない」
「わかりました」
私はすぐさま国王陛下に近づき、彼の胸付近に両掌を×印に重ねて置いて静かに魔力を注いだ。私の周囲が青白く光を放つ。
「おおっすごい……!」
「これが聖女の力……!」
以前国王陛下に魔力を注いだ時は呪いを全て消す事は出来なかった。だが、聖女と認められた今なら……!
「はあっ……!」
「マリーナ、頑張れ!」
クリス様から激励の言葉を貰い、更に魔力を放出し続ける。私は聖女。呪いは全て払わなければ……!
「はああああっ……!!!」
「聖女様、頑張れ……!」
「いけ、マリーナ!」
周囲が青白い光に包まれ、見えなくなった。ここで魔力の放出をいったん止めると、ゆっくりと視界が開けていった。
「……苦しさが楽になった」
国王陛下がそうぽつりと呟いた。その呟きを受けた医者達がすぐさま国王陛下の診察を始める。国王陛下の表情は先ほど見たものよりかは幾分元気そうな表情には見える。
「……呪いが消えている」
医者が目を丸くさせながら、そう告げた。
「えーーと、この火薬と、この鉱石と」
「マリーナ様、この鉱石を使ってみましょう」
「ジュリーさんありがとう。ナイフで削ってみます」
「それが中心の親弾ですね。その周囲に子弾を巻いていきましょう」
「はい……」
こうして魔法弾の試作品が完成した。小さなミニチュアの大砲の筒に試作品を装てんし、試験管の中に向かって撃つ。すると魔法弾があちこちに弾けて広範囲に火花が飛んだ。この炸裂具合は予想以上である。
「すごい……!」
「これくらいなら威力は大丈夫でしょう。ここから配合量を増やした時にどうなるかですね……?」
ミニチュアでの威力を試した所で、実戦用となるサイズでに開発を進める。ここからは危険性がより高まるので私とジュリーは顔を保護するバイザーを着用して作業を行う。
「ゆっくり……ゆっくり……」
「マリーナさん、手が震えています」
「すみません……」
「変わりましょうか? 私がしますよ」
「お、お願いします」
魔力のこもった鉱石を慎重に切り出し、火薬も増やす。慎重な手つきで管に調合した魔法薬を籠めていく。
「で、出来ました……!」
「そうですね、ですがどこで実験すべきか……」
「どこか広い場所があれば……」
とはいってもこの周辺に広い場所は無い。とりあえずジュリーと話した結果、クララ様と掛け合ってみる事にしてみたのだった。
「クララ様、魔法弾を試してみたいのですが、どこか広い場所は無いでしょうか」
「……実戦でこっそり使ってみる?」
「こっそり?」
効果を試す事無くそのまま実戦投入する。それも攻撃に紛れてこっそりとクララ様の言葉。確かに通常の攻撃に紛れてこっそり使ってみれば、行けなくもなさそうか
「この周囲に広い場所は無いからね……」
「確かにそうですね。クリス様と掛け合ってきます」
という事で私はクリス様に手紙を書いて風に乗せて届けたのだった。手紙を送った後は魔法薬の生産に戻る。クリス様の返信は夕方前に届いたのだった。
「どれどれ……」
そこには国王陛下から魔法弾の実戦投入の許可が下りた事を示す文章と、彼の印が記されていた。私はその手紙をジュリーとクララ様に見せた。
「なるほど、国王陛下からの許可が下りたのね」
「そうみたいです」
「それでは早速軍部へ魔法弾を納品しましょう。試作品は5つ。配合表も作っておきました」
「ジュリーさんありがとうございます」
するとひらひらとそよ風に乗って白い封筒に入った手紙が届いた。封筒の裏側にはクリス様の名前が記されているのが見える。
「手紙……」
封を開いて中身を取り出すと、そこには国王陛下の体調があまりよくない事が記されていた。具体的に言うと咳が増えて息苦しさも増しているという。
「……私、宮廷にむかいましょうか」
「自ら国王陛下の病状を抑えるという事かしら?」
「そうです」
咳止めの魔法薬を作る事も出来る。だが、それだけでは足りない気がするのだ。それなら私自ら魔力を注いだ方がより効果はあるのではないだろうかと考えたのだった。
「……分かったわ。行きましょう。ジュリーも来なさい」
「はい、お師匠様」
「魔法弾の納品も一緒に済ませましょう。とりあえずあの子達には今から出かけて来ると伝えなきゃね」
令嬢達に今から宮廷に向かうと告げてから、着替えて身支度を手早く整えて馬車に乗る。宮廷に到着するとジュリーは軍部に魔法弾を納品しに向かい、私とクララ様は国王陛下のいる部屋へと向かった。
「国王陛下。お入りします」
国王陛下は天蓋付きの大きなベッドに横たわり、ぜえぜえと苦しそうに息を吐いている。その傍らにはクリス様と王妃に医師が何人か心配そうについていた。
「マリーナ……!」
「クリス様、国王陛下は今どうなっていますか?」
「咳が増えて息も苦しくなってる。もしかしたらジェシカの残した呪いが悪さしてるのかもしれない」
「わかりました」
私はすぐさま国王陛下に近づき、彼の胸付近に両掌を×印に重ねて置いて静かに魔力を注いだ。私の周囲が青白く光を放つ。
「おおっすごい……!」
「これが聖女の力……!」
以前国王陛下に魔力を注いだ時は呪いを全て消す事は出来なかった。だが、聖女と認められた今なら……!
「はあっ……!」
「マリーナ、頑張れ!」
クリス様から激励の言葉を貰い、更に魔力を放出し続ける。私は聖女。呪いは全て払わなければ……!
「はああああっ……!!!」
「聖女様、頑張れ……!」
「いけ、マリーナ!」
周囲が青白い光に包まれ、見えなくなった。ここで魔力の放出をいったん止めると、ゆっくりと視界が開けていった。
「……苦しさが楽になった」
国王陛下がそうぽつりと呟いた。その呟きを受けた医者達がすぐさま国王陛下の診察を始める。国王陛下の表情は先ほど見たものよりかは幾分元気そうな表情には見える。
「……呪いが消えている」
医者が目を丸くさせながら、そう告げた。
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