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第58話

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 出来上がった魔法薬の原材料と調合法を確認すると、それをまとめてメモに書き、令嬢達へ早速作るようにと依頼をした。

「わかりました!」
「了解です、マリーナ様」

 更に、配合を書いたメモを魔法で増やし、同じく魔法で増やした依頼票と共に封筒に入れて屋敷に戻った令嬢達へと届けた。

(これで生産量を増やしていければ……)

 それからまずは治療用の魔法薬を傷をふさぐ効能とやけどを治す効能の2種類を生産し、宮廷内にある軍部へと納品をした。

「ジェリコ公爵はじめ令嬢の方々には感謝しかございません」
「ちょうど枯渇が見えてきていたので助かりました」

 軍の大臣をはじめ、皆納品にはとても喜んでくれた。彼らの表情に私はやりがいを感じていたのだった。クリス様からも感謝の言葉を受けたのだった。

「マリーナ、ありがとう」
「いえ」
「俺も時間のある時には手伝うから、いつでも呼んで。それとこの魔法薬、宮廷内でも生産していいかな?」
「いいんですか?」

 クリス様からの申し出に、私は思わず驚く。勿論令嬢達以外にも人手が増えるなら喜ばしい事だ。

「宮廷内に魔法薬を作る工場を作る予定なんだ。そうしないと需要が供給に追い付かない。それだけロイナ国の軍事力は強大って事だ」
「……わかりました。ではお願いします。配合表お渡ししましょうか?」
「助かる!」

 そして畑の栄養剤は効果を現地に派遣した兵やメイド達によって確認されたあと、実際に使われる事になった。領民曰く作物の育ちが以前と比べて格段に良くなったという話を聞いた。

「成功ですね、マリーナ様」
「良かったです。ジュリーさんや皆さんのおかげです」

 その後、栄養剤もクリス様と掛け合い、宮廷内に新たに作られた工場にて生産が行われる事となった。更に軍とクリス様からは目標を爆破するために使う魔法弾の生産の依頼を受け、こちらもクララ様の屋敷で令嬢らと共に生産していく事が決まった。

「魔法弾……かなり難しいわよ?」
「……そうみたいですね」

 魔法弾は配合する時が一番危険だ。配合を間違えれば、爆発を起こしかねない。更に出来上がった魔法弾を試しに使ってみても爆発が起こらなければ失敗。生産が最も危険な魔法薬でもある。こういった事情がある魔法薬なので大量生産には向いていない。
 だが、この魔法弾を生産できれば戦況が変わるかもしれない。人の命を殺傷兵器を生産するのはつらいが、戦争を早期に終わらせる為にはこの魔法弾を生産しなければ。

「クララ様、やってみます」

 私は覚悟を決めた。

「ちゃんと気を付けるのよ?」
「はい」

 私は早速ジュリーと共に開発に取り組んだ。
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