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第56話
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時は過ぎ、ついにロイナ国との戦争が火蓋を切った。国境沿いを中心に大規模な戦闘がはじまり、その周辺に住まう領民は次々に王都の近くやザパルディ国と同盟を結んだ他国へと次々に避難してきた。
「戦闘がはじまりましたね」
「ええ、マリーナ……」
「早く終われば……」
「向こうもやる気でしょうし、長い事かかる可能性もある」
「……ですよね」
大学院と大学は休校となった。しかも大学と大学院の生徒には学徒動員、兵として召集される事も決まった。クリス様も宮廷にて国王陛下と共に指揮にあたると本人から聞いた。
「必ず勝つ。そして君を守る。だから心配しないで」
彼の力強い言葉が、胸の中で宝石のように輝いている。
また、リリーネ子爵はひっそりと彼の領地内の墓場に葬られた。魔術を使い爆発四散した彼の身体の欠片を集めて、出来る限り人の身体の形に戻してから埋葬された。
また、リリーネ子爵についての身辺調査も国王陛下の指示の元行われた。彼はザパルディ国出身ではあるが、父親であり先代のリリーネ子爵の三男坊という事もあり、ロイナ国で過ごしていた時期が多かったという。
そんな彼だがロイナ国で過ごしている間、何らかの形でイリアス様と彼の父親である国王陛下に仕えるスパイとなったそうだ。その後、リリーネ子爵家を継ぐはずだった長男が病により亡くなったのをきっかけにロイナ国のスパイとしてザパルディ国に戻って来た。
「兄を殺して貴様がリリーネ子爵家を継げ」
ロイナ国の国王陛下からリリーネ子爵に最初に下されたのがこの命令だった。命令通りに彼は次男を事故に見せかけて殺害し、リリーネ子爵を継いだ。リリーネ子爵家を継いですぐに結婚した彼の妻もまた、ロイナ国の女スパイだった。
そしてリリーネ子爵家の身辺調査が進んだ事により、私は意外な事実を知る事になる。
「クリス様、ソヴィは実の娘じゃないんですか?」
「そうみたいなんだ。まだ調査してる途中だけど……」
なんとソヴィはリリーネ子爵夫妻の実の娘じゃないという話が出て来たのだ。
「確かに言われてみればリリーネ子爵とは似てない顔つきだったけれど……」
ソヴィはあまり目立つ方では無い顔つきのリリーネ子爵とは正直似ていない。どちらかというと目立ちたがり屋でお化粧も派手な方だし、目つきも醸し出すオーラも何か全体的にきつい。リリーネ子爵の妻とは……似てるような似てないような微妙なラインかもしれない。でも、雰囲気はちょっとだけ違うかもしれない。
「それにソヴィは学園で魔力の少なさでいじめられてたって話あっただろ? それも孤児院とかどっかから見繕って来た庶民の子供とするなら納得出来る。どうしても貴族と庶民では魔力の差があるから。勿論強力な魔力を持つ庶民も稀にいる訳だけど」
「でも、なぜソヴィを? どちらかが不妊だから?」
「俺の憶測だけどそんな気はする。スパイなら子供が必要になるシチュエーションもあるだろうし……」
「例えば?」
「学校に通う貴族の子女達の様子を探ったりするとか。女の子なら社交界の様子も探れるか」
いずれにせよ、ソヴィをリリーネ子爵夫妻が迎えてかわいがった理由が何かしらあるはずだ。
また、リリーネ子爵の妻とソヴィはロイナ国に戻っているという情報ももたらされた。案の定とは思ったが、脱走して国に戻っているとなるとこれは厄介な事になりそうだ。
(色んな情報が入ってくるな……)
私はジュリーと共に、まずは畑の栄養剤の量産を目指すべく彼女と共に研究を始めた。それと並行して兵の傷を癒やす魔法薬の大量生産も目指し、研究を進める。
本当は私みずから土地を訪れて土地に合う配合などを確かめたかった所だが、それは危ないとクララ様から止められたので彼女が手配した兵をジェリコ公爵領及び、調査の許可を得た貴族の領地に送り調査にあたって貰っている。
彼らから送られたサンプルの土から相性の良い配合を調べ、栄養剤を作って実際に使用してみる。問題が無ければそれで使用、何かあればまた作り直すというのを繰り返す。地道だが、何とか進めるしかない。
(戦争が始まったから兵士の分に軍馬と言った動物達の分の食料も必要になる。栄養剤を大量生産しなければ食料不足に陥ってしまう)
相性の良い配合表をジュリーと共に作成し、配合に必要な原料も集め大量生産に向けてとにかく準備を進める。
「マリーナ様、ジェリコ公爵領の分の配合表が出来ました!」
「ありがとうございます!」
「あとは大量生産が出来れば……」
「そうですね、人手が……」
「お師匠様に掛け合ってみますか?」
ジュリーからの提案を受け、私達はクララ様の元へと向かう。リビングホールにいた彼女は安楽椅子に座りながら器用に毛糸で編み物をしていた。
「お師匠様、少しいいでしょうか?」
「ええ、何かしら」
「ジェリコ公爵領の田畑栄養剤の配合表が完成しました。後はこの表に従って栄養剤を生産するだけなのですが、人手をどう確保すべきか……」
「なるほどね……確かに大量生産するなら人では必要だわ。それにジェリコ公爵領だけでなく、ザパルディ国全体となるとね」
何か良い案はないだろうか。
「戦闘がはじまりましたね」
「ええ、マリーナ……」
「早く終われば……」
「向こうもやる気でしょうし、長い事かかる可能性もある」
「……ですよね」
大学院と大学は休校となった。しかも大学と大学院の生徒には学徒動員、兵として召集される事も決まった。クリス様も宮廷にて国王陛下と共に指揮にあたると本人から聞いた。
「必ず勝つ。そして君を守る。だから心配しないで」
彼の力強い言葉が、胸の中で宝石のように輝いている。
また、リリーネ子爵はひっそりと彼の領地内の墓場に葬られた。魔術を使い爆発四散した彼の身体の欠片を集めて、出来る限り人の身体の形に戻してから埋葬された。
また、リリーネ子爵についての身辺調査も国王陛下の指示の元行われた。彼はザパルディ国出身ではあるが、父親であり先代のリリーネ子爵の三男坊という事もあり、ロイナ国で過ごしていた時期が多かったという。
そんな彼だがロイナ国で過ごしている間、何らかの形でイリアス様と彼の父親である国王陛下に仕えるスパイとなったそうだ。その後、リリーネ子爵家を継ぐはずだった長男が病により亡くなったのをきっかけにロイナ国のスパイとしてザパルディ国に戻って来た。
「兄を殺して貴様がリリーネ子爵家を継げ」
ロイナ国の国王陛下からリリーネ子爵に最初に下されたのがこの命令だった。命令通りに彼は次男を事故に見せかけて殺害し、リリーネ子爵を継いだ。リリーネ子爵家を継いですぐに結婚した彼の妻もまた、ロイナ国の女スパイだった。
そしてリリーネ子爵家の身辺調査が進んだ事により、私は意外な事実を知る事になる。
「クリス様、ソヴィは実の娘じゃないんですか?」
「そうみたいなんだ。まだ調査してる途中だけど……」
なんとソヴィはリリーネ子爵夫妻の実の娘じゃないという話が出て来たのだ。
「確かに言われてみればリリーネ子爵とは似てない顔つきだったけれど……」
ソヴィはあまり目立つ方では無い顔つきのリリーネ子爵とは正直似ていない。どちらかというと目立ちたがり屋でお化粧も派手な方だし、目つきも醸し出すオーラも何か全体的にきつい。リリーネ子爵の妻とは……似てるような似てないような微妙なラインかもしれない。でも、雰囲気はちょっとだけ違うかもしれない。
「それにソヴィは学園で魔力の少なさでいじめられてたって話あっただろ? それも孤児院とかどっかから見繕って来た庶民の子供とするなら納得出来る。どうしても貴族と庶民では魔力の差があるから。勿論強力な魔力を持つ庶民も稀にいる訳だけど」
「でも、なぜソヴィを? どちらかが不妊だから?」
「俺の憶測だけどそんな気はする。スパイなら子供が必要になるシチュエーションもあるだろうし……」
「例えば?」
「学校に通う貴族の子女達の様子を探ったりするとか。女の子なら社交界の様子も探れるか」
いずれにせよ、ソヴィをリリーネ子爵夫妻が迎えてかわいがった理由が何かしらあるはずだ。
また、リリーネ子爵の妻とソヴィはロイナ国に戻っているという情報ももたらされた。案の定とは思ったが、脱走して国に戻っているとなるとこれは厄介な事になりそうだ。
(色んな情報が入ってくるな……)
私はジュリーと共に、まずは畑の栄養剤の量産を目指すべく彼女と共に研究を始めた。それと並行して兵の傷を癒やす魔法薬の大量生産も目指し、研究を進める。
本当は私みずから土地を訪れて土地に合う配合などを確かめたかった所だが、それは危ないとクララ様から止められたので彼女が手配した兵をジェリコ公爵領及び、調査の許可を得た貴族の領地に送り調査にあたって貰っている。
彼らから送られたサンプルの土から相性の良い配合を調べ、栄養剤を作って実際に使用してみる。問題が無ければそれで使用、何かあればまた作り直すというのを繰り返す。地道だが、何とか進めるしかない。
(戦争が始まったから兵士の分に軍馬と言った動物達の分の食料も必要になる。栄養剤を大量生産しなければ食料不足に陥ってしまう)
相性の良い配合表をジュリーと共に作成し、配合に必要な原料も集め大量生産に向けてとにかく準備を進める。
「マリーナ様、ジェリコ公爵領の分の配合表が出来ました!」
「ありがとうございます!」
「あとは大量生産が出来れば……」
「そうですね、人手が……」
「お師匠様に掛け合ってみますか?」
ジュリーからの提案を受け、私達はクララ様の元へと向かう。リビングホールにいた彼女は安楽椅子に座りながら器用に毛糸で編み物をしていた。
「お師匠様、少しいいでしょうか?」
「ええ、何かしら」
「ジェリコ公爵領の田畑栄養剤の配合表が完成しました。後はこの表に従って栄養剤を生産するだけなのですが、人手をどう確保すべきか……」
「なるほどね……確かに大量生産するなら人では必要だわ。それにジェリコ公爵領だけでなく、ザパルディ国全体となるとね」
何か良い案はないだろうか。
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