62 / 81
第54話
しおりを挟む
国王陛下はクリス様、そして私達と王の間に集まっている全ての人間に視線を送った。それは何かを確かめるようなそんな感じに見えた。
「皆さん。お力添え、お願いできますか? 力を合わせて連合軍として、ロイナ国と戦いませんか?」
静かだが、重く芯の通った声音で呼びかける国王陛下。その視線には熱が籠もっているのも理解できた。
「勿論です。共に戦いましょう」
「フィーン国も共にあります」
「同盟を築き共に戦いましょう!」
「……皆様、ありがとうございます!」
国王陛下は他国からの申し出を噛み締めるように、皆に深々と頭を下げたのだった。
直後、ロイナ国の国王から宣戦布告の内容が書かれた手紙が国王陛下に届く。国王陛下はそれを受け取り読んだ後、改めて高らかに宣言を発した。
「こちらとしては迎え撃つのみ。必ずや勝利を!」
「おおーーっっ!!」
こうして親善交流は、ロイナ国の宣戦布告と共に幕を閉じたのだった。
最終日の朝の集まりを終え、クララ様の屋敷に戻った私達は、クリス様も交えて今後についての会議を行う事が決まった。食堂に集まり、椅子に座ると早速クララ様が口を開いた。
「それにしてもいきなりの宣戦布告だったわね。まるでこのタイミングを待っていたかのよう」
クララ様の冷静な発言に私はイリアス様のパーティーでの発言を思い出していた。
「それに此度の件、捕縛した事で我が妻とその両親への不敬罪も勿論成立する。ロイナ国はこの悪逆極まりない国を許す事は無いだろう!」
言われてみればリリーネ子爵ら3人の行動がスイッチと言うか、トリガーにはなっているように考えられた。
(不敬罪を開戦理由にした? でもそれだけではないような気もする。怪しい)
しかもこのイリアス様の発言の前には、私を狙うかのような動きと発言も見せていた。となると……。
「クララ様、少し良いですか?」
「マリーナ、どうぞ」
「……なんか怪しい気がするんです。イリアス様は多分私も狙っている。それにあの3人への不敬罪以外にも何か裏がありそうな予感と言いますか……」
「確かにイリアス様はあなたを狙っていた。不敬罪以外にも裏があるかはどうかは今は証拠が無いから判断は出来ないけど。マリーナは用心するに越した事は無いわね」
「そうですね……」
「おばあさま、マリーナはここにいた方が良いですか?」
「宮廷にロイナ国のスパイがいるとも限らない。情報を流したりする為のスパイが。少なくともこの屋敷より宮廷の方が人の出入りは多いのは確かよ」
「……そうですね……」
とりあえず今はクララ様の屋敷に留まっていた方が良いだろう。まだ私は婚約者の身。その状態で宮廷入りするのもちょっと不安と申し訳無さはある。
「クリス様!」
すると食堂にクリス様の従者が慌てた様子で入って来た。
ただ事ではないと言った彼の顔つきに、私達は一斉に視線を向ける。何かあったのだろうか?
「何だ?」
「大変です。捕らえていた筈のリリーネ子爵の妻とソヴィ様がいなくなりました!」
「なんだって? リリーネ子爵は?」
「今尋問中ですが、黙秘を貫いています」
「いなくなったのは女性陣だな? 追え!!」
「はっ!」
ソヴィとリリーネ子爵の妻がいなくなった。まさかロイナ国の手により脱走を図ったのだろうか。
「クリス様、あの2人はどこに捕らえられていたんです?」
「宮廷の地下にある地下牢だ。共謀しないよう距離を開けてバラバラに幽閉していた筈だが、まさかロイナ国の手によって脱走を……」
「したのでしょう。下手すりゃもうロイナ国に逃げ帰っている可能性もある」
「おばあさま……」
「あと、ジュリー様お時間よろしいですか?」
クリス様の従者はジュリーに何か用があるみたいだ。ジュリーは何でしょうか? と従者に返す。
「今リリーネ子爵の尋問中なのですが、黙秘していて中々尋問が進まないんです。なので……」
「自白剤ですね?」
「そうです」
「なら、今すぐ調合しましょう」
ジュリーは駆け足で自室に向かい、しばらくして調合し終えたばかりの自白剤の入った透明な瓶を持って食堂に戻っ来た。自白剤の見た目は混じり気の無い無色透明である。
「お待たせしました」
「出来たら私達と共に地下牢に向かってくれますかね? 何かあれば……」
「お師匠様、どうでしょうか?」
「構わない。行きなさい」
「はいっ! 行ってまいります!」
こうしてジュリーはクリス様の従者と共にリリーネ子爵のいる地下牢へと馬車で向かっていった。
「大丈夫ですかね?」
「大丈夫よ。あの子はああ見えて何度も死線を潜り抜けて来た子だから」
ジュリーを信頼しているのが良く理解できる言葉だ。クリス様は少しだけ首を傾げながらクララ様に問いかける。
「……おばあさま。今更な話ですけど、ジュリーさんて何者なんです?」
「……あら、まだ言ってなかった?」
クララ様らしからぬおどけた表情。だが、クリス様には効果は無かったようだ。
私としてもジュリーがどんな人物にかは知りたい所だ。
「知りたい? ジュリーの話」
「知りたいですおばあさま。マリーナは?」
「私もぜひ」
「皆さん。お力添え、お願いできますか? 力を合わせて連合軍として、ロイナ国と戦いませんか?」
静かだが、重く芯の通った声音で呼びかける国王陛下。その視線には熱が籠もっているのも理解できた。
「勿論です。共に戦いましょう」
「フィーン国も共にあります」
「同盟を築き共に戦いましょう!」
「……皆様、ありがとうございます!」
国王陛下は他国からの申し出を噛み締めるように、皆に深々と頭を下げたのだった。
直後、ロイナ国の国王から宣戦布告の内容が書かれた手紙が国王陛下に届く。国王陛下はそれを受け取り読んだ後、改めて高らかに宣言を発した。
「こちらとしては迎え撃つのみ。必ずや勝利を!」
「おおーーっっ!!」
こうして親善交流は、ロイナ国の宣戦布告と共に幕を閉じたのだった。
最終日の朝の集まりを終え、クララ様の屋敷に戻った私達は、クリス様も交えて今後についての会議を行う事が決まった。食堂に集まり、椅子に座ると早速クララ様が口を開いた。
「それにしてもいきなりの宣戦布告だったわね。まるでこのタイミングを待っていたかのよう」
クララ様の冷静な発言に私はイリアス様のパーティーでの発言を思い出していた。
「それに此度の件、捕縛した事で我が妻とその両親への不敬罪も勿論成立する。ロイナ国はこの悪逆極まりない国を許す事は無いだろう!」
言われてみればリリーネ子爵ら3人の行動がスイッチと言うか、トリガーにはなっているように考えられた。
(不敬罪を開戦理由にした? でもそれだけではないような気もする。怪しい)
しかもこのイリアス様の発言の前には、私を狙うかのような動きと発言も見せていた。となると……。
「クララ様、少し良いですか?」
「マリーナ、どうぞ」
「……なんか怪しい気がするんです。イリアス様は多分私も狙っている。それにあの3人への不敬罪以外にも何か裏がありそうな予感と言いますか……」
「確かにイリアス様はあなたを狙っていた。不敬罪以外にも裏があるかはどうかは今は証拠が無いから判断は出来ないけど。マリーナは用心するに越した事は無いわね」
「そうですね……」
「おばあさま、マリーナはここにいた方が良いですか?」
「宮廷にロイナ国のスパイがいるとも限らない。情報を流したりする為のスパイが。少なくともこの屋敷より宮廷の方が人の出入りは多いのは確かよ」
「……そうですね……」
とりあえず今はクララ様の屋敷に留まっていた方が良いだろう。まだ私は婚約者の身。その状態で宮廷入りするのもちょっと不安と申し訳無さはある。
「クリス様!」
すると食堂にクリス様の従者が慌てた様子で入って来た。
ただ事ではないと言った彼の顔つきに、私達は一斉に視線を向ける。何かあったのだろうか?
「何だ?」
「大変です。捕らえていた筈のリリーネ子爵の妻とソヴィ様がいなくなりました!」
「なんだって? リリーネ子爵は?」
「今尋問中ですが、黙秘を貫いています」
「いなくなったのは女性陣だな? 追え!!」
「はっ!」
ソヴィとリリーネ子爵の妻がいなくなった。まさかロイナ国の手により脱走を図ったのだろうか。
「クリス様、あの2人はどこに捕らえられていたんです?」
「宮廷の地下にある地下牢だ。共謀しないよう距離を開けてバラバラに幽閉していた筈だが、まさかロイナ国の手によって脱走を……」
「したのでしょう。下手すりゃもうロイナ国に逃げ帰っている可能性もある」
「おばあさま……」
「あと、ジュリー様お時間よろしいですか?」
クリス様の従者はジュリーに何か用があるみたいだ。ジュリーは何でしょうか? と従者に返す。
「今リリーネ子爵の尋問中なのですが、黙秘していて中々尋問が進まないんです。なので……」
「自白剤ですね?」
「そうです」
「なら、今すぐ調合しましょう」
ジュリーは駆け足で自室に向かい、しばらくして調合し終えたばかりの自白剤の入った透明な瓶を持って食堂に戻っ来た。自白剤の見た目は混じり気の無い無色透明である。
「お待たせしました」
「出来たら私達と共に地下牢に向かってくれますかね? 何かあれば……」
「お師匠様、どうでしょうか?」
「構わない。行きなさい」
「はいっ! 行ってまいります!」
こうしてジュリーはクリス様の従者と共にリリーネ子爵のいる地下牢へと馬車で向かっていった。
「大丈夫ですかね?」
「大丈夫よ。あの子はああ見えて何度も死線を潜り抜けて来た子だから」
ジュリーを信頼しているのが良く理解できる言葉だ。クリス様は少しだけ首を傾げながらクララ様に問いかける。
「……おばあさま。今更な話ですけど、ジュリーさんて何者なんです?」
「……あら、まだ言ってなかった?」
クララ様らしからぬおどけた表情。だが、クリス様には効果は無かったようだ。
私としてもジュリーがどんな人物にかは知りたい所だ。
「知りたい? ジュリーの話」
「知りたいですおばあさま。マリーナは?」
「私もぜひ」
2
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
異世界転移したら、推しのガチムチ騎士団長様の性癖が止まりません
冬見 六花
恋愛
旧題:ロングヘア=美人の世界にショートカットの私が転移したら推しのガチムチ騎士団長様の性癖が開花した件
異世界転移したアユミが行き着いた世界は、ロングヘアが美人とされている世界だった。
ショートカットのために醜女&珍獣扱いされたアユミを助けてくれたのはガチムチの騎士団長のウィルフレッド。
「…え、ちょっと待って。騎士団長めちゃくちゃドタイプなんですけど!」
でもこの世界ではとんでもないほどのブスの私を好きになってくれるわけない…。
それならイケメン騎士団長様の推し活に専念しますか!
―――――【筋肉フェチの推し活充女アユミ × アユミが現れて突如として自分の性癖が目覚めてしまったガチムチ騎士団長様】
そんな2人の山なし谷なしイチャイチャエッチラブコメ。
●ムーンライトノベルズで掲載していたものをより糖度高めに改稿してます。
●11/6本編完結しました。番外編はゆっくり投稿します。
●11/12番外編もすべて完結しました!
●ノーチェブックス様より書籍化します!
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る
束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました
ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。
幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。
シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。
そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。
ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。
そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。
邪魔なのなら、いなくなろうと思った。
そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。
そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。
無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。
死に戻りの花嫁は冷徹騎士の執着溺愛から逃げられない
無憂
恋愛
旧題:病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
結婚式の最中にセシリアは突如、前世の記憶を思い出す。それは、隣に立つ花婿ユードに裏切られ、父は冤罪で殺され、自身も彼の恋人ディートリンデの差し金で、何人もの男たちに陵辱されて死ぬ、という悲惨なものだった。どういう理由か、時戻りしたことに気づいたセシリアは、今度こそ破滅を回避するため、夫ユードと距離を取り、彼の不貞の証拠を掴んで離縁しようと画策する。しかし、ユードの方はセシリアの態度に不満を覚えて、グイグイ距離を詰めてくるのだが……。
*魔法はかなりご都合主義です。
*番外編を投稿します。R18部分には*印をつけました。前世のヒーローはクズ仕様となっておりますので、クズヒーローが許容できない方はご注意ください。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
【R18】はじめてのかんきん〜聖女と勇者のワクドキ♡監禁生活〜
河津ミネ
恋愛
「コーヘイ、お願い……。私に監禁されて?」
聖女マリエルは勇者コーヘイにまたがりながら、震える声でつぶやいた。コーヘイが腕を上げればはめられた手枷の鎖がジャラリと嫌な音を立てる。
かつてこの世界に召喚された勇者コーヘイは、無事に魔王討伐を果たし、あとは元の世界に帰るだけのはずだったが――!?
「いや……いいけど、これ風呂とかどうすんの?」
「え! お風呂!? どうしよう……」
聖女と勇者の初めてのドキドキ監禁生活(?)がいま始まる!
[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜
くみ
恋愛
R18作品です。
18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。
男爵家の令嬢エリーナ・ネーディブは身体が弱くほとんどを屋敷の中で過ごす引きこもり令嬢だ。
そのせいか極度の人見知り。
ある時父からいきなりカール・フォード公爵が婚姻をご所望だと聞かされる。
あっという間に婚約話が進み、フォード家へ嫁ぐことに。
内気で初心な令嬢は、美貌の公爵に甘く激しく愛されてー?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる