元聖女候補の監禁令嬢は元婚約者の王子から一途な溺愛を注がれる。

二位関りをん

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第50話

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「マリーナ」

 クリス様が私に目線を向けて、首を縦に振る。私にはクリス様が今から何をするつもりなのか、全て分かっている。

「お願いします、クリス様」
「……じゃあ、断罪としようか」

 クリス様はパンパンと手を叩き、静粛に! と凛とした声で皆に呼びかける。

「兵よ、こちらに。扉も窓も全て締めよ!」
「ははっ!」

 即座にダンスホールに兵士が10数人程現れ、彼が脱出出来ないようにする。彼……リリーネ子爵の身体は滑稽な程に震えている。

「今、1000年振りに聖女が現れました。聖女と認められたのはマリーナ・ジェリコ。私の婚約者です。マリーナ・ジェリコは幼い頃より聖女候補として育ちました」

 王族や貴族らは固唾を呑んで、クリス様の話に耳を傾けている。それはクララ様やジュリー、国王陛下と王妃様もそうだ。

「だが! そんな聖女を忌み子として扱い地下牢に幽閉した不敬な者がいた! リリーネ子爵夫妻とロイナ国王太子妃ソヴィである!」

 高らかな宣言。王族や貴族らは一斉に3人に刃のような目線を向けた。

「兵よ。3人を捕らえよ。これからこの3人は国家に刃を向けた罪により、断罪されなければならない! しかもだ、マリーナ・ジェリコは両親を殺された。リリーネ子爵にはその疑いもある!」

 兵が3人を手早く捕らえ、国王陛下とクリス様の前に突き出した。3人とも抵抗するが、屈強な兵の前ではもはや成すすべ無しといった具合だ。
 イリアス様は驚きながらも冷静に3人を見ている。

「証拠品をこちらに」
「ははっ」

 執事が用意したのは手形と事件当日のリリーネ子爵が描かれた絵。手形には指紋が残っているので、これは皆の前で照合する算段か。

「実はこの手形。照合していないのはリリーネ子爵だけ。先日処刑されたフリードリア伯爵も遺体を墓場から掘り返して照合している」
「待て、私がそのような事はしない。それも私と似ている人物なだけだ!」
「なら、照合しよう。違うなら違うはずだ」
「お、王子……」

 兵に右手を掴まれたリリーネ子爵。ジュリーも駆けつけそのまま彼の指紋を手形に残った形そっくりに取り、手形の指紋と照らし合わせる。
 すると……

「一致しました」

 指紋は見事に一致した。更に絵と彼の顔相も顔の1パーツ毎に照合しこちらも見事に一致したのだった。

「リリーネ子爵。貴様が我が婚約者マリーナ・ジェリコの両親を殺した犯人と言うわけだな」

 クリス様の冷たい声が、ダンスホール中にこだまする。
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