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第49話
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「いやーーー!!!」
「誰かっ、助けてくれぇっ!!」
「バケモノだあああっ!」
案の定、ダンスホール中はパニック状態となる。リリーネ子爵夫妻とソヴィも明らかに怯えた表情を見せている。
「皆様、こちらへどうぞ! これよりこのマリーナ・ジェリコ公爵が神託を受けます!」
国王陛下はそう大声で高らかに宣言した。
え、これが神託? 何かの間違いでは?
「いやこれが神託? 嘘でしょ?」
私はつい大声で国王陛下にそう返してしまったが、国王陛下は咳き込みつつも何事も無かったかのような表情を見せている。
「ああ、そうだとも? 悪魔の獣も予定通りだ」
「えぇ……」
「ち、父上……」
正直驚きを隠せないのはあるが、これが神託なら受けざるを得ない。
私は悪魔の獣の前に歩み寄り、両手を前にかざす。
私が聖女だと信じている人達の為にも、期待に応えたい。
「はあっ……」
魔力を限界まで、さらに限界以上まで高ぶらせる。そうでもしないとこの数の悪魔の獣を相手だと私には勝ち目が無いからだ。すると私の周囲に青白い光の玉が床からしゃぼん玉のように湧き上がり、私が立つ床にはこれまた青白い色の魔法陣が浮び上がる。
「すーーっ……」
これまでダンスホールにいる人達を睨み付けていた悪魔の獣が一斉に私の元へと襲いかかる。魔力を開放するならこの瞬間だ。
「はあっ!」
最大限まで高ぶらせていた魔力を一気に開放、放出した。
パアアアアアッ
視界が青白い光に包まれて何も見えなくなる。人の悲鳴に歓声が聞こえてくる気はうっすらとしたが、どうなのか。
青白い光が晴れると前方にいたのは悪魔の獣ではなく、神父や騎士達だった。それにイェルガーもいる。
「見て下さい皆様! これが聖女の力でございます!」
国王陛下の高らかな宣言に、王族や貴族方からは地鳴りのような歓声が起こった。
「マリーナ!」
「クリス様!」
「マリーナ! 額……!」
クリス様と先程まで悪魔の獣だった神父が近づく。そして私の額を指で指し示し始めた。神父の右手には古びた書物があり、ぱらぱらと器用にめくる。
「これは……聖女の証。模様も書物と同じ!」
「……じゃあ!」
「クリス王子。ジェリコ公爵様は本物の聖女です。1000年振りに聖女がおわしました!」
ザパルディ国には1000年に一度、聖女と呼ばれる莫大な魔力を持つ娘が誕生する。
その聖女と結ばれた王子には、莫大な加護がつき、国が豊かになるというものだ。
聖女の特徴は3つ。まずは美しい金髪、次に美しい容姿、そして血のような真っ赤な瞳。その特徴を備えた少女が成人した時に神託を受けると、聖女として目覚め、証が浮かび上がる。
それらを全て兼ね備え、莫大な魔力を有する娘こそが、聖女である。そんな聖女の再来を民はずっと待ちわびている。
この神話通りに、私は聖女となったのだ。王族や貴族達からは祝福の声が湧いて出てくる。
そんな中、ある人物だけはわなわなと身体を震えさせていた。勿論私とクリス様がその様子に気が付かない筈が無かった。
「誰かっ、助けてくれぇっ!!」
「バケモノだあああっ!」
案の定、ダンスホール中はパニック状態となる。リリーネ子爵夫妻とソヴィも明らかに怯えた表情を見せている。
「皆様、こちらへどうぞ! これよりこのマリーナ・ジェリコ公爵が神託を受けます!」
国王陛下はそう大声で高らかに宣言した。
え、これが神託? 何かの間違いでは?
「いやこれが神託? 嘘でしょ?」
私はつい大声で国王陛下にそう返してしまったが、国王陛下は咳き込みつつも何事も無かったかのような表情を見せている。
「ああ、そうだとも? 悪魔の獣も予定通りだ」
「えぇ……」
「ち、父上……」
正直驚きを隠せないのはあるが、これが神託なら受けざるを得ない。
私は悪魔の獣の前に歩み寄り、両手を前にかざす。
私が聖女だと信じている人達の為にも、期待に応えたい。
「はあっ……」
魔力を限界まで、さらに限界以上まで高ぶらせる。そうでもしないとこの数の悪魔の獣を相手だと私には勝ち目が無いからだ。すると私の周囲に青白い光の玉が床からしゃぼん玉のように湧き上がり、私が立つ床にはこれまた青白い色の魔法陣が浮び上がる。
「すーーっ……」
これまでダンスホールにいる人達を睨み付けていた悪魔の獣が一斉に私の元へと襲いかかる。魔力を開放するならこの瞬間だ。
「はあっ!」
最大限まで高ぶらせていた魔力を一気に開放、放出した。
パアアアアアッ
視界が青白い光に包まれて何も見えなくなる。人の悲鳴に歓声が聞こえてくる気はうっすらとしたが、どうなのか。
青白い光が晴れると前方にいたのは悪魔の獣ではなく、神父や騎士達だった。それにイェルガーもいる。
「見て下さい皆様! これが聖女の力でございます!」
国王陛下の高らかな宣言に、王族や貴族方からは地鳴りのような歓声が起こった。
「マリーナ!」
「クリス様!」
「マリーナ! 額……!」
クリス様と先程まで悪魔の獣だった神父が近づく。そして私の額を指で指し示し始めた。神父の右手には古びた書物があり、ぱらぱらと器用にめくる。
「これは……聖女の証。模様も書物と同じ!」
「……じゃあ!」
「クリス王子。ジェリコ公爵様は本物の聖女です。1000年振りに聖女がおわしました!」
ザパルディ国には1000年に一度、聖女と呼ばれる莫大な魔力を持つ娘が誕生する。
その聖女と結ばれた王子には、莫大な加護がつき、国が豊かになるというものだ。
聖女の特徴は3つ。まずは美しい金髪、次に美しい容姿、そして血のような真っ赤な瞳。その特徴を備えた少女が成人した時に神託を受けると、聖女として目覚め、証が浮かび上がる。
それらを全て兼ね備え、莫大な魔力を有する娘こそが、聖女である。そんな聖女の再来を民はずっと待ちわびている。
この神話通りに、私は聖女となったのだ。王族や貴族達からは祝福の声が湧いて出てくる。
そんな中、ある人物だけはわなわなと身体を震えさせていた。勿論私とクリス様がその様子に気が付かない筈が無かった。
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