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ソヴィ視点⑤
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あれから私はまだイリアス様とベッドと共にしていないままだ。ずっと部屋で1人で過ごし、食事の時だけイリアス様や両親と会う暮らしが続いている。
「王太子妃様。食事の時間でございます」
「わかった、いくわ」
お昼。ランチの時間がやって来た。宮廷の窓からは優しい陽だまりが差し込んでいて暖かくて綺麗だ。食堂に入ると先にイリアス様が着席していた。
「イリアス様、ご機嫌いかがですか?」
「ああ、ソヴィ。元気だよ。君はどうだい?」
「はい、元気です!!」
「はは、それなら良い」
イリアス様は今日も美しく。すぐにどこからかパタパタと両親も駆けつけ、食事が始まった。今日のランチは何だろうか。
メイドと執事がまず用意したのは前菜のサラダと野菜スープだ。スープはコンソメ風味だろうか。
「頂きます」
サラダを頂いている時、イリアス様がそうだ。と何か思い付いたように口を開いた。
「今度のザパルディ国で行われるパーティー。リリーネとその奥方はどうする?」
「……一応は出席するつもりです」
「私も夫とともに出席する予定です」
「お父様とお母様も出席なさるの?」
両親もいるならそれに越した事は無い。私は嬉しさを滲ませながらそう笑顔で質問すると、両親はなぜかやや引き攣った硬い笑顔を浮かべながらそうだ。と告げた。
「ソヴィは両親が好きなんだな」
「ええ、両親ですので」
「ふふっ、良い子だ。君も王太子妃としてザパルディ国の親善。パーティーに出席する。勿論私もだ。共にゆこう」
そう穏やかな笑みを浮かべるイリアス様は宝石のように輝いて見える。
「は、はいっ……!」
「ふふっ、後で宝石やドレスを見てみよう」
(イリアス様も一緒が良い)
「あ、あの! イリアス様」
「何だ?」
「あの、イリアス様も一緒に見ませんか? イリアス様がお選びになったものを付けたいですっ……!」
すると、イリアスのお美しいお顔から笑顔が消えた。しかしすぐに笑顔は復活する。
「分かった。一緒に見て回ろう」
「はいっ! 嬉しいですっ」
「ソヴィ、あまり王太子様に迷惑をかけてはならないよ?」
「お父様、承知しておりますわ」
(だってイリアス様とはベッドを共に出来ていない。これくらい良いでしょ)
ランチのメインディッシュは鹿肉のステーキ。ナイフとフォークを使って口に入れるが、硬くて臭みもありあまり美味しくはない。
しかし、イリアス様は穏やかな笑みを浮かべたまま次々に自らナイフとフォークを使い切り刻んだステーキを口の中へ入れていく。
(美味しいのかな)
だが、何度噛んで飲み込んでみても美味しく無いのには変わりはなかった。私は首を捻るが3人がそれに気づく事は無かった。
「ごちそうさま。良いお肉だった」
イリアス様は満足そうな笑みを見せながら白い布で口元を拭う。彼がそう言うのだからやはり鹿肉のステーキは美味しいものなのだろう。
「ソヴィ、美味しかった?」
「……美味しかった、です」
「……嘘をつかなくて良い」
イリアス様の冷たい言葉がぐさりと、私の胸のど真ん中を貫いた。そして彼の視線が冷たく痛い。
「すみません、イリアス様」
「良い子だ」
「……硬くて美味しくありませんでした」
「正直に言えて良い」
「……はい」
イリアス様の声が、氷のように冷たい。それに耳に入る度に耳から身体全体に針で指したかのような痛みが走る。
「ごちそうさまでした」
こうしてランチは幕を閉じる。その後はイリアス様と共にパーティーで着用するドレスや、身につけるティアラに宝石を選びに宮廷奥の大部屋に移動する。重厚感溢れる白い大部屋の扉を開くと若いメイド3人程がうやうやしく頭を下げる。
「王太子妃様。何になさいますか?」
「うーーん……」
私の目に止まったのは、赤い布に黒い何重にも重なった黒いフリルのドレスだった。
「これ着たいわ!」
「良いな、ソヴィ似合ってる」
「ありがとうございます!」
イリアス様に褒められ、優しくポンポンと2度撫でられると私の身体全体が宙に浮くような幸福感に包まれたのだった。
「王太子妃様。食事の時間でございます」
「わかった、いくわ」
お昼。ランチの時間がやって来た。宮廷の窓からは優しい陽だまりが差し込んでいて暖かくて綺麗だ。食堂に入ると先にイリアス様が着席していた。
「イリアス様、ご機嫌いかがですか?」
「ああ、ソヴィ。元気だよ。君はどうだい?」
「はい、元気です!!」
「はは、それなら良い」
イリアス様は今日も美しく。すぐにどこからかパタパタと両親も駆けつけ、食事が始まった。今日のランチは何だろうか。
メイドと執事がまず用意したのは前菜のサラダと野菜スープだ。スープはコンソメ風味だろうか。
「頂きます」
サラダを頂いている時、イリアス様がそうだ。と何か思い付いたように口を開いた。
「今度のザパルディ国で行われるパーティー。リリーネとその奥方はどうする?」
「……一応は出席するつもりです」
「私も夫とともに出席する予定です」
「お父様とお母様も出席なさるの?」
両親もいるならそれに越した事は無い。私は嬉しさを滲ませながらそう笑顔で質問すると、両親はなぜかやや引き攣った硬い笑顔を浮かべながらそうだ。と告げた。
「ソヴィは両親が好きなんだな」
「ええ、両親ですので」
「ふふっ、良い子だ。君も王太子妃としてザパルディ国の親善。パーティーに出席する。勿論私もだ。共にゆこう」
そう穏やかな笑みを浮かべるイリアス様は宝石のように輝いて見える。
「は、はいっ……!」
「ふふっ、後で宝石やドレスを見てみよう」
(イリアス様も一緒が良い)
「あ、あの! イリアス様」
「何だ?」
「あの、イリアス様も一緒に見ませんか? イリアス様がお選びになったものを付けたいですっ……!」
すると、イリアスのお美しいお顔から笑顔が消えた。しかしすぐに笑顔は復活する。
「分かった。一緒に見て回ろう」
「はいっ! 嬉しいですっ」
「ソヴィ、あまり王太子様に迷惑をかけてはならないよ?」
「お父様、承知しておりますわ」
(だってイリアス様とはベッドを共に出来ていない。これくらい良いでしょ)
ランチのメインディッシュは鹿肉のステーキ。ナイフとフォークを使って口に入れるが、硬くて臭みもありあまり美味しくはない。
しかし、イリアス様は穏やかな笑みを浮かべたまま次々に自らナイフとフォークを使い切り刻んだステーキを口の中へ入れていく。
(美味しいのかな)
だが、何度噛んで飲み込んでみても美味しく無いのには変わりはなかった。私は首を捻るが3人がそれに気づく事は無かった。
「ごちそうさま。良いお肉だった」
イリアス様は満足そうな笑みを見せながら白い布で口元を拭う。彼がそう言うのだからやはり鹿肉のステーキは美味しいものなのだろう。
「ソヴィ、美味しかった?」
「……美味しかった、です」
「……嘘をつかなくて良い」
イリアス様の冷たい言葉がぐさりと、私の胸のど真ん中を貫いた。そして彼の視線が冷たく痛い。
「すみません、イリアス様」
「良い子だ」
「……硬くて美味しくありませんでした」
「正直に言えて良い」
「……はい」
イリアス様の声が、氷のように冷たい。それに耳に入る度に耳から身体全体に針で指したかのような痛みが走る。
「ごちそうさまでした」
こうしてランチは幕を閉じる。その後はイリアス様と共にパーティーで着用するドレスや、身につけるティアラに宝石を選びに宮廷奥の大部屋に移動する。重厚感溢れる白い大部屋の扉を開くと若いメイド3人程がうやうやしく頭を下げる。
「王太子妃様。何になさいますか?」
「うーーん……」
私の目に止まったのは、赤い布に黒い何重にも重なった黒いフリルのドレスだった。
「これ着たいわ!」
「良いな、ソヴィ似合ってる」
「ありがとうございます!」
イリアス様に褒められ、優しくポンポンと2度撫でられると私の身体全体が宙に浮くような幸福感に包まれたのだった。
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