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第38話
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教会を出た私達。その後は領地をあちこち見て回った。田舎の方も見て回り、領民からの話も聞く。
「この地域周辺の畑は最近あまり収穫量が上がらず……」
「土に問題があるんじゃないか?」
「栄養剤を土に入れてみるとか」
こうして、領地の調査は幕を閉じる。クララ様の屋敷に戻り、私達は領地の話とジェリコ公爵家の屋敷の調査に、私の両親を殺した犯人について分かったと話したのだった。
「そう……そんな事が」
「おばあさま。この事は父上と母上に報告し再度調査をするように進言してきます。今からでも行きたいくらいです」
「……クリス」
「証拠はあります。ジュリーさんのおかげです」
クララ様は何度も確かめるように頷いた。そして瞳の奥にギラついた光を宿した目で、クリス様を見る。
「行ってきなさい。ジュリーもお供して頂戴」
「ありがとうございます。おばあさま」
「ではいきましょう。お供します」
「私も付いていっていいですか?」
私もジュリーとクリス様と共に行くべきだと考えたので彼らと共に国王陛下らの元へ行きたいという意志を示した。
「マリーナも行くのね。気をつけて」
「はい」
こうしてクララ様の屋敷に帰還した私達はその足で宮廷に向かう。アポ無しのいきなりの訪問という事で国王陛下の公務や面会の合間にお会いできる事になった。
「まだかな……」
私達は王の間の近くにある椅子にかけて待っている。会えるのは国王陛下の公務や面会の合間の時間なので、どうしても待たなければならない。
クリス様は足を組んだり組む足を変えたりして時折退屈そうにしながら待っている。
「もうそろそろじゃないですか? 30分程経ちましたし」
「えっ、ジュリーさんもうそんな時間経ったの?」
ジュリーがネックレスタイプな銀色の懐中時計をクリス様と私に見せた。
「来たのが大体12分くらいで今は45分です」
「本当だ……父上も忙しいから仕方ないか。最近は色んな国から来賓が来てるって言うし」
「王子、その話は私も聞いております。近々様々な国々の王族方を招いた親善交流のパーティーがあるんでしたっけ?」
「あ、確かそう言っていたような」
すると固く閉ざされていた王の間の扉がゆっくりと開き中から大臣らしき人物と執事が出て来た。そのうち執事の方がこちらに近づき、王の間に入るように促す。
「行こう」
王の間に入ると国王陛下と王妃様の姿が見える。国王陛下は一見すると元気そうに見えたが私達が入室してすぐに苦しそうに咳込んでしまう。
「ごほっ……」
「父上!」
「大丈夫だ。最近咳が時々出るんだ」
国王陛下は問題無いというような表情を見せている。だがこれはジェシカが断罪された時にかけた呪いが原因なのは見てすぐに理解出来た。
除去出来なかった部分がこうして、国王陛下の身体を蝕んでいるのだ。
「話は?」
「はっ、ジェリコ公爵領の調査と並行して、先代のジェリコ公爵とその妻の死について調査を行いました」
「ほう? クリス、何か手掛かりは見つかったのか?」
「はい。こちらに用意しております」
クリスとジュリーが手形等のレプリカや、リリーネ子爵の姿が映し出された絵などを国王陛下と王妃様に見せる。
「よく見つけたな。以前は調査しても手掛かりは掴めなかったというのに」
「ジュリーさんの魔法薬のおかげです、父上」
「へへへ……」
国王陛下と王妃様が興味深そうにジュリーを見た。
「確か、グランバス公爵の弟子だったか」
「はい! 左様でございます」
「もっと早く君の力を頼るべきだったか。調査に協力して頂き感謝する」
「い、いえいえ! やるべき事をしたまでです!」
ジュリーは慌てて手を振りつつも、控えめな態度を取っている。
証拠品に目を通した国王陛下と王妃様は従者を呼び証拠品を手渡した。
「父上、お願いがあります」
「なんだ」
「もう一度先代のジェリコ公爵とその妻及び、マリーナの祖父母が亡くなった事件について調査をしっかりして頂き、犯人を裁いて頂きたく存じます」
「……ごほっ、勿論だ。徹底的に調べさせよう。それにあの顔はリリーネ子爵のものだな。もしや」
「俺はリリーネ子爵が犯人かと疑っております」
「あの手形には指紋も一部残っていたか。分かった。調べさせる。下がって良いぞ」
「はっ」
「私からもお願いします。家族を殺した犯人を許す事派出来ません」
「ああ、ジェリコ公爵。約束しよう」
「ありがとうございます」
こうして国王陛下と王妃様への面会が終わり、私達はクララ様の屋敷へと戻った。
「そう、調査してくれるのね」
「はい、おばあさま」
クリス様は嬉しそうな笑顔を見せていた。だが、私の胸の中には複雑に絡まりあった感情があった。
リリーネ子爵……犯人が捕まり罪を受けた所で家族は戻って来ない。だから犯人は許せない。それにリリーネ子爵は私を忌み子として地下牢に入れた。彼を許す事は出来ない。
(……もし、殺されなかったら今頃私は何して過ごしていたんだろうか)
私は天井を見上げながら、複雑な感情を抱えていたのだった。
「この地域周辺の畑は最近あまり収穫量が上がらず……」
「土に問題があるんじゃないか?」
「栄養剤を土に入れてみるとか」
こうして、領地の調査は幕を閉じる。クララ様の屋敷に戻り、私達は領地の話とジェリコ公爵家の屋敷の調査に、私の両親を殺した犯人について分かったと話したのだった。
「そう……そんな事が」
「おばあさま。この事は父上と母上に報告し再度調査をするように進言してきます。今からでも行きたいくらいです」
「……クリス」
「証拠はあります。ジュリーさんのおかげです」
クララ様は何度も確かめるように頷いた。そして瞳の奥にギラついた光を宿した目で、クリス様を見る。
「行ってきなさい。ジュリーもお供して頂戴」
「ありがとうございます。おばあさま」
「ではいきましょう。お供します」
「私も付いていっていいですか?」
私もジュリーとクリス様と共に行くべきだと考えたので彼らと共に国王陛下らの元へ行きたいという意志を示した。
「マリーナも行くのね。気をつけて」
「はい」
こうしてクララ様の屋敷に帰還した私達はその足で宮廷に向かう。アポ無しのいきなりの訪問という事で国王陛下の公務や面会の合間にお会いできる事になった。
「まだかな……」
私達は王の間の近くにある椅子にかけて待っている。会えるのは国王陛下の公務や面会の合間の時間なので、どうしても待たなければならない。
クリス様は足を組んだり組む足を変えたりして時折退屈そうにしながら待っている。
「もうそろそろじゃないですか? 30分程経ちましたし」
「えっ、ジュリーさんもうそんな時間経ったの?」
ジュリーがネックレスタイプな銀色の懐中時計をクリス様と私に見せた。
「来たのが大体12分くらいで今は45分です」
「本当だ……父上も忙しいから仕方ないか。最近は色んな国から来賓が来てるって言うし」
「王子、その話は私も聞いております。近々様々な国々の王族方を招いた親善交流のパーティーがあるんでしたっけ?」
「あ、確かそう言っていたような」
すると固く閉ざされていた王の間の扉がゆっくりと開き中から大臣らしき人物と執事が出て来た。そのうち執事の方がこちらに近づき、王の間に入るように促す。
「行こう」
王の間に入ると国王陛下と王妃様の姿が見える。国王陛下は一見すると元気そうに見えたが私達が入室してすぐに苦しそうに咳込んでしまう。
「ごほっ……」
「父上!」
「大丈夫だ。最近咳が時々出るんだ」
国王陛下は問題無いというような表情を見せている。だがこれはジェシカが断罪された時にかけた呪いが原因なのは見てすぐに理解出来た。
除去出来なかった部分がこうして、国王陛下の身体を蝕んでいるのだ。
「話は?」
「はっ、ジェリコ公爵領の調査と並行して、先代のジェリコ公爵とその妻の死について調査を行いました」
「ほう? クリス、何か手掛かりは見つかったのか?」
「はい。こちらに用意しております」
クリスとジュリーが手形等のレプリカや、リリーネ子爵の姿が映し出された絵などを国王陛下と王妃様に見せる。
「よく見つけたな。以前は調査しても手掛かりは掴めなかったというのに」
「ジュリーさんの魔法薬のおかげです、父上」
「へへへ……」
国王陛下と王妃様が興味深そうにジュリーを見た。
「確か、グランバス公爵の弟子だったか」
「はい! 左様でございます」
「もっと早く君の力を頼るべきだったか。調査に協力して頂き感謝する」
「い、いえいえ! やるべき事をしたまでです!」
ジュリーは慌てて手を振りつつも、控えめな態度を取っている。
証拠品に目を通した国王陛下と王妃様は従者を呼び証拠品を手渡した。
「父上、お願いがあります」
「なんだ」
「もう一度先代のジェリコ公爵とその妻及び、マリーナの祖父母が亡くなった事件について調査をしっかりして頂き、犯人を裁いて頂きたく存じます」
「……ごほっ、勿論だ。徹底的に調べさせよう。それにあの顔はリリーネ子爵のものだな。もしや」
「俺はリリーネ子爵が犯人かと疑っております」
「あの手形には指紋も一部残っていたか。分かった。調べさせる。下がって良いぞ」
「はっ」
「私からもお願いします。家族を殺した犯人を許す事派出来ません」
「ああ、ジェリコ公爵。約束しよう」
「ありがとうございます」
こうして国王陛下と王妃様への面会が終わり、私達はクララ様の屋敷へと戻った。
「そう、調査してくれるのね」
「はい、おばあさま」
クリス様は嬉しそうな笑顔を見せていた。だが、私の胸の中には複雑に絡まりあった感情があった。
リリーネ子爵……犯人が捕まり罪を受けた所で家族は戻って来ない。だから犯人は許せない。それにリリーネ子爵は私を忌み子として地下牢に入れた。彼を許す事は出来ない。
(……もし、殺されなかったら今頃私は何して過ごしていたんだろうか)
私は天井を見上げながら、複雑な感情を抱えていたのだった。
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