元聖女候補の監禁令嬢は元婚約者の王子から一途な溺愛を注がれる。

二位関りをん

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第37話

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「時間かかるかな?」
「クリス様……さあ」

 しばらくして先程のシスターとシスター長が私達の目の前に現れた。シスター長は神妙な面持ちをしている。   

「クリス王子、ジェリコ公爵、よくお越しになりました。どうぞお入りください」
「ありがとうございます」

 シスター長に案内され、修道院の中の一室に案内される。

「どうぞ」

 部屋は小さな個室。白い壁に木製の床に同じく木製の机と椅子があるだけとシンプルな作りだ。

「座ってください」

 私達はシスター長に促され、簡素な椅子に座る。部屋の扉はシスター長によってがちゃんと閉められた。

「……私にあなた達が聞きたい事はなんとなく分かります。先代のジェリコ公爵夫妻にまつわる事であっていますか?」
「はい、そうです」
「ジェリコ公爵。お答え頂きありがとうございます」
「いえ、単刀直入に言いますとこちらに犯人らしき男性が訪れたのは事実ですか?」
「……これも神の思し召しでしょう。正直に答えます。事実です。この私と直にやり取りもしました」
「なんというやり取りでしたか?」
「水をくれ、と。水を渡したら飲んですぐに修道院から立ち去りました」
「どんな方で?」
「黒い服を着ていました。男性だったかと」
「1人でしたか?」
「はい」

 すると、ジュリーがバッグから瓶に入った魔法薬を取り出した。

「これを飲んでいただけますか? 身体に害は全くございません。飲むとあなたの中にある記憶をこの薬が描いてくれます」

 ジュリーの説明によると、この薬を飲んで息を吐くとその息が頭の中で思い浮かべる景色が絵画のように浮かび上がるのだという。

「分かりました、飲みますね」

 ジュリーから瓶を受け取ったシスター長は、薬を一気に飲むと息を吐く。すると、息は1人の黒いフード付きのローブを着た男の絵が浮かんだ。その顔に私は勿論見覚えがあった。

「リリーネ子爵!!」

 その顔は紛れもなくリリーネ子爵のものだった。目の色も髪の色も全く変わらない。

「り、リリーネ子爵……!」
「私の家族を殺したのは、リリーネ子爵……?」
「っ、これ、型取りますね!」

 ジュリーは急いで浮かび上がっているリリーネ子爵の姿の型を取った。

「ま、マリーナ……」
「クリス様……」

 私を最初から陥れたくて、彼は私の両親を殺したのだろうか。私の口から言葉が上手く出ない。しかし、ある感情だけは確かにあった。
 リリーネ子爵を許せない。それが私の腹の奥底で炎のように燃え上がっている。

「リリーネ子爵……!」

 どうやらそれは、クリス様も同じようだ。
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