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第36話
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「これ!」
クリス様が何かを見つけたようだ。彼が指さす先は父親の左足付近。よく目を凝らしてみると、靴跡らしき模様が見られた。
「靴跡、ですかね?」
「そうでしょうね。犯人が踏んだのか、後で犯人ではない誰かによって踏まれたのかまでは分かりませんが」
「ジュリーさん、一応靴跡だけ型とれる?」
「はい、王子。お任せください」
ジュリーは器用に魔術でその靴跡の型を取った。更に、他にも靴跡や手形と思わしき痕跡を見つけそれを型に取っていく。
「っそろそろ行かないと時間が……」
「ジュリーさん分かりました、クリス様行きましょう!」
「わかった。とりあえずこのまま保存できる魔術かけてく」
今後も調査が出来るようにとクリス様が保存魔法をかけてから、この屋敷を出ていく。
「型は一緒に調査しますか?」
「ああ、俺も手伝わせてほしい」
「私も手伝いたいです。ジュリーさん」
「了解です。もし、また調査するってなったらいつでもお貸しします。レプリカも作っておきますので」
「ありがとうございます。助かります」
領地を見回った結果、特に荒れ果てた場所や悪魔の獣の出没と言う話は湧いて来なかった。領民曰く私の両親が亡くなってからは王家が直々に管轄していたという事もあり、管理が行き届いていたのだろう。だが、調査は1日目を終えたばかりなのでまだ調査すべき場所は残っている。
「はあーー……」
私達は領地内にある王家所有の別荘で寝泊まりする事となった。夕食にはこの地域で狩猟された鳥を焼いたものとこの地域で収穫された野菜をふんだんに使ったスープが並んだ。
「どれも美味しそうですねえ」
「そうだなあ、もうお腹ぺこぺこだよ」
「お肉美味しそうですね」
お肉は柔らかい。味も効いていて美味しいものだ。やはり私は鳥肉が好きだと実感させられたのだった。スープも野菜からだしが出ていて、薄めのスープの色からは想像できない程、まろやかで濃い味が出ている。
「ごちそうさまでした」
夕食後は私はベッドで魔術書を読みつつ大学院でのレポートを書く。レポートが終わればジュリーの元へクリスと向かい。先ほど屋敷で得た靴跡や手形の型のレプリカを作る作業に入る。
「これ、手形だよな」
「そうですよ、王子。これはかなり有力な証拠になるかと」
「こんな証拠、なんで今まで出なかったんだ?」
「私の推察ですが、おそらく魔法で隠していたんでしょうね。その魔法によるカモフラージュが時間経過で消失したか私の魔法薬で炙りだされたかどうかまでは判別できませんが、こうして世に出てきたと」
「なるほど。ジュリーさんの薬ってすごいな」
「ええ、勿論! この魔法薬は私が生み出したものなので!」
ジュリーが胸を張りながら、えっへんと満面の笑みを見せた。ほほえましかったのでつい笑ってしまう。
「まあ、本題に戻りましょう。この手形合計3つ。ここから指紋は取れます」
「その指紋を照合すれば……」
「犯人は見えて来るかと。ですが、1点だけ。この型はマリーナ様のご両親が亡くなった後、現場に訪れた人物が触れてしまって手形をうっかり残した場合というのも考えられます。なのでしっかりふるいにかける必要があるかと」
「なるほどな……確かにそうだ」
その後。レプリカを全て作り終えた所で私達は解散し就寝した。
翌日も領地内の調査に向かう。この日、屋敷の近くに立ち寄るので、近隣の住民に聞き込み調査も行う事にした。
「とりあえず片っ端から聞いていきましょう。もう調査済みかもしれませんが、何か手掛かりが出てくるかもしれませんし」
早速、ジェリコ公爵家の屋敷の初老の男性が歩いているのを見つけたジュリーは、彼に挨拶しつつ声をかけた。
「あのーー。ここで先代のジェリコ公爵様が殺された話って、知っています?」
「ああ、知っているよ」
「もし当日、何か変わった事とかありませんでしたか?」
「すまん、覚えてないねえ」
「そうですか、ありがとうございます」
その後も近くに住む者達に尋ねて回ったが、有力な情報は得られなかった。
(やはり年数が経っているからだろうか……)
「すみません、お話良いですか?」
ジュリーが声をかけたのは、中年くらいの女性だった。見た目は貴族風には見える。ジュリーが彼女に声をかけると彼女は噂話なら知っていると口を開いてくれた。
「近くの修道院に、犯人と思わしき人物が立ち寄った事がある。という噂はあるみたい。あくまで噂だから確証は無いけれど」
「教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ。まだジェリコ公爵夫妻を殺した犯人て見つかってないのね。早く見つかるといいけど」
私達は修道院に向かった。修道院には人がぽつぽつと訪れている。私は修道院のシスターに声をかけて、噂について何か知っていそうと踏んだシスター長と会えないかアポを取ってみる事にした。
「あの、お時間構いませんか。シスター長と会えないかしら」
「ジェリコ公爵様とクリス王子……! 少々お待ちください」
シスターは慌てて、建物の中へと駆け出していった。
クリス様が何かを見つけたようだ。彼が指さす先は父親の左足付近。よく目を凝らしてみると、靴跡らしき模様が見られた。
「靴跡、ですかね?」
「そうでしょうね。犯人が踏んだのか、後で犯人ではない誰かによって踏まれたのかまでは分かりませんが」
「ジュリーさん、一応靴跡だけ型とれる?」
「はい、王子。お任せください」
ジュリーは器用に魔術でその靴跡の型を取った。更に、他にも靴跡や手形と思わしき痕跡を見つけそれを型に取っていく。
「っそろそろ行かないと時間が……」
「ジュリーさん分かりました、クリス様行きましょう!」
「わかった。とりあえずこのまま保存できる魔術かけてく」
今後も調査が出来るようにとクリス様が保存魔法をかけてから、この屋敷を出ていく。
「型は一緒に調査しますか?」
「ああ、俺も手伝わせてほしい」
「私も手伝いたいです。ジュリーさん」
「了解です。もし、また調査するってなったらいつでもお貸しします。レプリカも作っておきますので」
「ありがとうございます。助かります」
領地を見回った結果、特に荒れ果てた場所や悪魔の獣の出没と言う話は湧いて来なかった。領民曰く私の両親が亡くなってからは王家が直々に管轄していたという事もあり、管理が行き届いていたのだろう。だが、調査は1日目を終えたばかりなのでまだ調査すべき場所は残っている。
「はあーー……」
私達は領地内にある王家所有の別荘で寝泊まりする事となった。夕食にはこの地域で狩猟された鳥を焼いたものとこの地域で収穫された野菜をふんだんに使ったスープが並んだ。
「どれも美味しそうですねえ」
「そうだなあ、もうお腹ぺこぺこだよ」
「お肉美味しそうですね」
お肉は柔らかい。味も効いていて美味しいものだ。やはり私は鳥肉が好きだと実感させられたのだった。スープも野菜からだしが出ていて、薄めのスープの色からは想像できない程、まろやかで濃い味が出ている。
「ごちそうさまでした」
夕食後は私はベッドで魔術書を読みつつ大学院でのレポートを書く。レポートが終わればジュリーの元へクリスと向かい。先ほど屋敷で得た靴跡や手形の型のレプリカを作る作業に入る。
「これ、手形だよな」
「そうですよ、王子。これはかなり有力な証拠になるかと」
「こんな証拠、なんで今まで出なかったんだ?」
「私の推察ですが、おそらく魔法で隠していたんでしょうね。その魔法によるカモフラージュが時間経過で消失したか私の魔法薬で炙りだされたかどうかまでは判別できませんが、こうして世に出てきたと」
「なるほど。ジュリーさんの薬ってすごいな」
「ええ、勿論! この魔法薬は私が生み出したものなので!」
ジュリーが胸を張りながら、えっへんと満面の笑みを見せた。ほほえましかったのでつい笑ってしまう。
「まあ、本題に戻りましょう。この手形合計3つ。ここから指紋は取れます」
「その指紋を照合すれば……」
「犯人は見えて来るかと。ですが、1点だけ。この型はマリーナ様のご両親が亡くなった後、現場に訪れた人物が触れてしまって手形をうっかり残した場合というのも考えられます。なのでしっかりふるいにかける必要があるかと」
「なるほどな……確かにそうだ」
その後。レプリカを全て作り終えた所で私達は解散し就寝した。
翌日も領地内の調査に向かう。この日、屋敷の近くに立ち寄るので、近隣の住民に聞き込み調査も行う事にした。
「とりあえず片っ端から聞いていきましょう。もう調査済みかもしれませんが、何か手掛かりが出てくるかもしれませんし」
早速、ジェリコ公爵家の屋敷の初老の男性が歩いているのを見つけたジュリーは、彼に挨拶しつつ声をかけた。
「あのーー。ここで先代のジェリコ公爵様が殺された話って、知っています?」
「ああ、知っているよ」
「もし当日、何か変わった事とかありませんでしたか?」
「すまん、覚えてないねえ」
「そうですか、ありがとうございます」
その後も近くに住む者達に尋ねて回ったが、有力な情報は得られなかった。
(やはり年数が経っているからだろうか……)
「すみません、お話良いですか?」
ジュリーが声をかけたのは、中年くらいの女性だった。見た目は貴族風には見える。ジュリーが彼女に声をかけると彼女は噂話なら知っていると口を開いてくれた。
「近くの修道院に、犯人と思わしき人物が立ち寄った事がある。という噂はあるみたい。あくまで噂だから確証は無いけれど」
「教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ。まだジェリコ公爵夫妻を殺した犯人て見つかってないのね。早く見つかるといいけど」
私達は修道院に向かった。修道院には人がぽつぽつと訪れている。私は修道院のシスターに声をかけて、噂について何か知っていそうと踏んだシスター長と会えないかアポを取ってみる事にした。
「あの、お時間構いませんか。シスター長と会えないかしら」
「ジェリコ公爵様とクリス王子……! 少々お待ちください」
シスターは慌てて、建物の中へと駆け出していった。
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