40 / 81
第35話
しおりを挟む
クララ様の屋敷の玄関に、馬車が3台程到着していた。王族が使用する馬車で白馬の美しい毛が日の光に当たり輝いて見える。
「マリーナ! ジュリーさん!」
真ん中に停車している馬車からクリス様が降りてきた。彼も元気そうだ。私達は馬車に乗り込み、クララ様へ手を振って挨拶をした。
「いってらっしゃい」
馬車が勢いよく駆けだしてく。ここからジェリコ公爵家の屋敷まではそこまで離れてはいなかったはず。馬車にしばらく揺れていると窓にはあの、屋敷が見えてきた。外観はあの時とは全く変わっていないように見える。庭や木々もしっかり手入れが行き届いているようだ。
私達は馬車から降りて、屋敷の中に入る。
「懐かしい……」
両親が血を流して倒れていた場所で私は立ち止まる。あれだけ広がっていた血だまりの痕跡は見当たらない。しかしうっすらと赤い血の色が点々と残っていた。
「どうかなさいました?」
「ジュリーさん、ここで私の両親が血を流して倒れていたの」
「……誰かに殺されたとは聞きました。ですが、調査の結果未解決事件とも聞いています」
「……まだ、解決してなかったんですね」
あの後すぐにリリーネ子爵によって地下牢に入れられ、地下牢から脱出してもこの事件についての話は聞いてこなかった。なので、まだ、未解決だとは知らなかったのだった。
「はい、まだ犯人は見つかっていません。迷宮入りと言いますか」
「そうなんですね……」
「……マリーナ」
「クリス様?」
「あのさ、もう一度調べてみない?」
クリス様の目はまっすぐに私を捉えていた。でも、犯人はまだ見つかっていないうえに手掛かりが残っているかどうかも分からない。
「ですが」
「手掛かりはあると信じたい。何か出てくるかもしれないし、そもそもやってみないと分からないと思うんだ」
「……確かに、クリス王子の言う通りかと。調査ならこのジュリーの得意分野ですし。マリーナ様、どうなさいますか?」
「……分かりました。もう一度調べましょう」
「ああ! 父上にも掛け合ってみる」
こうして屋敷内の調査が始まった。だが、今回は領地内を見て回る為に屋敷に来ているので、時間はそこまで取れない。なので手早く調べる必要がある。
「屋敷は事件のまま残されているのかな?」
「血だまりはある程度綺麗にはなっています。所々ついているようにも見えますが」
「魔術であぶってみましょう。こんな感じで」
ジュリーが緑色に発光する魔法薬をバッグから取り出し、瓶のふたを開けて床に垂らした。すると、血に反応したのか、血だまりと両親の倒れていた形跡に沿って、魔法薬が広がっていく。
「この魔法薬は人間の痕跡に反応するものです。掃除しても効き目が失われる事はありません」
ジュリーの魔法薬によって再現された両親の痕跡へ更に私達は目を通していく。
「マリーナ! ジュリーさん!」
真ん中に停車している馬車からクリス様が降りてきた。彼も元気そうだ。私達は馬車に乗り込み、クララ様へ手を振って挨拶をした。
「いってらっしゃい」
馬車が勢いよく駆けだしてく。ここからジェリコ公爵家の屋敷まではそこまで離れてはいなかったはず。馬車にしばらく揺れていると窓にはあの、屋敷が見えてきた。外観はあの時とは全く変わっていないように見える。庭や木々もしっかり手入れが行き届いているようだ。
私達は馬車から降りて、屋敷の中に入る。
「懐かしい……」
両親が血を流して倒れていた場所で私は立ち止まる。あれだけ広がっていた血だまりの痕跡は見当たらない。しかしうっすらと赤い血の色が点々と残っていた。
「どうかなさいました?」
「ジュリーさん、ここで私の両親が血を流して倒れていたの」
「……誰かに殺されたとは聞きました。ですが、調査の結果未解決事件とも聞いています」
「……まだ、解決してなかったんですね」
あの後すぐにリリーネ子爵によって地下牢に入れられ、地下牢から脱出してもこの事件についての話は聞いてこなかった。なので、まだ、未解決だとは知らなかったのだった。
「はい、まだ犯人は見つかっていません。迷宮入りと言いますか」
「そうなんですね……」
「……マリーナ」
「クリス様?」
「あのさ、もう一度調べてみない?」
クリス様の目はまっすぐに私を捉えていた。でも、犯人はまだ見つかっていないうえに手掛かりが残っているかどうかも分からない。
「ですが」
「手掛かりはあると信じたい。何か出てくるかもしれないし、そもそもやってみないと分からないと思うんだ」
「……確かに、クリス王子の言う通りかと。調査ならこのジュリーの得意分野ですし。マリーナ様、どうなさいますか?」
「……分かりました。もう一度調べましょう」
「ああ! 父上にも掛け合ってみる」
こうして屋敷内の調査が始まった。だが、今回は領地内を見て回る為に屋敷に来ているので、時間はそこまで取れない。なので手早く調べる必要がある。
「屋敷は事件のまま残されているのかな?」
「血だまりはある程度綺麗にはなっています。所々ついているようにも見えますが」
「魔術であぶってみましょう。こんな感じで」
ジュリーが緑色に発光する魔法薬をバッグから取り出し、瓶のふたを開けて床に垂らした。すると、血に反応したのか、血だまりと両親の倒れていた形跡に沿って、魔法薬が広がっていく。
「この魔法薬は人間の痕跡に反応するものです。掃除しても効き目が失われる事はありません」
ジュリーの魔法薬によって再現された両親の痕跡へ更に私達は目を通していく。
3
お気に入りに追加
244
あなたにおすすめの小説
【R18】純情聖女と護衛騎士〜聖なるおっぱいで太くて硬いものを挟むお仕事です〜
河津ミネ
恋愛
フウリ(23)は『眠り姫』と呼ばれる、もうすぐ引退の決まっている聖女だ。
身体に現れた聖紋から聖水晶に癒しの力を与え続けて13年、そろそろ聖女としての力も衰えてきたので引退後は悠々自適の生活をする予定だ。
フウリ付きの聖騎士キース(18)とはもう8年の付き合いでお別れするのが少しさみしいな……と思いつつ日課のお昼寝をしていると、なんだか胸のあたりに違和感が。
目を開けるとキースがフウリの白く豊満なおっぱいを見つめながらあやしい動きをしていて――!?
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
異世界転移したら、推しのガチムチ騎士団長様の性癖が止まりません
冬見 六花
恋愛
旧題:ロングヘア=美人の世界にショートカットの私が転移したら推しのガチムチ騎士団長様の性癖が開花した件
異世界転移したアユミが行き着いた世界は、ロングヘアが美人とされている世界だった。
ショートカットのために醜女&珍獣扱いされたアユミを助けてくれたのはガチムチの騎士団長のウィルフレッド。
「…え、ちょっと待って。騎士団長めちゃくちゃドタイプなんですけど!」
でもこの世界ではとんでもないほどのブスの私を好きになってくれるわけない…。
それならイケメン騎士団長様の推し活に専念しますか!
―――――【筋肉フェチの推し活充女アユミ × アユミが現れて突如として自分の性癖が目覚めてしまったガチムチ騎士団長様】
そんな2人の山なし谷なしイチャイチャエッチラブコメ。
●ムーンライトノベルズで掲載していたものをより糖度高めに改稿してます。
●11/6本編完結しました。番外編はゆっくり投稿します。
●11/12番外編もすべて完結しました!
●ノーチェブックス様より書籍化します!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る
束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました
ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。
幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。
シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。
そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。
ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。
そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。
邪魔なのなら、いなくなろうと思った。
そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。
そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。
無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。
死に戻りの花嫁は冷徹騎士の執着溺愛から逃げられない
無憂
恋愛
旧題:病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
結婚式の最中にセシリアは突如、前世の記憶を思い出す。それは、隣に立つ花婿ユードに裏切られ、父は冤罪で殺され、自身も彼の恋人ディートリンデの差し金で、何人もの男たちに陵辱されて死ぬ、という悲惨なものだった。どういう理由か、時戻りしたことに気づいたセシリアは、今度こそ破滅を回避するため、夫ユードと距離を取り、彼の不貞の証拠を掴んで離縁しようと画策する。しかし、ユードの方はセシリアの態度に不満を覚えて、グイグイ距離を詰めてくるのだが……。
*魔法はかなりご都合主義です。
*番外編を投稿します。R18部分には*印をつけました。前世のヒーローはクズ仕様となっておりますので、クズヒーローが許容できない方はご注意ください。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる