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第32話

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 そして、ジェシカ達は捕縛され、王の間から退出していった。両親は抵抗していたが、ジェシカは抵抗する様子は見られなかった。兵に捕縛されたジェシカが王の間から退出する際。ジェシカが身に着けていたネックレスが黒く光る。

「っ! 危ない!」

 ネックレスから黒い光が放たれ、国王陛下にめがけて一直線に疾走する。私は急いで駆け寄り、国王陛下の前に立って魔法で防ごうとしたが、遅かった。

「ぐっ……!」

 黒い閃光をもろに受けた国王陛下は玉座から崩れ落ちるようにして倒れてしまった。

「フリードリア嬢! 何をした!」
「ただでは死んでやらないっていったでしょ?」

 ジェシカはくすりと兵に向けて笑った。そんなジェシカにクリス王子が待て! と叫んだ。廊下を歩いていたジェシカと彼女を捕縛している兵はその場で立ち止まる。

「何かしら、王子」
「俺やマリーナを攻撃したのもジェシカか?」
「そうよ」
「方法は?」
「メイドと魔力の回路をつないで、そこを利用するの。まあ、後は自分で考えなさい?」
「……マリーナ達を傷つけようとしたのは許さない。死んでその罪を償うが良い!」

 クリス様の叫びにジェシカは一瞬だけ驚きと動揺の表情を浮かべた。だが、すぐに兵によってどこかへと連行されていったのだった。

「父上、マリーナ……」

 国王陛下はすぐに侍医と術者らによって手当を受けた。勿論私も国王陛下の手当をする。両掌を国王陛下の心臓の上に置き魔力を注ぎ、彼にかけられた黒い閃光……呪いを薄めて薄めて極限まで薄めていく。だが、中々呪いの濃度は濃く、薄まってくれない。

「ぐっ……」

 次第に私に岩のように重い疲労感が襲い掛かって来た。魔力の量が減っているのは自分でもわかった。そんな私へ王妃様やクリス様が代わるように告げる。

「マリーナ、これ以上は……!」
「あなたの身が持たない……! 術者に代わりましょう」
「で、でも……」
「父上だけでなくマリーナも力尽きたらだめだ……」

 国王陛下は息こそしているが、意識は無い。なんとか意識だけでも取り戻せたら……私は雑巾を目いっぱい振り絞るように、自らの身体の中に眠る魔力を出していく。

「これでっ……!」

 手のひらから魔力を放出し続ける。すると、国王陛下の目がゆっくりと開かれる。

「うっ……」
「父上!」
「あなた! 気が付きましたか?」
「ああ……だが、まだ身体が重い……関節が痛い……」

 国王陛下は目を覚ましたものの、自力では起き上がれないようだ。クリス様や従者達が彼を担架に乗せて自室のベッドまで運んだのだった。


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