35 / 81
第30話
しおりを挟む
クリス様がジュリーと共に屋敷に戻って来た。
「調査が決まった」
「そ、そうですか……」
「エイリンはクララおばあさまの元でいたら良いと父上も言ってくれた。ただ、証人として宮廷に召喚される可能性はあるって」
「そこは覚悟しております。クリス王子」
エイリンの目の奥には光が見える。洗いざらい話すのは構わないという事か。
そして次の日。結局ジェシカがクララ様のお屋敷には来なかった。だが、大学院にて突っつかれる可能性も覚悟しておく必要はある。
「2人ともいってらっしゃい」
「はい」
「はい、おばあさま」
クララ様は今日は講義もないので、このまま屋敷にてエイリンと留まる事になる。私はクリス様と2人で馬車に乗り大学院へ登校した。
「あ、クリス王子とジェリコ公爵よ」
「いつも一緒なのね」
私を見る目線とひそひそした声が耳に入る。すると頭上から殺気を感じたので、私はすぐに天に手を掲げ、シールドを張った。
がちゃがちゃがちゃ!!!
天から巨大な氷柱が槍の如く降り注ぐと全てシールドに跳ね返され、雲散霧消していった。
「マリーナ……!」
「お怪我はございませんでしたか?」
「ごめん、俺がもっと早くに気がつけば」
「気にしないで大丈夫ですよ。怪我が無ければ良いので」
そうだ。無事ならそれで良いのだ。
「っ、マリーナ!」
油断している時間は無いという事か。とっさにクリス様が私に覆い被さり、シールドを張り魔術で生み出したであろう岩が落ちてくるのを食い止める。
「く、クリス様……」
「大丈夫か?」
「私は大丈夫です。クリス様は?」
「俺も大丈夫だ。心配無い」
その後も従者やクリス様、時には自分で自分の身を守りながらなんとか攻撃を防いだのだった。
「はあ……」
屋敷に戻ると、途端に疲れが出てしまいベッドの上に大の字になってしまう。何度も何度も魔法を連発したからか。
「マリーナ、いいかしら?」
「あっは、はい。おばあさま」
「今日は派手に攻撃を受けたみたいね」
「はい……疲れました」
「今丁度リリーネ子爵から手紙が来たけどどうする?」
リリーネ子爵……私を地下牢に閉じ込めていた人物。どうせろくな事は書いていないだろうと踏んだ私は読まない意思をクララ様に伝えた。
「わかったわ。とりあえず私が読んで内容によっては処分しておくわね」
「お願いします」
その後。リリーネ子爵からの手紙を読んだクララ様に聞く所、公爵になった旨を祝う内容の文章のみが記されていた。
(なんか怪しい)
私も試しに読んではみたが、手紙の文章量も短いものだった。そこが逆に怪しさを醸し出しているような気がしてならなかった。
「調査が決まった」
「そ、そうですか……」
「エイリンはクララおばあさまの元でいたら良いと父上も言ってくれた。ただ、証人として宮廷に召喚される可能性はあるって」
「そこは覚悟しております。クリス王子」
エイリンの目の奥には光が見える。洗いざらい話すのは構わないという事か。
そして次の日。結局ジェシカがクララ様のお屋敷には来なかった。だが、大学院にて突っつかれる可能性も覚悟しておく必要はある。
「2人ともいってらっしゃい」
「はい」
「はい、おばあさま」
クララ様は今日は講義もないので、このまま屋敷にてエイリンと留まる事になる。私はクリス様と2人で馬車に乗り大学院へ登校した。
「あ、クリス王子とジェリコ公爵よ」
「いつも一緒なのね」
私を見る目線とひそひそした声が耳に入る。すると頭上から殺気を感じたので、私はすぐに天に手を掲げ、シールドを張った。
がちゃがちゃがちゃ!!!
天から巨大な氷柱が槍の如く降り注ぐと全てシールドに跳ね返され、雲散霧消していった。
「マリーナ……!」
「お怪我はございませんでしたか?」
「ごめん、俺がもっと早くに気がつけば」
「気にしないで大丈夫ですよ。怪我が無ければ良いので」
そうだ。無事ならそれで良いのだ。
「っ、マリーナ!」
油断している時間は無いという事か。とっさにクリス様が私に覆い被さり、シールドを張り魔術で生み出したであろう岩が落ちてくるのを食い止める。
「く、クリス様……」
「大丈夫か?」
「私は大丈夫です。クリス様は?」
「俺も大丈夫だ。心配無い」
その後も従者やクリス様、時には自分で自分の身を守りながらなんとか攻撃を防いだのだった。
「はあ……」
屋敷に戻ると、途端に疲れが出てしまいベッドの上に大の字になってしまう。何度も何度も魔法を連発したからか。
「マリーナ、いいかしら?」
「あっは、はい。おばあさま」
「今日は派手に攻撃を受けたみたいね」
「はい……疲れました」
「今丁度リリーネ子爵から手紙が来たけどどうする?」
リリーネ子爵……私を地下牢に閉じ込めていた人物。どうせろくな事は書いていないだろうと踏んだ私は読まない意思をクララ様に伝えた。
「わかったわ。とりあえず私が読んで内容によっては処分しておくわね」
「お願いします」
その後。リリーネ子爵からの手紙を読んだクララ様に聞く所、公爵になった旨を祝う内容の文章のみが記されていた。
(なんか怪しい)
私も試しに読んではみたが、手紙の文章量も短いものだった。そこが逆に怪しさを醸し出しているような気がしてならなかった。
2
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説
【完結】巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
※本編、番外編共に完結しました。
孤児院で育ったサラは、巫女見習いとして司祭不在の神殿と孤児院を一人で切り盛りしていた。
そんな孤児院の経営は厳しく、このままでは冬を越せないと考えたサラは王都にある神殿本部へ孤児院の援助を頼みに行く。
しかし神殿本部の司教に無碍無く援助を断られ、困り果てていたサラの前に、黒い髪の美しい悪魔が現れて──?
巫女見習いでありながら悪魔に協力する事になったサラが、それをきっかけに聖女になって幸せになる勘違い系恋愛ファンタジーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
死に戻りの魔女は溺愛幼女に生まれ変わります
みおな
恋愛
「灰色の魔女め!」
私を睨みつける婚約者に、心が絶望感で塗りつぶされていきます。
聖女である妹が自分には相応しい?なら、どうして婚約解消を申し込んでくださらなかったのですか?
私だってわかっています。妹の方が優れている。妹の方が愛らしい。
だから、そうおっしゃってくだされば、婚約者の座などいつでもおりましたのに。
こんな公衆の面前で婚約破棄をされた娘など、父もきっと切り捨てるでしょう。
私は誰にも愛されていないのだから。
なら、せめて、最後くらい自分のために舞台を飾りましょう。
灰色の魔女の死という、極上の舞台をー
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る
新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます!
※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!!
契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。
※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。
※R要素の話には「※」マークを付けています。
※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。
※他サイト様でも公開しています
毒吐き蛇侯爵の、甘い呪縛
卯崎瑛珠
恋愛
カクヨム中編コンテスト 最終選考作品です。
第二部を加筆して、恋愛小説大賞エントリーいたします。
-----------------------------
「本当は優しくて照れ屋で、可愛い貴方のこと……大好きになっちゃった。でもこれは、白い結婚なんだよね……」
ラーゲル王国の侯爵令嬢セレーナ、十八歳。
父の命令で、王子の婚約者選定を兼ねたお茶会に渋々参加したものの、伯爵令嬢ヒルダの策略で「強欲令嬢」というレッテルを貼られてしまう。
実は現代日本からの異世界転生者で希少な魔法使いであることを隠してきたセレーナは、父から「王子がダメなら、蛇侯爵へ嫁げ」と言われる。
恐ろしい刺青(いれずみ)をした、性格に難ありと噂される『蛇侯爵』ことユリシーズは、王国一の大魔法使い。素晴らしい魔法と結界技術を持つ貴族であるが、常に毒を吐いていると言われるほど口が悪い!
そんな彼が白い結婚を望んでくれていることから、大人しく嫁いだセレーナは、自然の中で豊かに暮らす侯爵邸の素晴らしさや、身の回りの世話をしてくれる獣人たちとの交流を楽しむように。
そして前世の知識と魔法を生かしたアロマキャンドルとアクセサリー作りに没頭していく。
でもセレーナには、もう一つ大きな秘密があった――
「やりたいんだろ? やりたいって気持ちは、それだけで価値がある」
これは、ある強い呪縛を持つ二人がお互いを解き放って、本物の夫婦になるお話。
-----------------------------
カクヨム、小説家になろうでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる