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第28話
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この日の講義は滞りなく行われた。私のそばには片時も離れずにクリス様が付き従ってくれていた。クララ様も出来る限りそばにいてくれたので安心できた。
講義は思ったよりも自主的な研究がメインだ。なので思ったよりも自由だし、お堅くない。教授の授業をずっと座って聞くという想像をしていただけに、驚きがある。
教授は私達の行う実験をサポートしたり、付き添って手順を教えてくれたりした。
「ジェリコ公爵、良いですね。この魔法薬はかなり質がよさそうだ」
「ありがとうございます」
「クリス王子の魔法薬も質が良いですね」
「ありがとうございます」
午前の講義が終わり、校内でランチを取る。クララ様も一緒に交えてサンドイッチを中庭で頬張る。サンドイッチはハムとチーズの簡素なものだが、塩気が効いていてとても美味しい。
すると、どたどたという音が聞こえてきた。音のする方を見ると、メイド服を着た若い女性が倒れている。
「!」
私は彼女を見て、クリス様へすぐに視線を向けた。
「マリーナ、行ってみよう」
「私も行くわ」
3人で倒れている彼女の元に向かう。倒れている場所は中庭への入り口付近。周りに何人か人はいるが、彼女へ関わりたくないのか、近寄ろうとしない。
「あなた達も来なさい!」
クララ様がそう近寄ろうとせず見るだけの学生に叫ぶようにして告げると、彼らはしぶしぶと近寄りつつも口を開く。
「その方、ジェシカ様の……」
「もしかして、あの噂本当なのかな?」
「噂? 何か教えてくれる?」
クララ様に睨まれるようにして見られた学生は、うつむくと観念したかのように語りだした。その間に私は倒れている女性へ魔力を送る。
「ジェシカ様には魔力が無いっていう噂です。だから、メイドに魔力の強い女の子をつけてそこから魔力を吸い上げているって噂です。その事を知った人物は捕らえられて、フリードリア家の敷地内にある井戸に投げ捨てられるっていう噂もあります」
「……物騒ね」
私が彼女へと魔力を送り続けた結果、彼女はゆっくりと目を覚ました。魔力を注ぎつつ彼女の魔力値を測ってみるとやはり彼女の魔力は枯渇しかけていた。だが、私が魔力を注いだ事で少しは回復できたようだ。
私達は彼女から話を聞く為に、保健室へと彼女を抱えて連れて行った。保健室のベッドに寝かせると、彼女はありがとうございます。と言って深々と頭を下げた。
「助かりました……このまま死ぬのかと思っていました」
「良かったわね。あなた、ジェシカのメイドであってる?」
「……っ。はい、あってます……」
講義は思ったよりも自主的な研究がメインだ。なので思ったよりも自由だし、お堅くない。教授の授業をずっと座って聞くという想像をしていただけに、驚きがある。
教授は私達の行う実験をサポートしたり、付き添って手順を教えてくれたりした。
「ジェリコ公爵、良いですね。この魔法薬はかなり質がよさそうだ」
「ありがとうございます」
「クリス王子の魔法薬も質が良いですね」
「ありがとうございます」
午前の講義が終わり、校内でランチを取る。クララ様も一緒に交えてサンドイッチを中庭で頬張る。サンドイッチはハムとチーズの簡素なものだが、塩気が効いていてとても美味しい。
すると、どたどたという音が聞こえてきた。音のする方を見ると、メイド服を着た若い女性が倒れている。
「!」
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「あなた達も来なさい!」
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「その方、ジェシカ様の……」
「もしかして、あの噂本当なのかな?」
「噂? 何か教えてくれる?」
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「……っ。はい、あってます……」
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