元聖女候補の監禁令嬢は元婚約者の王子から一途な溺愛を注がれる。

二位関りをん

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第21話

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 入浴を終えた後は寝間着に着替えて、洗った髪を魔術で乾かす。自室は森の中にいたお屋敷と同じ内装に広さだった。
 部屋の天蓋付きベッドに座り足を延ばしながら魔術書を読んでいると、部屋の扉をノックする音が聞こえて来る。

「はい」
「どう?」
「クララ様。変わりはないです」
「ジュリーが戻って来たから、話でもする?」
「ぜひ……!」

 クララ様がジュリーを連れて戻ってくる。ジュリーは変わらず元気そうだ。私を見るや否や手を振りながらやってきて、私の手を取って再会を喜び合う。

「再びお会いできて良かったです!」
「ジュリーさん、お元気でしたか?」
「ええ! 勿論! あ、お師匠様、クララ様。宮廷に入って色々見聞きした事があるので、お話しても?」
「勿論よジュリー。マリーナ。失礼するわね」
「どうぞ」

 私は2人を部屋の中に招き入れた。クララ様は安楽椅子に私はベッドの上に座る。ジュリーは立ったままで良いとの事だった。

「まず、クリス様については貴族の間からはもう死んでいるという認識を持たれていました。ですが、国王陛下の子はクリス様のみです。生きている事を願っている貴族もいましたね。大体五分五分といった所でしょうか」
「ふむ……続けなさい」
「リリーネ子爵についても調べました。しばらくロイナ国に滞在するようです。政略結婚もリリーネ子爵側から手を挙げたとか。リリーネ子爵令嬢については、あまり情報がありませんでしたが、1つだけ」
「ジュリーさん、それは?」
「魔術学園に通っている時、彼女はいじめを受けていたようです。しかしある日魔術でいじめていた者達を傷つけ痛めつけてからは、いじめられなくなったという噂はありました」
「そうなんですか……」

 ソヴィがいじめられていたという話は聞いた事が無いので驚きだった。確かにあの性格はとてもじゃないが、誰かにいじめられている人物のそれには見えない。

「あと、リリーネ子爵についても調べました。彼の領地については宮廷内では特に問題視されてはいませんでした。荒れているとか、悪魔の獣についての話も出ず。何かを隠している可能性も視野に今後も調べるつもりです」
「ありがとうジュリー。今後もお願い」
「はい、お師匠様。そして、マリーナ様とクリス様は魔術大学院に入られる予定とお師匠様から聞きました」
「ええ、そうよジュリー」
「実はですね。院には今、聖女候補と謳われている女学生がいます」
「え?」

 私以外にも聖女候補がいる、のだろうか?

「名前をジェシカ・フリードリア。フリードリア伯爵家の令嬢です。彼女が聖女候補と言われ始めたのは魔術大学に入ってからのようです。金色の髪に赤目と見た目は聖女候補と言えるでしょう」
「年は?」
「マリーナ様よりかは上かと」
「わかったわ、ジュリー」
「気をつけるのに越した事は無いでしょう。彼女性格悪そうなので」
「……ソヴィみたいな?」
「わかりませんが、そうかもしれないです」
(用心しておこう)

 こうして、ジュリーからの報告は一旦終了した。ジュリーとクララ様はおやすみなさい。と挨拶をしてからそれぞれ自室に戻っていった。

「さあ、寝よう」

 私も早く寝るとするか。布団を被り、目を閉じた。
 翌朝。身支度を済ませ朝食を取ると、クララ様から魔術大学院の入学の為の書類を書くようにと言われた。
 だが、私は長らくペンを取った事が無い。なのでメモ用紙に試し書きをしてから、書いたのだった。

「良い感じだわ。これ送っておくわね」
「お願いします」
「クララ様、クリス様がお越しになりました」

 メイドに連れられてクリス様が私とクララ様の元へとやって来る。その足取りは意気揚々としていた。

「おはよう、マリーナ。おはようございます、おばあさま」
「クリス様、おはようございます」
「クリス、昨夜はよく眠れた?」
「はいっ、まずは報告があります。マリーナと再婚約する事が決まりした」

 そう晴れ晴れしい笑顔で語るクリス様。私も、彼とまた婚約出来ると聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。

「良かった……」
「父上と母上からぜひ、という事だったんだ。それと前に婚約破棄した理由も確認する為にも聞いてきた。あれはやっぱり、ロイナ国との戦争が関わっていた。端的に言えば俺の身を守るために敢えて俺を行方不明扱いにしたらしい。ロイナ国から狙われないようにする狙いがあったと、父上が語ってくれた」
「でも、ロイナ国にはソヴィが」
「だから、しばらくは大丈夫だと、父上が言ってくれた。それとマリーナ。君はジェリコ家を継ぐ事も決まった。再婚約に辺り、正式に君はジェリコ公爵の当主としてと名乗れる事になったんだ」

 私がジェリコ公爵を継げる。それは予想だにしていなかった事だったので、驚きで言葉が出ない。

「ほ、ほんとですか?」
「ああ、マリーナ。君は喜んで良い。財産も領地も君に与えられる」
「……」
「マリーナ?」
「ごめんなさい、驚きが止まらない」
「そ、そっか! でも、自然に慣れると思うよ。マリーナなら立派に領地を経営出来るさ。俺も手伝うよ」

 そう言ってクリス様は私の頭を撫でた。 
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