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第15話
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朝食のメニューはパンにスクランブルエッグとベーコンとサラダとポタージュスープ。白いお皿とフォークにナイフにスプーンが規則正しく並ぶ。
(えっと、確かこのスプーンがスープ用で……)
クララ様とクリス様に見られながら私は朝食を口にしていく。勿論ゆっくりしっかり食べるのも欠かさない。脳裏の隅っこに置かれた記憶を引っ張り出しながら、食べていく。
「ごちそうさまでした」
「マリーナ。とりあえずはテーブルマナーは合格ラインでしょう。まだ扱い慣れてなさはあるけれど、ブランクと考えればまたすぐに慣れるはずよ」
「!」
合格ラインと聞き、私は目を見開いた。左隣からクリス様が私の両手を手早く握り、良かった良かった。と安堵の表情を浮かべてくれた。
「クララ様!」
すると、メイドの1人が慌てた様子で走りながら食堂に入ってくる。
「何かしら?」
「悪魔の獣が現れました!」
「すぐに行くわ。マリーナ、クリス。あなたがたの力を見せて貰おうかしら」
クララ様はそう言って、私達を試すような目つきと笑みを見せた。
悪魔の獣は屋敷のすぐ近くにいた。巨大な獅子のような姿だが、何か様子がおかしい。
「敵意が見られない」
「マリーナ?」
「敵意が感じない……」
悪魔の獣からは、私達を襲おうという感情が感じられなかった。しかもその場に座り込む。まるで私やクリス様に傅いているように。
「襲って来ない?」
「変ね……」
「私、近づいてみましょうか?」
なぜか、私は絶対に襲われないという全く根拠の無い自信があった。
近づいてそっと悪魔の獣に触れる。すると、黒い靄が晴れて黄色い光になっていく。
「マリーナ、もしかして浄化?!」
「いえ、クリス。浄化じゃないわ。あれは……封印解除よ」
光が消えた時。悪魔の獣がいた場所には1人の騎士が立っていた。茶髪の騎士は高身長で、がっしりとした体格をしている。
「あなたは……」
「マリーナ・ジェリコです」
「……イェルガー?」
クリス様が彼の元へとゆっくりと近づいた。
「イェルガーなのか?」
「はい。あなたは……」
「クリスだよ。そしてクララおばあさまにマリーナだ」
「クリス……クリス王子様で?」
「ああ、そうだ!」
「く、クリス様! なんかそんな気がしたんです、ずっとお会いしたかった!」
イェルガーとクリス様は熱く抱き合い、互いに再会を大いに喜びあう。
「クララ様、あれは悪魔の獣では無いと」
「おそらく悪魔の獣になる封印を施されていたのね。それをあなたが解いたと」
「なるほど……」
クリス様とイェルガーは、涙を流しながら喜びに包まれている。
(えっと、確かこのスプーンがスープ用で……)
クララ様とクリス様に見られながら私は朝食を口にしていく。勿論ゆっくりしっかり食べるのも欠かさない。脳裏の隅っこに置かれた記憶を引っ張り出しながら、食べていく。
「ごちそうさまでした」
「マリーナ。とりあえずはテーブルマナーは合格ラインでしょう。まだ扱い慣れてなさはあるけれど、ブランクと考えればまたすぐに慣れるはずよ」
「!」
合格ラインと聞き、私は目を見開いた。左隣からクリス様が私の両手を手早く握り、良かった良かった。と安堵の表情を浮かべてくれた。
「クララ様!」
すると、メイドの1人が慌てた様子で走りながら食堂に入ってくる。
「何かしら?」
「悪魔の獣が現れました!」
「すぐに行くわ。マリーナ、クリス。あなたがたの力を見せて貰おうかしら」
クララ様はそう言って、私達を試すような目つきと笑みを見せた。
悪魔の獣は屋敷のすぐ近くにいた。巨大な獅子のような姿だが、何か様子がおかしい。
「敵意が見られない」
「マリーナ?」
「敵意が感じない……」
悪魔の獣からは、私達を襲おうという感情が感じられなかった。しかもその場に座り込む。まるで私やクリス様に傅いているように。
「襲って来ない?」
「変ね……」
「私、近づいてみましょうか?」
なぜか、私は絶対に襲われないという全く根拠の無い自信があった。
近づいてそっと悪魔の獣に触れる。すると、黒い靄が晴れて黄色い光になっていく。
「マリーナ、もしかして浄化?!」
「いえ、クリス。浄化じゃないわ。あれは……封印解除よ」
光が消えた時。悪魔の獣がいた場所には1人の騎士が立っていた。茶髪の騎士は高身長で、がっしりとした体格をしている。
「あなたは……」
「マリーナ・ジェリコです」
「……イェルガー?」
クリス様が彼の元へとゆっくりと近づいた。
「イェルガーなのか?」
「はい。あなたは……」
「クリスだよ。そしてクララおばあさまにマリーナだ」
「クリス……クリス王子様で?」
「ああ、そうだ!」
「く、クリス様! なんかそんな気がしたんです、ずっとお会いしたかった!」
イェルガーとクリス様は熱く抱き合い、互いに再会を大いに喜びあう。
「クララ様、あれは悪魔の獣では無いと」
「おそらく悪魔の獣になる封印を施されていたのね。それをあなたが解いたと」
「なるほど……」
クリス様とイェルガーは、涙を流しながら喜びに包まれている。
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