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第8話
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もふもふっとパンをまずは口にしてみる。温かくて、柔らかい。地下牢で食べてきたパンは硬くてぱさぱさしていたのに、ぱさぱさした感触はこのパンには全くない。更に他の食事も全て温かかったり新鮮さが感じられていてものすごく美味しい。
「お、美味しいです!」
思わず私は声を大にしてそう叫んでしまった。だって、こんな朝食食べるのいつぶりだろう。昨日の食事もだがこの朝食に対しても、食材を摂取する度に全身が喜んでいるような感覚を覚える。
「ごちそうさまでした!」
あっという間に完食してしまった。クリス様を見るとまだ彼は食べている。
もしかして私は食べるのが早いのかだろうか?
「あの、クリス様……もしかして私、食べるの早いですか?」
「いや、気にはならないが……自分が遅いだけかもしれないし」
「そ、そうですか」
「食事をするのはやはり楽しいな」
そう笑みをこぼしながらパンを食べるクリス様に、私ははい。と笑みと共に返事をしたのだった。
「いってらっしゃい!」
宿屋の主に見送られながら、クララ様の別荘へ向けて道を歩き出す。のどかな風景に流れる空気は瑞々しくて美味しく新鮮に感じる。
「とりあえずこのルートを通れば、日没までには到着するはずだ」
「そうですね……」
「問題はこの辺だな。悪魔の獣に出くわさないようにしなければ」
「やっぱりいるんですか?」
「この辺は分からない。リリーネ子爵の所領地がどんな場所かよく分からないし」
悪魔の獣。それは荒れ果てた土地に現れるモノだ。黒いモヤに全身を覆われた獣で、生きとし生けるものの生力を吸い、死に至らしめる。猪のような姿や、獅子のような姿を取る事もある。今いる場所はリリーネ子爵の領地で、その領地を抜けてすぐに、クララ様の別荘がある。
そして悪魔の獣が現れるという事は、その場所の管理が十分に行き届いていないという事の証左でもある。
(そう言えば聖女は、悪魔の獣を払う事が出来るんだっけ)
とはいえ、私が聖女である確証は無い。なので悪魔の獣に出会わない事を祈るだけしか無いのだ。
「大変だ!」
中年の男性が、前方から走ってこちらへと叫びながら近づいてくる。
「悪魔の獣だ! 皆逃げろ!」
話をしていたら、やって来たようだ。しかし、クララ様の別荘へ繋がる道は、ここしかない。
「お前達も逃げるんだ!」
そう男性に切羽詰まった表情で言われるも、私とクリス様は顔を見合わせる。
「どうする? 道はここしか無いが」
「私の魔力で追い払えますかね?」
「やってみないと分からない。けど、魔力量は十分だと思う」
「なら、やってみます」
「お、美味しいです!」
思わず私は声を大にしてそう叫んでしまった。だって、こんな朝食食べるのいつぶりだろう。昨日の食事もだがこの朝食に対しても、食材を摂取する度に全身が喜んでいるような感覚を覚える。
「ごちそうさまでした!」
あっという間に完食してしまった。クリス様を見るとまだ彼は食べている。
もしかして私は食べるのが早いのかだろうか?
「あの、クリス様……もしかして私、食べるの早いですか?」
「いや、気にはならないが……自分が遅いだけかもしれないし」
「そ、そうですか」
「食事をするのはやはり楽しいな」
そう笑みをこぼしながらパンを食べるクリス様に、私ははい。と笑みと共に返事をしたのだった。
「いってらっしゃい!」
宿屋の主に見送られながら、クララ様の別荘へ向けて道を歩き出す。のどかな風景に流れる空気は瑞々しくて美味しく新鮮に感じる。
「とりあえずこのルートを通れば、日没までには到着するはずだ」
「そうですね……」
「問題はこの辺だな。悪魔の獣に出くわさないようにしなければ」
「やっぱりいるんですか?」
「この辺は分からない。リリーネ子爵の所領地がどんな場所かよく分からないし」
悪魔の獣。それは荒れ果てた土地に現れるモノだ。黒いモヤに全身を覆われた獣で、生きとし生けるものの生力を吸い、死に至らしめる。猪のような姿や、獅子のような姿を取る事もある。今いる場所はリリーネ子爵の領地で、その領地を抜けてすぐに、クララ様の別荘がある。
そして悪魔の獣が現れるという事は、その場所の管理が十分に行き届いていないという事の証左でもある。
(そう言えば聖女は、悪魔の獣を払う事が出来るんだっけ)
とはいえ、私が聖女である確証は無い。なので悪魔の獣に出会わない事を祈るだけしか無いのだ。
「大変だ!」
中年の男性が、前方から走ってこちらへと叫びながら近づいてくる。
「悪魔の獣だ! 皆逃げろ!」
話をしていたら、やって来たようだ。しかし、クララ様の別荘へ繋がる道は、ここしかない。
「お前達も逃げるんだ!」
そう男性に切羽詰まった表情で言われるも、私とクリス様は顔を見合わせる。
「どうする? 道はここしか無いが」
「私の魔力で追い払えますかね?」
「やってみないと分からない。けど、魔力量は十分だと思う」
「なら、やってみます」
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