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第77話 回復とその後

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 峠を越えたアダン様はそこから予想以上の早さで回復を遂げた。薬だけに頼らず、しっかり食事を取った事も功を奏したようだった。
 薬の量も減り、ついには傷も塞がって包帯も必要無くなった。とても喜ばしい事だ。

「おはようございます。アダン様」
「おはようジャスミン」

 私は当初はつわりの関係で仕事を休む予定だったが、その予定は無しにした。確かにつわりでしんどい時もあるが薬師及び医薬師長としてのプライドのような何かと、アダン様への愛が勝りずっと仕事に打ち込んでいる。
 というか、アダン様が決闘で深手を追ってから何日間はつわりがどこかに消えていた。もしかしたら私が気づいていなかっただけかもしれないが。

(それだけ集中していたって事かもしれない)

 回復したアダン様は、公務にも復帰し人々からますます慕われる存在を確立していっている。国王陛下も体調には波があるが、アダン様の存在には全幅の信頼を置いている。
 そんな国王陛下だが、アダン様に包帯が必要無くなったのを見計らい、彼を摂政に任命した。 

「アダン。そなたを摂政と致す」
「父上。承知いたしました」
「私はもう長くはない。間違った判断が今後増えない、出さない為にもアダンの力が必要だ」

 エミリアの両親が訪れた時の対応を悔いているのか、その時の声は申し訳なさが入っていたとアダン様は語る。

「父上のあんな声、初めて聞いたよ」
「そうなんですか?」
「ああ、かなり反省しているのが分かった」

 ジョージの遺体はヨージス家の屋敷へと移送された後、私の両親によってひっそりと葬式が執り行われた。なお、決闘に負けた愚か者として庶民からは屋敷へと石を投げつけられたりする被害を受けたようだ。

「ジャスミン。ヨージス家へと戻って来て欲しい」
「ヨージス家を継いで欲しい」

 そう記された手紙が私の元に届いた後、私の両親はエミリアとの婚約で婚姻届など婚約に関する書類を偽造した罪でエミリアの両親共々捕縛され、更に爵位を剥奪されて庶民となった。捕縛され庶民となった両親は、南西部の田舎町に流刑となった。彼らに田舎暮らしが出来るかどうかは知らないが私に彼等を手助けする気は一切ない。何か頼まれても断るつもりだ。

(絶対助けてやんない)

 両親が流刑された次の日。ヨージス家の存続について、私はアダン様と国王陛下と共に話をした。元は侯爵家という事もあり由緒正しい家柄には、なる。なのでこのまま家ごとまるまる取り潰しになるのもどうかとの事らしい。
 それに両親が庶民になった事で、私も庶民扱いになる。そうなれば立場が危うくなるという話だった。
 
(個人的には庶民扱いになっても、良いのだけど)

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