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第48話 まだ何も
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「そんなに困らなくて良いでしょう?」
そう怪訝な顔をしてアダン様に話しかけるエレーナ姫の表情と声は紛れもなくジュナそっくりだった。アダン様はふうっと誰が見ても分かるようなため息を吐く。
「すまない。国王陛下に確認する。ジャスミンも来て」
「えっ? あっ、はい」
「国王陛下にお尋ねする必要があるの?」
「だってまだ何も決まって無いだろう」
アダン様は私の右手を掴み、部屋から出ていく。まるでエレーナ姫から逃げるようだ。
「あ、アダン様」
「ジャスミン……」
「アダン様、もしかしてエレーナ姫を抱くのですか……?」
(あ、しまった)
私が嫉妬交じりにその言葉を吐いてしまった時、アダン様の動きがピタリと止まった。
「ジャスミン、もしかして嫉妬してるの?」
「……正直に言いますと、はい」
「らしくないな。だけど君ならそう考えるとも思った。安心して。彼女と婚約するつもりは、はなから無いから」
いつも通りの爽やかな笑顏を浮かべ、エレーナ姫と婚約する気は無いと言い放ったアダン様。彼の姿に私の胸の中のもやもやがさっと晴れたような気がする。
「……そうですか」
「焼きもち焼くジャスミンも可愛いね」
「え……?」
「ははっ、とりあえず父上の元に行こう」
アダン様に手を引かれ、国王陛下のいる部屋に入る。部屋の中には国王陛下だけでなく王妃アネーラもいた。2人はカードゲームをして楽しんでいる最中だった。国王陛下は一瞬だけ目を丸くし、王妃アネーラは国王陛下との時間を邪魔されて嫌とでも謂うような嫌悪間を含んだ目つきでアダン様を見ている。
「父上!」
「アダン、どうした?」
「ああ、あのエレーナ姫が、早速私に夜伽をしたいと言い始めまして困っているのですが……」
「いいじゃないアダン。さっさと夜伽してもらいなさいよ」
王妃アネーラはそう、取るに足らない事のように吐き捨てた。
「いや、私は彼女と婚約するつもりは……」
「相手は王女よ? さっさと婚約して隣りにいるジャスミンも側室として迎えたらいいんじゃないのかしら? 丸く収まるわよ?」
「……っ」
「後はアダンに任せる。お前が判断するのだ」
「はっ、分かりました……」
王妃アネーラのどこか見下すようなトーンで吐き出された側室という言葉が、頭の中にピンのように留まってしまっている。
アダン様は私の右手を引っ張って、踵を返して退出していった。
(なんて、声をかけたら)
彼にかけれべき最良の言葉が見つからないまま、アダン様の部屋に到着する。
中ではエレーナ姫が退屈そうに、アダン様のベッドに入って帰りを待っていた。
そう怪訝な顔をしてアダン様に話しかけるエレーナ姫の表情と声は紛れもなくジュナそっくりだった。アダン様はふうっと誰が見ても分かるようなため息を吐く。
「すまない。国王陛下に確認する。ジャスミンも来て」
「えっ? あっ、はい」
「国王陛下にお尋ねする必要があるの?」
「だってまだ何も決まって無いだろう」
アダン様は私の右手を掴み、部屋から出ていく。まるでエレーナ姫から逃げるようだ。
「あ、アダン様」
「ジャスミン……」
「アダン様、もしかしてエレーナ姫を抱くのですか……?」
(あ、しまった)
私が嫉妬交じりにその言葉を吐いてしまった時、アダン様の動きがピタリと止まった。
「ジャスミン、もしかして嫉妬してるの?」
「……正直に言いますと、はい」
「らしくないな。だけど君ならそう考えるとも思った。安心して。彼女と婚約するつもりは、はなから無いから」
いつも通りの爽やかな笑顏を浮かべ、エレーナ姫と婚約する気は無いと言い放ったアダン様。彼の姿に私の胸の中のもやもやがさっと晴れたような気がする。
「……そうですか」
「焼きもち焼くジャスミンも可愛いね」
「え……?」
「ははっ、とりあえず父上の元に行こう」
アダン様に手を引かれ、国王陛下のいる部屋に入る。部屋の中には国王陛下だけでなく王妃アネーラもいた。2人はカードゲームをして楽しんでいる最中だった。国王陛下は一瞬だけ目を丸くし、王妃アネーラは国王陛下との時間を邪魔されて嫌とでも謂うような嫌悪間を含んだ目つきでアダン様を見ている。
「父上!」
「アダン、どうした?」
「ああ、あのエレーナ姫が、早速私に夜伽をしたいと言い始めまして困っているのですが……」
「いいじゃないアダン。さっさと夜伽してもらいなさいよ」
王妃アネーラはそう、取るに足らない事のように吐き捨てた。
「いや、私は彼女と婚約するつもりは……」
「相手は王女よ? さっさと婚約して隣りにいるジャスミンも側室として迎えたらいいんじゃないのかしら? 丸く収まるわよ?」
「……っ」
「後はアダンに任せる。お前が判断するのだ」
「はっ、分かりました……」
王妃アネーラのどこか見下すようなトーンで吐き出された側室という言葉が、頭の中にピンのように留まってしまっている。
アダン様は私の右手を引っ張って、踵を返して退出していった。
(なんて、声をかけたら)
彼にかけれべき最良の言葉が見つからないまま、アダン様の部屋に到着する。
中ではエレーナ姫が退屈そうに、アダン様のベッドに入って帰りを待っていた。
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