107 / 130
第103話 月館小島でお昼ごはん
しおりを挟む
お昼は別荘で作ったお弁当。麦ごはんと梅干し。それとキャベツの炒め物。
切り株に座ると、弁当の容器の蓋を開けてお箸を出して頂く。
「頂きます」
「それ何?」
雨月が頬杖をつきながら私達の弁当を興味深そうに見つめている。
「お弁当です」
「食べるの?」
「はい」
「へえ。私は食事なんてずっとしてないわね」
食事を取らなくてもあやかしは生きていけるのか。篝先生曰く種族にもよるとの事だった。
「彼女は食事を必要とはしていないんでしょう」
「なるほど……」
「ねえ、お腹すかないの?」
ぬらりひょんが雨月に向かって大きな声で質問した。
「それがね、すかないの」
「ほんと?」
「ええ。ほんと」
「そうなんだ」
ぬらりひょんは首を傾げて、不思議そうな表情を見せている。普段から食いしん坊なぬらりひょんの事だ。食事を必要とはしない雨月は確かに不思議な存在だろう。
「もし食べるってなったら、何食べるんですか?」
「魚とか、かしらねえ……千恵子さんはそのお弁当にあるもの?」
「そうです、麦ごはんを主食に野菜とか魚とか……」
「料理するの?」
「はい!」
その後も私達は雨月と会話しながら、お弁当を食べ進めていった。麦ごはんの甘味に梅干しの酸味は相性が良い。
「ごちそうさまでした」
お弁当を片付け、袋の中に入れた。しばらく休憩し、ここを発つ事が決まる。
「では、行きましょう」
「はい、篝先生。雨月さんお邪魔しました!」
「ふふっ、また来てね」
「はい!」
雨月さんは右手を振って私達を見送ってくれたのだった。
それにしても彼女は、妖艶で圧のある雰囲気を持ってはいたが、いざ話してみると親しみやすさを感じたあやかしに思う。
「そろそろ砂浜に戻りますか。光さんや一反木綿も待っていますし」
篝先生の提案に私もぬらりひょんも頷いた。
「ぬらりひょんはもう大丈夫なの?」
「うん、また行けばいいし」
「そうだね、じゃあ帰ろうか」
砂浜に戻ると、砂浜近くの海で光さんと、彼の背びれに巻き付く形で一反木綿が待っていてくれていた。
「お待たせ。ただいま戻ったよ!」
「千恵子! 篝先生もぬらりひょんも元気そうだな。何かあったか?」
「あやかしがいた!」
「ぬらりひょん、どんなあやかしだった?」
「こんなに大きいの!」
ぬらりひょんは、両手を天に掲げて雨月の大きさを表現している。その姿は可愛らしく微笑ましい。
「へえ、そんなに大きかったのかぁ」
「そうだよ!」
こうして、月館小島の探検は幕を閉じたのだった。
さあ、帰ったら母親と沼霧さんに話さないと行けない。
切り株に座ると、弁当の容器の蓋を開けてお箸を出して頂く。
「頂きます」
「それ何?」
雨月が頬杖をつきながら私達の弁当を興味深そうに見つめている。
「お弁当です」
「食べるの?」
「はい」
「へえ。私は食事なんてずっとしてないわね」
食事を取らなくてもあやかしは生きていけるのか。篝先生曰く種族にもよるとの事だった。
「彼女は食事を必要とはしていないんでしょう」
「なるほど……」
「ねえ、お腹すかないの?」
ぬらりひょんが雨月に向かって大きな声で質問した。
「それがね、すかないの」
「ほんと?」
「ええ。ほんと」
「そうなんだ」
ぬらりひょんは首を傾げて、不思議そうな表情を見せている。普段から食いしん坊なぬらりひょんの事だ。食事を必要とはしない雨月は確かに不思議な存在だろう。
「もし食べるってなったら、何食べるんですか?」
「魚とか、かしらねえ……千恵子さんはそのお弁当にあるもの?」
「そうです、麦ごはんを主食に野菜とか魚とか……」
「料理するの?」
「はい!」
その後も私達は雨月と会話しながら、お弁当を食べ進めていった。麦ごはんの甘味に梅干しの酸味は相性が良い。
「ごちそうさまでした」
お弁当を片付け、袋の中に入れた。しばらく休憩し、ここを発つ事が決まる。
「では、行きましょう」
「はい、篝先生。雨月さんお邪魔しました!」
「ふふっ、また来てね」
「はい!」
雨月さんは右手を振って私達を見送ってくれたのだった。
それにしても彼女は、妖艶で圧のある雰囲気を持ってはいたが、いざ話してみると親しみやすさを感じたあやかしに思う。
「そろそろ砂浜に戻りますか。光さんや一反木綿も待っていますし」
篝先生の提案に私もぬらりひょんも頷いた。
「ぬらりひょんはもう大丈夫なの?」
「うん、また行けばいいし」
「そうだね、じゃあ帰ろうか」
砂浜に戻ると、砂浜近くの海で光さんと、彼の背びれに巻き付く形で一反木綿が待っていてくれていた。
「お待たせ。ただいま戻ったよ!」
「千恵子! 篝先生もぬらりひょんも元気そうだな。何かあったか?」
「あやかしがいた!」
「ぬらりひょん、どんなあやかしだった?」
「こんなに大きいの!」
ぬらりひょんは、両手を天に掲げて雨月の大きさを表現している。その姿は可愛らしく微笑ましい。
「へえ、そんなに大きかったのかぁ」
「そうだよ!」
こうして、月館小島の探検は幕を閉じたのだった。
さあ、帰ったら母親と沼霧さんに話さないと行けない。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる