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第89話 陸軍の兵士②
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サバは焦げ目も付きつつ、しっかりと焼けているのがわかる。試しに割って中を見て火の通りを確認したがばっちりだ。
「よし」
私は焼き終えたサバを乗せたお皿を、お盆に乗せて台所まで運ぶ。
「沼霧さん、焼けたよー」
「はい、ありがとうございますーー」
「今何時?」
「17時40分くらいですね」
「じゃあ、そろそろ食卓に読んだ方が良いかな」
と言う訳で、沼霧さんと母親とぬらりひょんに食卓の用意をお願いし私は離れへと3人を呼びに行った。
「失礼いたします。よろしいですか?」
中から篝先生によるどうぞ。という返事が返ってきたので、失礼いたします。と言いながら部屋に入る。
部屋の中では3人がせっせと書類を書いたり仕分けをしたりしていた。
「ああ、千恵子さん。どうぞ」
「篝先生、夕食の準備が出来ました。お2人もどうぞ」
そう言うと、3人は立ち上がって部屋から出ていく。私は篝先生と共に彼らを食卓まで案内した。
食卓には既に沼霧さんと母親とぬらりひょんが正座して待っていてくれていた。
「お待たせしてしまってすみません。お2人、どうぞこちらに」
「失礼いたします」
「失礼します」
兵士2人は揃って、篝先生の左隣に座った。
「わざわざすみません」
「美味しそうですね」
「では、頂きましょうか」
全員で手を合わせて挨拶をしてから、サバに手を付ける。
骨は取ってはいるが小骨は残っているかもしれない。気をつけなければ。
「よいしょ……」
サバはしっかり焼けており、塩味もがつんと効いていて美味しい。麦ごはんとも合う。
「どうですか?」
と、兵士2人に味を聞いてみる。
「うん、とても美味しいです!!」
「あっちのよりご飯美味しいかも……」
「そうですか?!」
陸軍の施設よりご飯が美味しいという言葉には、さすがに驚いた。
そんな兵士はぬらりひょんに目線を向けている。
「娘さんですか?」
「いえ、違います」
「妹さん?」
「そうでもないんです」
すると、篝先生が口を開いた。
「私の知り合いの娘さんでしてね、身寄りがないのでこちらで預かって頂いているんです」
篝先生の知り合いの娘という設定。よくさっと思いついたものだ。
「へえ、そうなんですね」
「川上財閥の方々に世話して頂けるのは、幸運じゃないですか?」
「お二方とも……確かにそうかもしれませんね」
篝先生は穏やかに笑っているが、当のぬらりひょんはサバをもぐもぐと食べている。
「可愛らしいですね」
「ほんとです……!」
「何が?」
とわかってないような顔をするぬらりひょんに、私はぬらりひょんの事であると小声で伝える。
「私、可愛い?」
「可愛いと思いますよ、服も似合ってます!」
「うちの娘とそっくりですね」
「……ありがとう、ございます」
ぬらりひょんは箸をおいて兵士に向けて頭を下げた。
その後、食事を終えた2人の兵士は陸軍の施設へと戻っていく。そんな彼らを玄関で見送った。
「今日はありがとうございました。夕食美味しかったです」
「おじゃましました! 皆さんお元気で!」
2人が去った後、別荘はまたいつも通りの雰囲気に戻った。
「あれが兵隊さんかあ」
とぼんやりと呟くぬらりひょんの手を引きながら、私は食卓へと戻ったのだった。
「よし」
私は焼き終えたサバを乗せたお皿を、お盆に乗せて台所まで運ぶ。
「沼霧さん、焼けたよー」
「はい、ありがとうございますーー」
「今何時?」
「17時40分くらいですね」
「じゃあ、そろそろ食卓に読んだ方が良いかな」
と言う訳で、沼霧さんと母親とぬらりひょんに食卓の用意をお願いし私は離れへと3人を呼びに行った。
「失礼いたします。よろしいですか?」
中から篝先生によるどうぞ。という返事が返ってきたので、失礼いたします。と言いながら部屋に入る。
部屋の中では3人がせっせと書類を書いたり仕分けをしたりしていた。
「ああ、千恵子さん。どうぞ」
「篝先生、夕食の準備が出来ました。お2人もどうぞ」
そう言うと、3人は立ち上がって部屋から出ていく。私は篝先生と共に彼らを食卓まで案内した。
食卓には既に沼霧さんと母親とぬらりひょんが正座して待っていてくれていた。
「お待たせしてしまってすみません。お2人、どうぞこちらに」
「失礼いたします」
「失礼します」
兵士2人は揃って、篝先生の左隣に座った。
「わざわざすみません」
「美味しそうですね」
「では、頂きましょうか」
全員で手を合わせて挨拶をしてから、サバに手を付ける。
骨は取ってはいるが小骨は残っているかもしれない。気をつけなければ。
「よいしょ……」
サバはしっかり焼けており、塩味もがつんと効いていて美味しい。麦ごはんとも合う。
「どうですか?」
と、兵士2人に味を聞いてみる。
「うん、とても美味しいです!!」
「あっちのよりご飯美味しいかも……」
「そうですか?!」
陸軍の施設よりご飯が美味しいという言葉には、さすがに驚いた。
そんな兵士はぬらりひょんに目線を向けている。
「娘さんですか?」
「いえ、違います」
「妹さん?」
「そうでもないんです」
すると、篝先生が口を開いた。
「私の知り合いの娘さんでしてね、身寄りがないのでこちらで預かって頂いているんです」
篝先生の知り合いの娘という設定。よくさっと思いついたものだ。
「へえ、そうなんですね」
「川上財閥の方々に世話して頂けるのは、幸運じゃないですか?」
「お二方とも……確かにそうかもしれませんね」
篝先生は穏やかに笑っているが、当のぬらりひょんはサバをもぐもぐと食べている。
「可愛らしいですね」
「ほんとです……!」
「何が?」
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「私、可愛い?」
「可愛いと思いますよ、服も似合ってます!」
「うちの娘とそっくりですね」
「……ありがとう、ございます」
ぬらりひょんは箸をおいて兵士に向けて頭を下げた。
その後、食事を終えた2人の兵士は陸軍の施設へと戻っていく。そんな彼らを玄関で見送った。
「今日はありがとうございました。夕食美味しかったです」
「おじゃましました! 皆さんお元気で!」
2人が去った後、別荘はまたいつも通りの雰囲気に戻った。
「あれが兵隊さんかあ」
とぼんやりと呟くぬらりひょんの手を引きながら、私は食卓へと戻ったのだった。
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