あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん

文字の大きさ
上 下
92 / 130

第88話 陸軍の兵士①

しおりを挟む
 夕方。いつもより早めに篝先生が帰って来た。

「篝先生、おかえりなさい」

 私が出迎えると、篝先生の後ろには2人の兵士がいた。兵士は私を見るや否や、帽子を取って挨拶をする。

「篝先生の仕事の手伝いに参りました。お邪魔します」
「すみませんが、よろしくお願いします」

 どうやら、離れで篝先生の仕事の手伝いをする為にこの別荘にやって来たようだ。

「千恵子さん。すみませんが彼らの分の食事も用意出来ますか?」
「分かりました」
「よろしくお願いします」

 私は彼らを篝先生と共に離れまで案内すると、台所にいた沼霧さんと母親にその事を伝える。

「分かりました。準備しますね」
「その前にお茶出さないと……」

 母親は湯呑みにお茶を入れて、お盆に乗せて離れへと向かっていった。
 私と沼霧さんは、夕食の準備に取り掛かる。

「ご飯足りそう?」
「昼に炊いたので十分足りるかと」

 すると、ぬらりひょんが台所までとことことやって来た。話を聞きつけてやってきたようだ。

「何かあったの?」
「今ね、篝先生手伝いに陸軍の兵士が来てるの」
「兵隊さんが?」
「そう。だからご飯作らなきゃなの」
「何か手伝った方が良い?」

 私と沼霧さんは、互いに目を合わせる。ぬらりひょんからの申し出はありがたいが、彼女は子供の身体。無理はさせられない。

「今はいいかな。また手伝ってもらう時に呼ぶね」
「分かった」

 ぬらりひょんはそのまま台所から退出する。後で母親に彼女の相手をしてもらおう。

「野菜で味噌汁を作りましょう。後は、サバでも焼きますか」
「分かった。それで行こう」

 野菜はニンジンと玉ねぎを使う。それと豆腐も欠かさず入れて、味噌汁を作る。
 味噌汁作りが終われば、サバを焼いていく。焼く前に骨をあらかた取ってから、桟橋が見える外に移動して七輪でパタパタと焼いていく。離れから近いと煙が彼らを邪魔しそうなので、桟橋の近くまで移動したのだった。

「何焼いてんだ?」

 煙は光さんからも見えているようだ。

「サバ焼いてるの」
「へえ」
「今日の夕食にするんだ」
「なるほどねえ……」

 サバが焼き終えると、七輪の網から取り出し、お皿に盛る。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜

瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。 大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。 そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。 第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~

保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。 迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。 ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。 昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!? 夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。 ハートフルサイコダイブコメディです。

処理中です...