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第75話 梅雨とぬらりひょんを名乗る少女②
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ぬらりひょんから、どんどん話を聞いていく。
「どこにいたの?」
「今年の冬に船でここに来た。それからはうろうろしてた」
「ごはんは?」
「別に毎日食べなくても大丈夫」
「そっか……親は?」
「知らない」
「え」
親は知らない。父親も母親も知らないのだろうか。
「気が付いたらお寺にいた。だからお父さんもお母さんも知らない」
「……篝先生、この子って魚道さんみたいな子ですか? それとも純粋なあやかし?」
「後者でしょう。もっと言えば雑種ですね」
雑種。それは両親が互いに別々の種族のあやかしの事を言う。
濡れ女や雪女と言った女性しかいないあやかしの場合、両親が別々の種族でも子供が女の子として生まれて来れば純粋な濡れ女となる。男の子だと雑種になる。
「この子は父親がぬらりひょんで、母親は別の種族でしょう。目の色からして鬼かもしれませんが」
確かに、ぬらりひょんの目の色は赤い。
「へえ。私雑種って言うんだ。それは知らなかった」
「お寺にいた時からぬらりひょんて言われてたの?」
「うん」
「どこのお寺か分かる?」
「東京の山の中。どこだったっけ。東村山、だっけ」
お屋敷からわりと近い(それでも遠いが)場所だった。そこにある寺で育ち、あるご婦人に拾われたぬらりひょんは彼女によって別の場所に引っ越して、月館島に流れ着いたのだった。
「ご婦人はどうなったの?」
「死んだ」
「月館島で?」
「ううん、本土」
その後も彼女から詳しい話を聞いて行く途中。
「おなか減ってきちゃった」
「ぬらりひょん、食欲はどう?」
「ある」
「嫌いなものは?」
「ない」
「篝先生、沼霧さん。どうします?」
篝先生の勧めでとりあえずはお汁を作って食べさせる事にしたのだった。お汁は今朝の残りに更に豆腐やニンジンと大根を入れて量をかさましさせる。
「おにぎり作ってきます」
おにぎりも作って、お味噌汁と共にぬらりひょんに手渡した。
「わぁ、おいしそう」
ぬらりひょんが味噌汁をすする。どうやら猫舌では無さそうだ。
「あったかいね」
おにぎりもバクバクと頬張っていく。かなりお腹が減っていたのか、すぐに平らげてしまった。
「おにぎりおかわり。味噌汁も頂戴」
「はいはい」
がんがん食べ進めていくぬらりひょんの様子を、篝先生は目を細めながら見ていた。
「しっかり食べれてますね。丸薬も効いてますし大丈夫そうでしょう」
「よかったですね、篝先生。いや、篝先生のおかげですよ」
「私はやるべき事をやったまでですよ。千恵子さん」
篝先生はぬらりひょんが食事を終えるまで、私達と共に彼女の様子を見守ってくれたのだった。
「どこにいたの?」
「今年の冬に船でここに来た。それからはうろうろしてた」
「ごはんは?」
「別に毎日食べなくても大丈夫」
「そっか……親は?」
「知らない」
「え」
親は知らない。父親も母親も知らないのだろうか。
「気が付いたらお寺にいた。だからお父さんもお母さんも知らない」
「……篝先生、この子って魚道さんみたいな子ですか? それとも純粋なあやかし?」
「後者でしょう。もっと言えば雑種ですね」
雑種。それは両親が互いに別々の種族のあやかしの事を言う。
濡れ女や雪女と言った女性しかいないあやかしの場合、両親が別々の種族でも子供が女の子として生まれて来れば純粋な濡れ女となる。男の子だと雑種になる。
「この子は父親がぬらりひょんで、母親は別の種族でしょう。目の色からして鬼かもしれませんが」
確かに、ぬらりひょんの目の色は赤い。
「へえ。私雑種って言うんだ。それは知らなかった」
「お寺にいた時からぬらりひょんて言われてたの?」
「うん」
「どこのお寺か分かる?」
「東京の山の中。どこだったっけ。東村山、だっけ」
お屋敷からわりと近い(それでも遠いが)場所だった。そこにある寺で育ち、あるご婦人に拾われたぬらりひょんは彼女によって別の場所に引っ越して、月館島に流れ着いたのだった。
「ご婦人はどうなったの?」
「死んだ」
「月館島で?」
「ううん、本土」
その後も彼女から詳しい話を聞いて行く途中。
「おなか減ってきちゃった」
「ぬらりひょん、食欲はどう?」
「ある」
「嫌いなものは?」
「ない」
「篝先生、沼霧さん。どうします?」
篝先生の勧めでとりあえずはお汁を作って食べさせる事にしたのだった。お汁は今朝の残りに更に豆腐やニンジンと大根を入れて量をかさましさせる。
「おにぎり作ってきます」
おにぎりも作って、お味噌汁と共にぬらりひょんに手渡した。
「わぁ、おいしそう」
ぬらりひょんが味噌汁をすする。どうやら猫舌では無さそうだ。
「あったかいね」
おにぎりもバクバクと頬張っていく。かなりお腹が減っていたのか、すぐに平らげてしまった。
「おにぎりおかわり。味噌汁も頂戴」
「はいはい」
がんがん食べ進めていくぬらりひょんの様子を、篝先生は目を細めながら見ていた。
「しっかり食べれてますね。丸薬も効いてますし大丈夫そうでしょう」
「よかったですね、篝先生。いや、篝先生のおかげですよ」
「私はやるべき事をやったまでですよ。千恵子さん」
篝先生はぬらりひょんが食事を終えるまで、私達と共に彼女の様子を見守ってくれたのだった。
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