あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん

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第72話 花見

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「花見に行きたい……」

 と考え出してから数週間。ようやく花見に行く日がやって来た。

「楽しみだあ……」
「千恵子楽しみにしていたものね」

 母親もくすっと笑いながら、自身の髪を結っている。
 花見は島の展望台にて行う。桜を見るならここ!というべき場所だ。

「出来ましたよ!」

 沼霧さんがお昼の入った重箱の上から、風呂敷を包む。

「こちらも準備出来たわよ。千恵子は?」
「大丈夫!」
「こちらも後は割烹着を脱いで……出来ました!」
「千恵子、篝先生は?」
「現地で合流するって言ってなかった?」
「ああ、そうだ。忘れてたわ」

 忘れものが無いかを確認し、沼霧さんが重箱を持って家を出る。
 現地までは歩いて向う。別荘からは割と近いが、少し坂を登らなければならないのが難点か。

「よいしょ……よいしょ」

 坂をなんとか登りきれば、展望台だ。周囲を満開の桜の木が植わっている。
 そして篝先生は一足先に到着していた。

「先生、おまたせしました」
「いえいえ千恵子さん」
「綺麗ねえ」

 桜はどこから見ても綺麗だ。淡い桃色の花を満面に咲かせている。
 私達は展望台の腰掛けに座り、桜を見て回る。

「写真撮りたいくらいね。島には写真館が無いのが残念だけれど……」
「お母様、よろしければ軍の写真担当の者を連れてきましょうか?」
「あら、篝先生大丈夫なの?」
「はい。川上家となれば快く引き受けてくださるでしょう」

 その後。篝先生が連れてきた写真担当の者に、集合写真を撮ってもらった。後日現像してくれるらしい。
 撮影が終わると、お昼の時間だ。

「おべんとおべんと」

 鼻歌が溢れる。鯛めしおにぎりに煮しめが詰まっている。ブリの照り焼きもある。

「どれから食べようかなあ……」
「千恵子の好きなものから食べたら?」

 まずは煮しめのニンジンから口にした。柔らかく甘味があり美味しい。鯛めしのおにぎりも、鯛の柔らかい味にとしょうがのピリッとした熱のある味わいが合わさって美味しい。
 ブリの照り焼きも、柔らかくてしょうゆの味がしっかりとついている。

「うん。どれも美味しい!」

 すると桜の花びらが、鯛めしのおにぎりの上に落ちた。私は落ちてきた花びらをつまんで取る。

(綺麗だなあ)

 母親も、沼霧さんも、篝先生も皆穏やかに桜を見ながらお昼を食べていた。

(また来年も花見に行きたいな)


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