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第63話 篝先生の正体とおでんと年越しそば
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篝先生があやかしと知り、私は絶句するより他無かった。
「篝先生、あやかしなんですか?」
「そうです。今まで黙っていてすみません」
「どうして、打ち明けたんです?」
「たまたま、千恵子さんのお手伝い……沼霧さんとお会いしたのが最初……そしてこの子に向ける目線が決め手です」
そうつらつらと語る篝先生。
「先生は……何のあやかしです?」
「お見せしましょう」
篝先生は人気のない、木の陰に私を連れて行く。
すると、篝先生の背後から狐の尻尾が9つ、花が咲くように現れた。
「私は九尾の狐。篝です」
「先生……」
「2000年生きてきました。今はこうして医者として活動しています」
尻尾はこの日があまり当たらない場所でも、黄金色に美しく輝いている。
(綺麗だ)
その後。尻尾をしまった篝先生と私は短い散歩を終えようとしていた。
「食べて行きますか?」
篝先生が指を指したのはおでんの屋台。こんな場所でも屋台が来るのか。しかも既に客が5人程来ている。
「私が支払いますよ」
「いいんですか?」
「……先程の話。内密にしてくださるなら」
「……勿論です」
夕食があるので、あまりたくさんは食べられない。なので大根だけ注文した。
丸い大根にタレをかけ、頂く。
「はふっ……美味しい」
大根にだしが染みていて、更に甘辛なタレの味とも相性が良く、美味しい。
「おでんいいですよね。温まりますし」
「そうですね」
部屋に戻った後。夕食が届いた。
「今日は、年越し蕎麦です。あと煮しめになります」
黒い陶器に入っている蕎麦は、細麺。その上にはエビの天ぷらが乗っている。
煮しめはニンジンとレンコン、ゴボウの3つ。
「頂きます」
まずは蕎麦から頂く。細麺なのでつるつると頂く事が出来る。だしは薄味。その代わりエビ天、特にエビ天の衣との相性は良い。
「美味しい……」
煮しめも味はやや薄味だが、しっかりとだしの風味が出ている。具材も柔らかく食べやすい。
「ごちそうさまでした」
年明けが近づいている。来年・昭和19年は、平和に暮らせるだろうか。
(良い年になりますように)
「篝先生、あやかしなんですか?」
「そうです。今まで黙っていてすみません」
「どうして、打ち明けたんです?」
「たまたま、千恵子さんのお手伝い……沼霧さんとお会いしたのが最初……そしてこの子に向ける目線が決め手です」
そうつらつらと語る篝先生。
「先生は……何のあやかしです?」
「お見せしましょう」
篝先生は人気のない、木の陰に私を連れて行く。
すると、篝先生の背後から狐の尻尾が9つ、花が咲くように現れた。
「私は九尾の狐。篝です」
「先生……」
「2000年生きてきました。今はこうして医者として活動しています」
尻尾はこの日があまり当たらない場所でも、黄金色に美しく輝いている。
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その後。尻尾をしまった篝先生と私は短い散歩を終えようとしていた。
「食べて行きますか?」
篝先生が指を指したのはおでんの屋台。こんな場所でも屋台が来るのか。しかも既に客が5人程来ている。
「私が支払いますよ」
「いいんですか?」
「……先程の話。内密にしてくださるなら」
「……勿論です」
夕食があるので、あまりたくさんは食べられない。なので大根だけ注文した。
丸い大根にタレをかけ、頂く。
「はふっ……美味しい」
大根にだしが染みていて、更に甘辛なタレの味とも相性が良く、美味しい。
「おでんいいですよね。温まりますし」
「そうですね」
部屋に戻った後。夕食が届いた。
「今日は、年越し蕎麦です。あと煮しめになります」
黒い陶器に入っている蕎麦は、細麺。その上にはエビの天ぷらが乗っている。
煮しめはニンジンとレンコン、ゴボウの3つ。
「頂きます」
まずは蕎麦から頂く。細麺なのでつるつると頂く事が出来る。だしは薄味。その代わりエビ天、特にエビ天の衣との相性は良い。
「美味しい……」
煮しめも味はやや薄味だが、しっかりとだしの風味が出ている。具材も柔らかく食べやすい。
「ごちそうさまでした」
年明けが近づいている。来年・昭和19年は、平和に暮らせるだろうか。
(良い年になりますように)
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