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第48話 ほうとう①

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 濡れ女は私と沼霧さんを交互に見つめた。この反応、多分私も濡れ女だと勘違いしているかもしれない。

「あ、私は普通の人間だから。沼霧さんが濡れ女」
「なので安心してください」

 濡れ女はようやく話を飲み込めたのか、はあーっと肩で大きく息を吐いた。

「じゃ、じゃあ……大丈夫、なんですね?」
「うん。大丈夫」
「大丈夫ですよ」
「よ、よかったあ」

 彼女が意識を取り戻した所で、神社から温かい甘酒を貰い彼女に飲ませつつ、彼女から話を聞く事になった。
 熱はまだあるが、身体は動いている。

「名前は?」
「海風って言います」
「どうやって月館小島へ?」
「……あれ、母親は? 一緒にいたはずなんですが」

 あの時、島には彼女しかいなかったはずだ。沼霧さんに聞いても母親らしき濡れ女はいなかったと答える。

「う、うそ……!」
「どこかにいると思うんですが……」

 母親を見つけ、合流させないといけない。どうやって母親を見つけるべきか。
 私は少し考え、ある案を思いつく。

「光さん達に探してもらう?」
「お願い、してみましょうか」

 海風が母親といた最後の場所は、富山湾周辺だそうだ。その事を桟橋近くの海にいた光さんに伝え、探してもらう事になった。

「見つかるといいね」
「はい……」
「大丈夫です。濡れ女はまず海の中か近くにいますから。光さんが必ず見つけてくれます」

 私達は海風を励ました。すると、海風のお腹が鳴る音がする。

「すみません、お腹ペコペコで……」

 海風が座ったままペコペコと謝る。

「何か作りましょうか」
「そうだね。昼ごはんも合わせて作る?」
「ええ。とりあえずは海風さんが食べやすいようにお汁を作りましょう」
「じゃあ、ほうとうとかどう?」

 ほうとうなら、お汁だし量もあって良いだろう。

「ありがとうございます……!」

 手を合わせて感謝する海風。お汁は沼霧さんが作り、私は念の為海風の様子を見る為に部屋で待機する事になった。

「海風さん。もし体調がまた悪くなればこれを飲んでください」

 沼霧さんが海風に渡したのは、白い丸薬。妖力を詰めた薬だそうだ。

「分かりました」
「千恵子さん。お願いします」
「うん!」

 沼霧さんはぱたぱたと、部屋から出ていった。彼女の背中を目で見送る。

「じゃあ、ちょっと待っててね。沼霧さん料理上手だから」
「なるほど……! 楽しみです!」
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