あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん

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第13話 お正月

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「あけましておめでとうございます」

 今日はこの挨拶から始まる。そして沼霧さんが作ったお雑煮を頂くのだ。

「どうぞ、おあがりください」

 ちなみに私も母親も今は着物を着ている。いつもよりちょっと気分が上がっている気がした。

「頂きます」

 お雑煮はお吸い物にお餅と大根、にんじんが入っている。

「美味しい……」

 お吸い物の昆布を下地にしただしに醤油が上手く合わさり美味しい。お餅も野菜もするすると頂く事が出来た。
 昨日作った煮しめも、味がしっかりかつ濃くならない程度に具材に染み込んでいた。それに柔らかく炊けている。

「どれも美味しかった」

 こうして、年が明けて最初の食事は終わったのだった。

「ごちそうさま」

 朝食後は、島にある神社に詣でに向かう。神社には既に多くの島民が駆けつけていた。

「あら、川上さん。あけましておめでとうございます」

 3人で参道を歩いていると、入口のにあはり鳥居の左ふもとから神社の神職さんから声をかけられた。

「あけましておめでとうございます」

 と、私達も挨拶を返すと神職さんからは奥の建物で甘酒を配っているので、川上さんもどうぞ。と誘われた。

「甘酒頂いていきます? 甘酒は身体にとても良いですし」

 沼霧さんの問いに私と母親は頷き、神社への参拝を済ませてから甘酒を頂く事にした。
 甘酒を頂き、帰り道を歩く。すると桟橋の向こうには光さんらしき背びれが見えた。

「光さーーん!」

 名前を呼ぶと近づいてきた。やはり光さんだ。

「おう、あけましておめでとう」
「光さんあけましておめでとうございます」

 沼霧さんと母親も、光さんと挨拶を交わした。

「いやあ、正月かあ。時間が経つのは早いよなあ」
「光さん今年もよろしくね」
「ああ、という訳で早速良いもんやろうか?」

 光さんが網をよっと桟橋の上に置く。光さんの自前の網の中に入っていたのは、1頭の巨大な魚だった。

「マグロ?」
「そうそう。あーーでもお前らだけでは運べなさそうか」

 結局島民の方に手伝って貰って、家の中に何とかマグロを運んだのだった。

「新年からすごいね……」
「マグロが食べられるなんて……」
「考えてもいませんでした……」

 こんな巨大なマグロ、どうやって解体しようか。そしてどうやって食べようか。

(煮て……焼いて、刺し身?)

 いや、調理方法よりまずは解体だ。すると沼霧さんが解体なら任せてください。と言ってきた。

「いや、私も手伝うよ」
「私も手伝うわ。沼霧さんだけでは大変でしょこれ」

 結果、3人がかりでマグロを解体する事になった。

「甘酒飲もう」

 甘酒の温かさが、冷え切った身体全体にじんわりと染みていく。

(今年も1年、頑張ろう)

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