【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜

第134話 朝食と私達の扱い

「朝食をお持ちしました」

　侍女が台車を引きながら、朝食の入った白い皿を部屋の中に次々と運び入れる。

「ねえ、昨日の夕食より豪華じゃない？」

　ナジャが私にそう声をかけた。確かに昨日食べたクラムチャウダーとライ麦のパンは、全て1つのトレーに乗っていたのだが、朝食は今の所白いお皿が複数見えている。

「朝食ずいぶんと豪華なのね」

　私は試しにそう侍女へ声をかけた。

「皇帝陛下より、体調を崩しているので他のナターシャ達よりも丁重かつ慎重に扱えという指示が出ております」

　そう答える侍女。本当にあの男は何を考えているのだろうか。不気味だ。

（丁重に扱う事で、私の根負けを狙っている…とか？）

　だとしても、その誘いに乗るつもりは無い。

「準備が終わりました。どうぞお召し上がりくださいませ」

　侍女はそう言って、部屋から静かに退出していった。
　朝食は丸いパンにスクランブルエッグとソーセージにポタージュスープである。ポタージュスープからは熱々の湯気が出ている。
　スプーンとお手拭きもしっかりと用意されていた。

「へえ、温かそうじゃない」
「そうね、ナジャ。頂こうかしら」

　テーブルに向かい合って座り、朝食を頂く事にした。
　まずは、ポタージュスープから頂く。ポタージュスープの色は黄色。という事は、カボチャのポタージュスープだろうか。
　スプーンですくって口に運ぶと、甘みのある味わいと熱が口全体に広がる。

「これ、カボチャね」

　ナジャの言う通り、これはカボチャの味だ。胃も温まった所で、他の食材も食べていく。
　スクランブルエッグは卵の甘みと食感がこれまた口の中にふんわりと広がって美味しいし、ソーセージも肉汁がたっぷり染み出て美味しい。パンとの相性も格別だ。
　
（なんか、ここまで来たら露骨だな…）

　昨日の夕食とは打って変わったクオリティにどこか警戒心を高めていく自分がいた。　
　丁重かつ慎重に扱えというキムの指示が更に不気味に思えてくる。

「ねえ、ナジャ」
「何？」
「昨日とは違って何と言うか…クオリティ上がってるわね」

　そうナジャに聞いてみると、ナジャもまた、不信感漂う表情を見せる。

「皇帝陛下は何をお考えなのかしらね」