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第128話 連行
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リークの事が心配になると、胸の奥がぎゅっと絞られるような、そんな痛みを覚える。
更にこれから後宮に入ると考えると、吐き気がしてくる。
(もう、後宮へは入りたくないのに…)
火あぶりの刑を得て、ようやく自由になったというのに。なぜ転生してからもあの男が関わって来るのか。
色んな感情がもやもやと浮かんでいくのに消えてくれない。
「はあ…」
馬車は止まる事無くごとごとと進む。まだ日中と言うのに相変わらず馬車の中は薄暗いままだ。
次第にナジャとの会話も無くなっていく。
(この空気嫌だな…)
この状態のまま、日が落ちるまで私達は馬車の中で過ごす事になる。
「さあ、出るんだ」
馬車が目的地に到着し、私とナジャがあの馬車から解放されたのは日が落ちてからの事だった。
お腹は空いたし、体のあちこちがずきずきと痛む。
「早く歩け!」
「とりあえず、連れて行くのは蝶の間でいいんだっけ?」
「多分あってる。ほら、早く歩くんだ!」
そう言われても無理なものは無理である。痛む身体を引きずるように、宮廷の裏口から後宮のどこかにある蝶の間という名の部屋へと移動させられていく。
蝶の間…どこら辺だったか。ピンと来ない。もしかしたら、侍女達が普段使う部屋だろうか。
「くっ…」
「ナターシャ、しっかり」
ナジャの息遣いや声からはまだ余裕がありそうに見受けられる。やはり元陸軍の兵士だった事もありそんじょそこらでは崩れない肉体なのだろう。
だが、今の私は農民の娘。その辺り肉体の頑丈さはナジャとは天と地程の差がある。
「くっ…」
足が重い。そして全身に力が入らない。
後宮の広さがここに来て私へと襲い掛かってきているような気がしてならない。
「はあ…はあ…」
「ナターシャ、もうすぐつくから!」
そのもうすぐが長いのである。
「あと少し…」
と、呟いた所で、後ろにいた兵士が右横にある部屋に入るように言ってきた。
「おい、蝶の間じゃなくて良いのかい?」
「どうせあそこ一杯だろ、とりあえず疲れてそうだしここの部屋でいいんじゃないか?」
更にこれから後宮に入ると考えると、吐き気がしてくる。
(もう、後宮へは入りたくないのに…)
火あぶりの刑を得て、ようやく自由になったというのに。なぜ転生してからもあの男が関わって来るのか。
色んな感情がもやもやと浮かんでいくのに消えてくれない。
「はあ…」
馬車は止まる事無くごとごとと進む。まだ日中と言うのに相変わらず馬車の中は薄暗いままだ。
次第にナジャとの会話も無くなっていく。
(この空気嫌だな…)
この状態のまま、日が落ちるまで私達は馬車の中で過ごす事になる。
「さあ、出るんだ」
馬車が目的地に到着し、私とナジャがあの馬車から解放されたのは日が落ちてからの事だった。
お腹は空いたし、体のあちこちがずきずきと痛む。
「早く歩け!」
「とりあえず、連れて行くのは蝶の間でいいんだっけ?」
「多分あってる。ほら、早く歩くんだ!」
そう言われても無理なものは無理である。痛む身体を引きずるように、宮廷の裏口から後宮のどこかにある蝶の間という名の部屋へと移動させられていく。
蝶の間…どこら辺だったか。ピンと来ない。もしかしたら、侍女達が普段使う部屋だろうか。
「くっ…」
「ナターシャ、しっかり」
ナジャの息遣いや声からはまだ余裕がありそうに見受けられる。やはり元陸軍の兵士だった事もありそんじょそこらでは崩れない肉体なのだろう。
だが、今の私は農民の娘。その辺り肉体の頑丈さはナジャとは天と地程の差がある。
「くっ…」
足が重い。そして全身に力が入らない。
後宮の広さがここに来て私へと襲い掛かってきているような気がしてならない。
「はあ…はあ…」
「ナターシャ、もうすぐつくから!」
そのもうすぐが長いのである。
「あと少し…」
と、呟いた所で、後ろにいた兵士が右横にある部屋に入るように言ってきた。
「おい、蝶の間じゃなくて良いのかい?」
「どうせあそこ一杯だろ、とりあえず疲れてそうだしここの部屋でいいんじゃないか?」
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