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第91話 魚と野菜の煮込み

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 それから時間が立ち、船が漁港に戻るとまずはリークが釣ったサメを引き上げる。

「こりゃあ、ホオジロザメじゃねえか?」
「そんなもん釣り上げるなんて、何か起こる前触れじゃねえの?」

 漁師達がひそひそと話す声が聞こえてくる。それだけ珍しい大物だったようだ。

「ホオジロザメ珍しいんですか?」
「そらそうよナターシャ、こんなもん滅多に捕れねえよ」

 ケインがそう言うのだから間違いない。
 お昼はマッシュとメイルの家のキッチンで、釣った鯛や小魚をにんじんやトマトと言った野菜と一緒に、煮込んで食べた。

「だしがすごいわ…」
「ナターシャほんとか?」
「ええ、リーク…食べてみて」
「…すごい味だ…」

 しかもこの煮込み、パンとも合う。パンにだしをつけて食べると、濃縮された旨味が口の中でパンの塩気と共にぎゅっと広がる。

(旨味がすごい…)

 お昼を食べ終えた後、ケインはまた明日も来るようにと告げて去っていった。
 私達も、リークの家に戻る事にした。帰り際、私とリークは一旦浜辺に寄る。
 午後の海も、穏やかで凪いでいる。

「ずっと見ていたいな」

 リークは浜辺の上に座り、足を投げ出す。

「気に入った?」
「ああ、海も良いな」
「確かに、山も海もそれぞれ良さがあるものね」
「ナターシャはどっちが好き?」
「…どっちもかしら。森の中で静かに暮らしてみたかったねよね」
「そうか、なるほどな」

 私は、リークの右隣にしゃがんで、海の向こう側を見つめる。

「あの向こうには、何があるのかしら」
「何だろうな…国があるのだろうか」
「かもしれないわね…」

 こうした、何気ない会話をしているだけで、心が凪いで来るのが分かる。

「明日の漁も楽しみね」
「そうだな、楽しみだ…!」
「貝も取ってみたいわね」

 こうして、私達はリークの家に戻る。
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